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これもまたお約束6(ホスタ)

「え? エッシャル女大公様の婚約者候補についてですか?」

「ああ」


 わたしの言葉にバーベナとカクタスが不思議そうに顔を見合わせた。


「もちろん、そのつもりで行動していますし、今後も努力するつもりです」

「そうか、やはりそうなのか」

「とはいえ、あくまでも夢であり目標ですよ」

「うん。努力するためのエネルギーという感じですね」


 ん? どういう事だ?


「二人は、ブルーローズ嬢の婚約者候補に乗り気ではないのか?」

「婚約者候補として、もっと言うのであれば僕個人として認めて欲しいですが、あくまでも目標です」

「視界に入れてくれればマシ、話しかける許可を貰えれば御の字ですよ。おれらの印象なんて底辺どころかマイナススタートなんですから」


 どういう事だ?


「だが、婚約者候補に、伴侶に正式に名乗りを上げるために家の跡継ぎの座を降りたのだろう?」

「おれはそもそも弟の方が優秀だったんで」

「僕も、家の跡を継ぐっていう事そのものにむきになっていましたね」

「二人の言っている事が分からないのだが、つまりはブルーローズ嬢の婚約者候補でいるという事なのだな?」

「「そうですね」」

「そうか」


 まったく、不安になるような事を言って来たが結局の所二人とも目指すところは同じでよかった。

 この二人とならいい関係を続けて行けるだろう。


「それにしても、二人がブルーローズ嬢に対して誤解を解いたようでよかった。彼女は本当に自己表現が苦手なだけで、真っすぐな女性なんだ」

「いや、自己表現が苦手というよりはマイナス評価の存在に厳しいだけですよ」

「うん。エッシャル女大公様が認めた存在に対しては普通だね。認める基準が分からないし、むちゃくちゃ高い気もするけど、認めればちゃんと対応しているって分かるかな」

「そうなんだ。それなのに多くの貴族はブルーローズ嬢を悪く言う事が多いだろう。わたしはそれが非常によくないと思っている。今まではブルーローズ嬢の優しい一面を知る事でその真価に惹かれる者が増える可能性を考慮していたが、今となってはそこまで気にする事も無いだろう」


 なんといっても、婚約者候補として認められたのがわたし達だけなのだし、変に気を回さなくて済むのはありがたいな。


「えっと……? あー、エッシャル女大公様って一部の人からとても慕われていますよね」

「あ、ああ、そうだね。兄さまも魔法師団と騎士団の第三師団の在籍者はほとんどがエッシャル女大公様に忠誠を誓っているって言っていたよ」

「それはよくないんじゃないか?」

「「え?」」

「ブルーローズ嬢が王族とはいえ、第三師団長のみならまだしも、在籍している者のほとんどが国王である父上ではなくブルーローズ嬢に忠誠を誓っているとなると、いざというときに問題が起きるのではないだろうか?」

「いや、でも第三師団ですし」

「そうそう。それぞれの第一師団と第二師団はクロトン殿下がうまく纏めているじゃないですか」

「そういう問題じゃないだろう。スピラエ殿は父上が認めたようだが、第三師団全体となれば規模が違う」

「いやぁ、あ、でもホスタ殿下も騎士団の第二師団の在籍者と仲がいいですよね」


 わたしは確かに騎士団の第二師団在籍者と行動を共にすると言うか、街に出る時に随行してもらうことが多いからそう見えるのかもしれない。

 だが、彼らがわたしに忠誠をとなれば話は別だろう。

 そもそも、わたしは国を良くしようと見分を広めるために街に出ているのだし、そんな事で忠誠と言われても困ってしまう。

 わたしが「君たちは何も分かっていない」と深い溜息を吐き出して言うと、困ったような顔をした後いくつか話題を提供してきたがどれもいまいち盛り上がらなかった。


「あー、そういえばフィリアス先生の授業って女生徒に人気だって噂ですよ」

「教え方が丁寧だって評判だとか」

「そうか。しかしながら彼はエウヘニア嬢と親しいからあまりいい印象がないな」

「そうなんですけどね」

「えーっと、学園の教職員が結構まとめて入れ替えになったって知っていますか?」

「いや? 何かあったのか?」

「噂だと、エッシャル女大公様が気に入らない教職員を首にしたって言われていますよ」

「ブルーローズ嬢が?」


 これまでブルーローズ嬢の悪い噂はあったが、今回の物は随分と悪意を感じるな。


「実際に首になった女教師が学園長室の前で叫んでいたって言う噂なんですよ」

「どうせいつもの訳の分からない言いがかりだろう」

「それが、一人じゃなくて何人も言っていたとか。それに、女教師だけじゃなくて男性職員も同じだったそうで」


 くだらない。

 ブルーローズ嬢をよく思わない貴族の令嬢達が面白おかしく広めているだけだろうな。

 そういえば、


「バーベナはエウヘニア嬢を不敬罪で訴えると言っていたな? あれはどうなったんだ?」

「もちろん訴えましたよ。今は調査中ですね」

「すぐに終わりそうな調査だなそれ。エウヘニア嬢の行動証言なんてしてくれる生徒も教職員もいくらでもいるだろう」

「うん。でも問題は、エウヘニア嬢が賠償金を支払えるかだよ。跡継ぎの座を降りたとはいえ、公爵家の子息に訴えられたんだし、賠償金も少額っていうわけにはいかないからね」

「それで学園から居なくなってくれればいいんだけどな」

「僕としては、仮に支払われたとしても、元はエッシャル女大公様の資産だっていうのがいやだな」


 確かに、エウヘニア嬢の資産は家と土地、貯金を含めて全てブルーローズ嬢が与えた物だからな。

 それを使われてもバーベナとしたら複雑になるのは仕方がないな。

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