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これもまたお約束5(ホスタ)

「婚約者候補の絞り込み、ですか?」

「ああ。クロトンは伴侶を得てその中から妃にする者を選定しているし、ホスタも婚約者候補を決めてもいいだろう」

「まだ早いのでは? 兄上だって伴侶を決めたのは最近です」

「学園を卒業した者は全てクロトンの伴侶候補として挙げたし、その中から血統も能力も優れた者をクロトンの伴侶にした。妃を選定しているとはいえ、ほとんどの者がそのまま妃に任命されるだろう。つまり、お前の伴侶になるのは今学園に在学している者かまだ学園に通っていない者だ」


 その言葉に、兄上がにこやかな顔を浮かべながら婚約者候補を絞り込むための夜会に出席した時の事を思い出す。

 王族における婚約者候補はそのまま伴侶候補と同意義。

 基本的に伴侶はそのまま妃に任命され公務を任される事となるが、素養が無いと判断されてしまえば妃ではなく伴侶扱いのまま、飼い殺しにされる。

 それでも、運よく王家の色を持つ子供を産む事が出来れば国母・国父になれる可能性もあるため、王族の伴侶になりたいと願う者は多い。

 そもそも、王家の色を持つ子供を産めば素養が無いと飼い殺しにされていた伴侶であっても妃になれるのだ。

 わたしの母上がそうであるように。

 父上には新しくなった者を入れて妃が六人居るが、伴侶の数は知らされていない。

 その中で子供を成せたのは現在三人。

 第二子であるわたしを妊娠して妃に召し上げられたが、母上は第三妃までしか上る事が出来なかった。

 先に兄上を産んでいた第一妃はもちろんの事、子爵家出身の母上より身分の高い父上の妃たちが許さなかったと母上が憎々し気に語っていた。

 特にプルメリアの母親が政務が出来ない者が自分より上に行くなど許さないと主張し、父上も第一妃も、他の妃も賛同したため、第二子をもうけながらも母上は第三妃にしかなれなかった。

 お飾りの妃、働けない妃、無用の妃。

 いっそいなくなってしまえばいいと母上が他の妃に陰で言われている事は知っている。

 国王になれない王族は、王族の血を残すための、王座を『守護』するためのスペアでしかない。

 兄上は優秀だ。

 臣下からの信頼もあり政務も積極的にこなしたうえで鍛錬も欠かさない。

 広い目を持っていて、まさに王族として動ける人だ。


「兄上が国王になったらわたしはどうなりますか?」

「おかしな事を聞くな。クロトンに問題が無ければ私の次の国王はクロトンだ。余計な争いを産まない為にホスタはクロトンの戴冠前に大公になるのは当たり前だろう。お前が女ならクロトンの伴侶とも考えてもいいが、男だからな」

「プルメリアは女大公に?」

「あれがそう望めばな。クロトンの伴侶ひいては妃になりたいのだと言い出せばその限りではないだろう。もちろん、お前も含めてだ」

「では、ブルーローズ嬢はどのようになりますか? 彼女も王族です」

「クロトンは自分で察したが、ブルーローズの相手は決まっている」

「決まっている? まさか、兄上の?」

「それならどれだけよかったか」


 深くため息を吐き出した父上に、ブルーローズ嬢の婚約者候補は兄上ではないのだとほっとした。


「では、皇国の誰かですか?」

「あちらはそれを望んでネリネ殿を送り込んできたようだが、ネリネ殿もクロトンと同じように被害が無いうちに早々に婚約者候補争いからは抜けている。あちらの国も納得しているそうだ。まあ、個人的には賢い判断だろう」


 なら、ブルーローズ嬢の婚約者候補の第一位はわたしなのでは?


「そもそも、ここまでブルーローズが相手を公表していないのは王族として義務だと思っているからだしな」

「義務ですか?」

「同年代の若者を焚きつける存在が必要だろう。プルメリアでもよかったが、あれは王家の色を持っていないからな」


 王族の血を残すことは王族の義務。

 それが濃ければ王家の色を持った子供が生まれる可能性が高まるのなら、王家の色を持った者同士で子を成せば王家の色を持つ子供が生まれる可能性は限りなく高い。

 それなら、兄上がブルーローズ嬢の婚約者候補でないのなら、残っているのは……わたしだ。

 このタイミングで父上がわたしに婚約者候補の話をしてきたのなら、そういう意味なのだろう。


「そういえば、お前が関係しているブライモン公爵家とオズウィン侯爵家も子供の婚約者を決めたそうだ」

「え?」

「提示された条件に随分渋ったそうだが、受け入れるしかなかったのだろうな。バーベナもカクタスも跡継ぎの座を降りるとは、何のためにホスタの学友に選んだのか意味を分かっていない」


 王族の伴侶となるのなら、生家を継ぐ事は出来ない。

 バーベナとカクタスはブルーローズ嬢の伴侶になる者として正式に名乗りを上げる為に家の跡継ぎの座を降りた?


「父上、確認なのですがよろしいですか?」

「なんだ」

「王族の伴侶になった王族が、別の伴侶を持つ事は禁止されていないのですよね?」

「そうだな」


 身分、能力、そしてこれまでの交流頻度を考えればブルーローズ嬢の婚約者候補はわたし達三人という事なのだろう。

 あの二人はこの事を分かったうえで行動しているのか。


「ホスタの婚約者を絞り込む夜会の日程は追って伝える。よいな」

「はい。父上、ブルーローズ嬢は参加するのですよね」

「クロトンの時ですら自分の予定を優先したからな。それは何とも言えんな」


 父上の言葉にそれでは困ると思ったが、もしかしたら参加しなくてもわたしとの婚約が決まっているから必要ないという事なのだろうか?

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