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74 転がる大岩

突如立ち止まったタヌキチ。魔力感知が得意なタヌキチが何かを感知した様子。


「誰か見つけたのタヌキチ。きっとレイ達じゃない?」


「そうですね。今この島は私達だけの筈ですから」


「ううん。違うよ。レイとランベルの魔力じゃない」


「え?じゃあやっぱり何かモンスターがいるって事?」


「ううん。人間だよ。でもレイとランベルじゃない。“四人”いるし、ずっと立ち止まってるよ」


タヌキチの言葉に、不思議そうに目を合わせるローラ達。


「こんな所に人が?」


「もしかしたら、迷って出られなくなってるのかもしれませんね」


「可能性はあるわ。それでも何でここに来たのか疑問だけど」


「それか他のハンター達かも。クエストで、私達と同じ宝を探しているのでは?」


「それも考えられるわね……取り敢えず行ってみましょ。案内お願いねタヌキチ!」


「うん!」


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□



「――この役立たず!道迷ったじゃねぇか!」


「………………」


謎の四人組の男達。

手には地図でも持っているのだろうか、広げたその紙と洞窟内を何回も見直していた。

松明に付けられた火がユラユラと辺りを照らしている。

男達の視線の先には、いくつもの分かれ道があった。どうやら道に迷っている様子。


「どうしますかボス?完全に迷子です」


「うるせぇな!お前も少し考えろ!」


「この地図合っているんすかね?こんな広い場所あったっすか?」


皆が首を傾げて迷っていると、ボスが獣人族の男に蹴りを入れた。


「おい!お前も何か言えでくの坊!」


巨体の獣人族の男相手では、ボスの蹴りはほぼ無意味に等しかった。獣人族の男はゆっくりとボスの方を向き口を開く。


「今来た道を戻って、二つ目の角を右に行き、そこから下に降りれば“地図通り”にその場所に着ける」


淡々と答える獣人族の男。

まさかの発言に驚いていた男達だが、直ぐにボスの顔が険しくなった。


「貴様……分かっていたのなら何故言わない!」


「私はあなたの命令通りに動いているだけです」


皮肉とも取れる言葉に、ボスは気に食わず舌打ちをした。

溜息を付くと「まぁいい」と言いながらボスはは道を引き返して行き、残りの男達もそれに続いた。

細目のひょろっとした体系の男が、何やら小声でボスに話しかけた。


「ボス。あの獣人族どうするつもりですか?」


「なぁに、しっかり“後始末”は考えてある。大丈夫だ」


「流石ボス!頼りになります!」


「色々と使える奴だが信用出来ん。何考えてるかもわからねぇしな」


男達はそんな会話をしながら目的地へと向かって行った。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


~洞窟(レイ&ランベル)~




「「――うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!!!!!!」」


<騒がしい奴らだ……>


魔力感知でローラ達以外の人物を感知したレイ達は、あれからただ洞窟を歩くだけという平和な時間が流れていた。

思った以上に深い洞窟の割に、外とは違って仕掛けが全く無くて退屈だと話していたレイとランベルであったが、二人のそんな願いが叶ったのか、突如洞窟の通路一杯の大きさの大岩玉が転がってきた。


そして二人は、絶叫しながらその大岩玉から全力で逃げている最中である―。



「「――うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!!!!!!」」


「何だこの岩⁉何処まで転がって来るんだよ!」


「お前が退屈だとか言うから転がってきたんじゃねぇのかコレ!」


「お前だって暇とか言ってただろ!」


切羽詰まった状況に、訳の分からないイライラを互いにぶつけるレイとランベル。それでも容赦なく大岩玉は転がってくる。


「こうなりゃぶっ壊して止めるか⁉」


「アホか!あんなの砕けるか分からねぇぞ!失敗したら一撃で終わりだ!」


「じゃあどうすんだよ!!」


「知るか!!」


<急に行き止まりになって潰されるかもな>


「だからお前は急に出てきて変な事言うんじゃ……「―ヤバいぞ⁉ “行き止まり”だッ!!」


「何ぃぃぃぃぃ⁉⁉」


ランベルの言った通り目の前は岩の壁。レイとランベルが走っている道は分かれ道が全く無い一本道だった。

壁までおよそ三十メートル。このままでは数秒後にあの世行き―。


「……くっそ!もうコレしか手段は無い!」


レイは一気に魔力を練り上げた。大岩玉を破壊する気らしい。無茶だとは思いつつ、他に選択肢が無い為ランベルも一気に魔力を練り上げた。

行き止まりの壁ギリギリで反転し体の向きを変えたレイとランベル。


――カァン……。


レイの足が何かに当たり、ふと下を見ると……そこにはいくつもの人の骨が転がっていた。


「――⁉ これはっ⁉」


「まさか……俺達みたいに宝を探しに来た人達とかじゃ……」


様々な憶測が一瞬で頭を駆け巡るレイとランベルであったが、その間にも大岩玉は勢いよく転がり続け、レイとランベルの数十メートル手前まで迫っていた―。


「同時に真ん中狙うぜレイ!」


「ああ!流石にこの死に方は嫌だ」


――カラァ……ン…………カァン……。


攻撃態勢に入ったレイは、渾身の力で放とうと足を開き腰を落とした。その刹那、再び足元の骨を蹴ったレイであったが、全神経は最早骨ではなく大岩玉へと向いていた。


しかし、その蹴った骨の“落ちていく音”が聞こえた瞬間、レイの向けられた大岩玉へ神経は再び骨へと……足元へと戻った―。



「――⁉ランベルこっちだ!!」


レイは思い切りランベルの腕を掴むと、強引に自分の方へと引っ張った。


――ズドォォォォォォォォォォンッッ……!!!!!!!!!!!!


洞窟が揺れる程の衝撃と轟音が響き、大岩玉は壁に衝突した―。

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