77 予想外
洞窟を進む事数分─。
「これか」
ボス達は遂に目的地へと到着した。
「何ここ.....」
ローラは思わず声が漏れる。
一行の目の前には、体の大きいズロースよりも更に大きい石の扉が立ちはだかっていた。
「ボス。ここですか?」
「ああ。間違いない。俺が入手した情報通りだ」
石の扉には、何か読めない文字や模様が一面に彫られている。
ローラとリエンナは勿論、ボス達もその文字が読めなければ、模様の意味も分からない。
「これどうやって開けるの?」
「ガハハッ。心配はいらねぇ、その為にコイツを連れて来たんだからな!」
ボスはそう言いながらドヤ顔で、ズロースの腰を力強くドンと叩いた。
「あなた開けられるの?この扉」
扉の前へと向かうズロースにローラが声を掛けたが、その言葉には何の反応もしない。
そしてズロースはそのまま扉に手を当てながら魔力を練り上げた。すると扉に彫られた文字や模様が、ズロースが流し込んだ魔力に反応し光り始めた。皆はただその光景を見て唖然としている。
少して、輝いていた光りが弱まり消えてくと、直後大きな地響きと共に石の扉がゆっくりと開いていった。
「凄い……」
「おおー!やはりお前達、“オルソ族の魔力”が必要だったな。さぁ奥へと進むぞ!お宝は目前だ!」
「やっぱすげぇやボスは!」
ボスとヒョロイとコーデブの三人は盛り上がっていた。だが、ズロースはどこか悲しげな表情をしている気がした。
それを見たローラが、小声でまたズロースに話しかけた。
「あなた、アイツ等の仲間じゃないのね。何で手を貸しているの?強いのに」
「君には関係ない」
一言だけそう言うと、ズロースもボス達の後に続き、奥へと進んで行った。
「何か事情がありそうですね」
「ええ。でも、先ずは自分達が逃げ切らないと危ないわ」
「レイさんとランベルさんもきっと私達を探している筈です、それまで何とか持ちこたえましょう」
「そうね」
ローラとリエンナは目を合わせてコクリと頷いた。
「何してやがる。早く豚連れて先歩け」
「だから豚じゃないぞオイラ!」
「静かにイノシ―。先歩けって、アンタ達がはしゃいで前に行ったんでしょ」
「肝の据わったお嬢ちゃんだな。トレジャーハンターに向いてるぜ。ガハハハハ!気が向いたらいつでも仲間にしてやるよ」
なる訳ないと、当たり前の事を言い返すのも面倒くさくなったローラは、黙って奥へと歩みを進めるのだった。
そして、扉からの一本道を数十メートル進むと、何とそこには眩しい程キラキラと光り輝く金銀財宝が山積みにされていた。
「うひょぉぉぉぉ!!!!」
「お宝だーー!!
宝を見つけるや否や、ボス達はその金銀財宝の海へとダイブした。
「なにコレ……。本当に宝があるなんて……」
「凄い……」
ローラとリエンナは、あまりの信じがたい光景に目を疑っていた。
まさか本当にこんなお宝が存在するとは夢にも思っていなかったのだから無理もない。
「うっひゃー!!これで大金持ちだぜ!!」
「ボス!世界中の酒と女を買いましょう!」
「ガハハハッ!そんなのはした金だ!もっと豪快に使わねば使い切れんわ!」
ボス、ヒョロイ、コーデブは大笑いしながら盛り上がっている。
――ゴゴゴゴゴゴッ……。
すると突如、何処からか地響きの様な音が聞こえてきた。
「何の音?」
ローラとリエンナは辺りを見渡した。
――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
「「――⁉⁉」」
遠くから聞こえた気がした地響きがだが、次の瞬間、ローラ達のいる場所が激しく揺れ始めた。
「何⁉」
「キャッ!」
「何だこれは!何が起こった⁉」
鈍い轟音と揺れる洞窟。
揺れが起こるたびに、パラパラと細かな石や砂が天井から降ってきていた。
「マズい、崩れるわよ!」
「―!ローラさん危ないッ!」
「――⁉」
リエンナの声でローラが上を見ると、ローラの元へ大きな岩の塊が落ちてきていた。
瞬時にリエンナが結界を出そうとした刹那、そのリエンナよりも早く動き出していたズロースが一瞬でローラを掴み、落ちてきた大岩からローラを助けた。
「あ、ありがと……」
「直ぐにここから逃げろ」
ズロースの予想外の行動に、状況が読み込めないローラ。だが、そのズロースの表情は何故か信用できるものだった。
今まで無口だったズロースが、少し焦っているのか口数が多くなる。
「巻き込んでしまってすまない。でも君のホウキの速さなら、洞窟が崩れる前に逃げ切れる。あの子を連れて早く行くんだ!そこの細い道をずっと突き進めば出られる。急げ!」
どういう事情があるのか全く分からないが、今は一刻を争う時―。
ローラはズロースの言葉に頷き、再び「ありがとう」と言ってホウキを出した。
「リエンナ!逃げるわよ!」
出したホウキにリエンナも乗り込もうとすると、それを阻む様にリエンナ目掛けて魔力弾が飛んできた。
それに気が付いたリエンナは結界でその攻撃をガード。飛んできた方を見ると、そこにはボスがいた。
「何してやがるお前達!おい、ズロース。これは一体どういう事だ!」
「やはりこんな事間違っていた。もうお前達に付くのは止める」




