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76 ズロース

「何?私達まだお宝を探さないといけないんだけど」


指名手配犯だと気付いたローラだが、出来るだけ平静を保っていた。


「例え小娘二人でも、顔を見られたとなると話は別だ。このまま逃がす訳にはいかねぇ」


「「――⁉」」


「“ヒョロイ”、“コーデブ”!あの二人捕まえろ!」


「了解ボス!」


ボスに命令され、ひょろっとした男のヒョロイと、背の低い小太りのコーデブがローラ達の元へ走り出した。


「え⁉ 何でそうなるのよ!」


ローラとリエンナは一瞬戸惑ったが、向かってくる男達を見て気付けば走り出していた。

しかし洞窟内は足場が良くない。思い切り走りたいところだがそう上手くはいかなかった。でも条件は相手も同じだと、ローラは顔だけ振り返り追ってくる男達を確認すると、信じがたい事に凄い速さで距離を詰めていた。


「何でそんな身のこなし軽いのよ⁉」


思わず大声で突っ込んでしまうローラ。

ヒョロイとコーデブは驚くローラの声が聞こえたのか、余裕の表情でその質問に答えてくれた。


「俺達は宝専門の“トレジャーハンター”だからな!足場の悪い場所なんざ日常茶飯事」


「そうとも!こんなの屁でもねぇ」


「トレジャーハンターって、やっぱりあんた達もハンターじゃない!……リエンナ乗って!」


「「――⁉」」


ヒョロイとコーデブがすぐそこまで迫ってきたタイミングで、ローラは瞬時にホウキを出し飛び乗った。どれだけ足場が悪くとも飛んでしまえば関係ない。リエンナもホウキに乗り一気に飛び去った。


イノシ―とタヌキチは流石モンスターと言うべきか、足場の悪さなど全く関係ないかの様に走り去り、ローラ達がホウキに乗った時には既に遥か先まで逃げていた。


「あの小娘ウィッチだったか……。“ズロース”!」


ボスが呼ぶと、獣人族の男がゆっくりと動き出した。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□



「――逃げ切ったかしら?」


ホウキに乗って瞬く間に逃げ去ったローラ達は、男達とだいぶ距離を取る事が出来た。後を追ってくる気配も無い。

ローラとリエンナは一旦ホウキから降りた。


「危なかったですね……」


「嫌な予感が的中したわ。アイツ、この前ニュースでやってた逃亡犯よ」


「え!刑務所から逃げ出したっていう指名手配の?」


「そう。兎に角ここから離れて、早くレイ達と合りゅ……キャッ⁉⁉」


静かな洞窟内に、ローラとリエンナの叫び声が響いた。


突如何かに捕まれたローラとリエンナ。身動きが取れず、妙な浮遊感が体を襲っている。


「ちょッ……何なのよ⁉」


「誰ですかあなたは……」


ローラとリエンナの視線の先には。体の大きな獣人族の男が。名はズロース。ローラとリエンナはズロースのそのデカい両手に捕まり、鷲掴みにされていた。

ローラ達がホウキに乗って逃げた十数秒後、ズロースは獣人族の最大の特徴でもある驚異的な身体能力で、一気にローラ達に追いついていたのだ。


必死に振りほどこうとしているローラ達であったがビクともしない様子。


「離しなさいよ!」


「大人しくしていれば痛い目には合わせん」


ズロースは一言だけ口を開くと、凄まじいスピードで来た道を戻って行く。すると僅か数秒で、再びボスの所へと戻ってきてしまった。


「おかえり」


「帰ってきたくて来た訳じゃないわよ!私達をどうする気?」


またもやボスと顔を合わせる羽目になったローラは、嫌味たっぷりにボスにそう言い返すのだった。


「強気な小娘だな。ホウキで逃げた時は驚いたが、コイツには敵わんさ」


ボスはズロースを見ながら言った。「次逃げようとしたら殺す」と、ボスに釘を刺されたローラとリエンナは、仕方なく男達に着いていく事に。

ボスの命令で、ズロースは掴んでいたローラ達を離し、男達はまた洞窟の奥へと進んで行った。


「何だコイツ。便利なブタ連れてるじゃねぇか!お前が先頭歩け……よっ!」


「痛ったいな!何するんだ!しかもブタじゃないぞ!猪だ!」


火の玉で明るく照らすイノシ―を、ボスは前へと蹴飛ばす。


「ちょっと!私のイノシ―に何してるのよ!モンスター虐待よアンタ!」


「うるせぇな」


……チャキン……!


「――⁉」


「騒いでも殺すからな」


ボスは鋭利なナイフの切っ先をローラの首に当てた。そしてそれが脅しではなく本気だという事を、ボスの表情が物語っていた。


「分かったら大人しく指示に従え。目的地はすぐそこだ。行くぞ。お前達が前を歩け」


ローラ達は仕方なくボスの言う通りにした。

ここで抵抗しても勝ち目がない。

ズロースの強さを感じているローラはそう判断したのだ。


「イノシー大丈夫?ごめんね。悪いけどもう少し付き合って」


「当たり前だ!蹴られたまま終われるか!」


ボスの指示で先頭を歩かされているローラ達。

蹴られたイノシーを気遣うローラだったが、イノシーはやる気満々であった。


主導権を完全に奪われたローラ達。

しかし、タヌキチが小声でこう言った。


「レイとランベルがもう近くまで来てるよ。もう少し頑張ろう」


このタヌキチの言葉に、希望を見出すローラとリエンナ。

何とかレイ達との合流を模索しながら、ボスの言う目的地へと歩みを進めるのだった。


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