婚約いたしましょう9
「つまり、ブルーローズ嬢が世界樹に自由に接続でき意思の疎通も可能なのは、前世でその『花と星の乙女』というゲームを行っていた結果というわけなのだな?」
「そうなりますわね」
「君としては、話にあったイベントというものに廃課金をして時間を費やしたことでフリティラリアの言う代償を前払いしているようなものだから、世界樹に何かを要求したところで何も代償を渡していないと」
「ええ、だからご心配いただかなくても大丈夫ですの」
わたくしの言葉に、それでもフリティラリア様は前例がと頭を抱えていらっしゃいますけれど、魔王陛下は別の事を考えているのか、拳を軽く握り口元に当てていらっしゃいます。
やはり親子ですわね。何気ない仕草が似ていらっしゃいますわ。
「あ」
「どうした?」
不意にわたくしが声を出しましたのでフリティラリア様が頭からご自分の手を離してわたくしを上から覗き込んでいらっしゃいます。
「大変なことを忘れておりましたわ」
「なんだ、やはり何か世界樹と接続するのに問題があるのか?」
「いいえ。フリティラリア様のお父様、すなわちプロポーズしたお相手のお父様にお会いしに来たのに手土産の一つも持ってこないなんて、将来の義娘としての資質を疑われてしまうかもしれませんわ」
「そんな物どうでもいいだろう」
「まあ! とても大切な事でしてよ」
疲れたようにおっしゃったフリティラリア様に全力で否やを申し上げさせていただきますわ。
「そもそも、プロポーズにしたって無理がある。数千年生きる魔人の我と五十年も生きることが出来ない人族の君では寿命的にもありえないだろう」
「その問題が解決しましたらプロポーズを受けてくださいますの?」
「我の伴侶になるとなれば、他の魔人に認められるほどの存在でなければならない」
「魔国最上位女性統治資格保有者というだけでは足りないでしょうか? 実力を見せろとおっしゃるのなら、そうですわね、ご許可いただけるのならどこかの国を滅ぼしてまいりますわよ? それとも地下世界のダンジョンを制覇して来ましょうか? でも、あまりやりすぎるとダンジョンに潜って魔物を倒して生計を立てている方に悪影響が出てしまうかもしれませんわ」
「国を滅ぼすのは気にしないのに、魔物を倒して生計を立てている者の心配はするのか」
「過剰在庫の管理って、面倒なんですもの」
イベント期間中なんて、ランナーズハイになって気が付けばドロップアイテムが数十万個なんてざらでしたし、換金するのもとてつもなく面倒でしたわ。
運営に換金レートの変更を要求したり、換金手段の変更を要求したり、挙句の果てにドロップ品はいらないからイベント報酬だけ欲しいと泣きついた事もありますのよ。
そんな事を言っていたのは本当に一握りのユーザーでしたので聞き流されましたけれどもね。
ダンジョンの制覇は構いませんけれど、それに伴うドロップ品の管理は面倒ですわ。
一気に市場に流して世界中で経済崩壊を起こされても困ってしまいますし、それに比べればどこかの国を滅ぼしたぐらいなら、運悪く天災に遭ったと諦めていただけるのではないでしょうか?
『花と星の乙女』のイベントでも、星の厄災という定期イベントで地上に流星群が降り注ぎ、そこから発生した瘴気によって誕生した魔物を狩りまくるという物がございましたわ。
イベントの舞台はどこぞの谷だとか、平原だとか基本的に人のいないところでしたが、時折○○国などと思いついたように出現した国が舞台(犠牲)になる事もありましたから許容範囲だと思いますの。
しみじみとわたくしが説明いたしますと、フリティラリア様は『花と星の乙女』とはそもそも何を目指したゲームなのだと新たなる疑問が湧いてしまったようです。
そして、定期的にこの世界で起きている流星群による魔物の大量発生がそんな理由で起きているという事に少なからずショックを受けてしまったようなので、将来の妻としてここはどうお慰めするのが正しいのでしょうか?
「あとでわたくしの離宮に戻りまして夜光蝶花のお茶を召し上がりますか? 気分転換にいいかと思いますわ」
「数十年に一度、満月の光が煌々と満ちる夜にしか咲かない花のお茶がなぜある」
「温室で育てておりますの。滋養強壮疲労回復、リフレッシュ効果がありますわ。ゲーム的には体力回復魔力回復疲労回復の霊薬の材料でもありますわね。お茶としていただくことで効果は霊薬よりも下がりますが同様の効果がございます」
「温室で育てている?」
「はい」
「満月の光はどうした」
「夜光蝶花栽培用の部屋は毎晩満月の設定にしております」
そういえば、夜光蝶花を使って作るお菓子は一部の攻略キャラの好感度アップアイテムでしたけれど、フリティラリア様にも効果はありますかしら?




