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75 嫌な予感

「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」


「……助かったのか……?」


息を切らしながら、レイとランベルは話していた。


「ギリギリだったな……まさかあんな所に、“下へ続いている穴”があったとは……」


「よく気付いたなレイ……」


「この骨のお陰だよ」


レイは足元に転がっていた一つの骨を手に取り言った。


大岩玉が衝突する寸前、足に当たった骨が下へ落ちていく音に気付いたレイは、奇跡的にも下へ通じるこの穴を見つけたのだった。

人一人が通れる程のスペースであったが、唯一あの仕掛けを回避出来る方法がこの抜け道であったに違いない。

後は本当に力技であの大岩玉を破壊するぐらいしかないだろう。


無造作に転がっていた数人の人の骨。

あれは恐らく、宝を探しに来た者達が洞窟から抜け出せなくなったか、今のレイ達と同じようにあの大岩玉の仕掛けを受けて逃げ切れなかった者達だろう。


レイは手に持つ骨を静かに置き、ゆっくりと手を合わせた。


「……ここからは気が抜けないな」


「ああ。思っていた以上に危険な宝探しらしいな。外に仕掛けてあった罠とは危険度が違う」


「その分お宝の現実味が増してきたけどな」


「冒険に危険は付きものだが、早くローラとリエンナと合流した方がいい。あっちも心配だ」


ワクワク冒険から少し真剣な表情になるレイとランベル。


<我はこんなトラップよりも“他”が気になるがな>


ドーランの訝しい発言がよりレイ達に緊張感を生んだ。


「それって、俺達以外にこの洞窟にいる人達か?」


<そうだ。あの魔力の感じからして遭難している事はまずない。弱っていなかったからな>


「って事は……」


<レイ達と同じ目的の人間やハンターであろうな>


「きっとその人達も苦労してるだろうな。この洞窟に」


「悠長な事言ってる場合じゃない。早くしないと先越されるぞ」


レイとランベルは警戒しつつも、出来る限り早いペースでその後も洞窟を進んで行った。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


~洞窟(ローラ&リエンナ)~


あれからローラ達は、タヌキチが感知した四人組のハンターと思われる者達の所を目指していた。


洞窟内は思った以上に入り組んでおり、アップダウンが激しい。何とか奥まで進んできたローラ達は、四人組のハンター達の近くまで辿り着いていた。


「あ~、疲れたぁ」


「本当に深い洞窟。タヌキチさんが感知していなければ完全に迷子ですね」


「オイラの灯りも役立ってるぞ!」


「フフフ。そうですね。イノシーさんも頼りになってますよ。ありがとう」


「へへへ!そうだろそうだろ!」


「そこの角を曲がったら着くよ」


タヌキチがそう言い角を曲がると、そこには広く開けた空間が広がっていた。

広い空間に入ると直ぐに、イノシ―の灯りが眩く辺りを照らし、その奥の方に、タヌキチが感知していたと思われる四人の人影が確認出来た。


「――!」


急に辺りが明るくなった事に気付いた男達は反射的に振り返ると、ローラ達と目が合った。


「あなた達もハンターなの?」


ローラが男達にそう声を掛けた。

ただ普通に聞いただけのローラであったが、どうやら男達にその気はないらしい。


「何だお前らは」


「ガキがこんなとこで何してる」


ローラが思っていたのとは全く違う反応。

その言葉遣いや雰囲気で、明らかにローラ達を敵とみなしているのが感じ取れた。


「(何か危なそうな雰囲気……それに……)私達はただクエストで、この島にお宝を探しに来たの。まぁ本当に存在するのか疑問だけど」


嫌な予感がすると直感で感じたローラ。四人の男の中の一人に、何故か見覚えがある気がした。

しかしそれを思い出せないローラは、ごく自然な態度で男達に接する。怪しんでいる事を悟られない様に。


そんなローラを見た男達はまだ訝しい表情で見ているが、目の前にいる子供……それも女の子二人とペットが二匹という光景に、男達の緊張が少し緩んだ。


「ただの迷子か」


「ここに宝なんてねぇよ。早く帰りな」


ひょろっとした男と小太りの男がそうローラ達に言った。

ローラはそれを聞いた瞬間、得体の知れないこの男達から自然と離れるチャンスだと思い、そのまま男達の言う事に従う。


「そうなんだ……それは残念!じゃあ戻りましょリエンナ」


「そうですね」


リエンナもこの空気を察し、ローラと会話を合わせて来た道を戻って行く。


「――ちょっと待て」


「「――!」」


男の声にローラとリエンナの足が止まった。

振り向きたくはないが、ここで突然逃げる訳にもいかない。嫌な空気が流れる中、ローラとリエンナは男達の方へ振り返った。


「何?ここにお宝がないなら私達もう行くけど」


「どうしたんですか?ボス」


何も悟られない様に冷静に対応したローラ。ボスと呼ばれた男の言葉に、ひょろっとした男と小太りの男も不思議そうな顔でボスを見ている。そしてこの瞬間、ローラの脳裏にあるニュースがフラッシュバックした。


見覚えのある顔―。

ローラの記憶が正しければ……このボスという男、先日“刑務所から逃亡した犯罪者”だ。ニュースで指名手配として顔が出ていた。

思い出したローラは何とかこの場を乗り切ろうと思ったが、男の方が一枚上手であった―。


「お前ら……“どうやって”ここまできた」


ボスは真剣な顔つきでローラに問う。

何かを怪しんでいるのは雰囲気で分かったが、下手に嘘を付く事も出来ないローラは取り敢えず正直に話す。


「どうやってって……そんなの“歩いて”きたに決まってるでしょ?それとも何かこの洞窟には乗り物でも完備されてるの?」


「とぼけるなよガキ。この洞窟は広く入り組んでいる迷宮の様な場所だ。それにも関わらず、何故俺達の所まで“迷わず”辿り着いたんだ?」


ボスの言葉に、嫌な汗をかくローラ。何とか誤魔化そうとしたが、それは無理だとローラは直ぐに感じ取った。

目の前にいるボスという男に、全てを見抜かれている気がしたからだ。


「別にとぼける気はないけど、あなた達の事はタヌキチの魔力感知で偶然見つけただけ。言ったでしょ?クエストでお宝を探しにきたから何か情報があればと思って来ただけ。でもあなた達はお宝を知らないって言ったから私達の目的は終わったわ。これからまたのんびり探すだけよ(なるべく早くコイツ等から離れた方が良さそう……)」


ローラはそう言うと、再び踵を返しこの場を去ろうとした。


「待て!」


だが、またしてもボスに引き留められてしまった―。

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