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40 これが王家の財力か

ローラとランベルが絶望の面持ちで店の人へと事情を話す瞬間、店に入って来た人物を見てローラとランベルの二人は言葉を失った―。



「――やっと見つけた!こんな所にいたのかよ!」


「「……レイッ!!」」


店に入って来たのはレイだった。


ローラとランベルは、まるで神のおぼし召しではないかと言わんばかりに、レイの姿を見て嬉しさのあまり手を合わせ拝め喜んだ。


訳の分からないレイであったが、かくかくしかじかと早口で説明をする二人によって状況が理解出来た。

「迷子になった挙句お金も支払えないなんてどうしようもないな」と呆れながらレイが支払いを済ませた。


正確に言えば迷子になったのはレイであったが、危うく犯罪者となりかけた二人は最早そんな事よりも助かった事に安堵するのであった。


店から出たローラとランベルはどっと疲れが押し寄せ、その場に崩れる様にしゃがみ込んだ。


「まったく。何やってんだお前ら」


「マジで助かったぜレイ……。一時はどうなる事かと……」


「アンタがお金忘れるからこんな事になったのよ」


「やけになって注文したんだからどっちもどっちだけどな」


レイとローラとランベルがそんな話をしていると、店の外で待っていたリエンナが口を開いた。


「あ、あの~……」


その声でレイはあっ!と声を上げ、今度は二人にかくかくしかじか事情を説明した。


「――っは~……この子も王家なのか!王家ってこんなそこら辺にフラフラしてるんだっけ?」


「リルガーデン家って……また凄い家柄ね」


「まぁそういう事だからさ、宜しくな!」


王家というのは庶民が思うより大変なのか?と思うローラとランベルであったが、それはさておき……。


「宜しくな!ってアンタね、王家のご令嬢がいないなんてきっと大パニックよ!これからどうするつもり?」


「それを聞こうと思って探してたんだよ」


一難去ってまた一難。


王家のご令嬢がいなくなったなんて、リルガーデン家や目の前に聳え立つお城の中ではきっと大問題になっている筈だ。

ランベルの次はレイ。

呑気な顔して言っているレイに対しローラは頭が痛くなってきていた。


「リエンナ……だっけ?本当に戻らなくて大丈夫なの?」


「いえ……それは……」


「あのなぁ、本当だったら戻らないといけないに決まってるだろ。でもそれが嫌だからどうしようって悩んでんだよ」


「そんな言い切られても……。レイといいリエンナといい王家も大変なのね」


「でも実際どうするんだ?いくら嫌でもお前みたいに家出るって訳にもいかないだろ……?」


「いや、まぁそうなんだけどさ……。俺にはリエンナの気持ちが良く分かるんだ。だから少しでも何か力になれないかなって……」


「私も出来る事なら協力はしてあげたいけど……」


まさか王家のご令嬢がそんな事情でレイと一緒にいたとは知らず、困っているリエンナを助けたいとレイは勿論、ローラとランベルも同じ気持ちではあるが、相手が王家の者となればレイ達も軽はずみな事は出来ない。


そんな三人の困った様子を見ていたリエンナが申し訳なさそうに口を開いた。


「あ、あの……皆さん、私の事でご迷惑をお掛けして申し訳ありません。私はこのままお城へ戻る事にします」


「―! 何言ってるんだよ!行くの嫌なんだろ?」


「それは今回に始まった事ではありませんので……。私の我が儘で困らせてしまって申し訳ありません。

レイさん……今日はありがとうございました。助けてもらった挙句に我が儘まで聞いて頂いて、本当になんてお礼を申し上げれば良いか」


「だからやめろよ礼なんて。本当にいいのか?」


「ええ。どの道戻ればなりませんから」


作り笑い―。


今会ったばかりのローラとランベルでさ分かるリエンナの強がったその表情に、何もしてあげられない無力さに虚無感が生まれた―。


優しく微笑んでいるが、どこか悲しく儚げな表情のリエンナ。

ありがとうと言い残し、軽く頭を下げた彼女はレイ達の前から去っていった―。


「――ちょっと待って!」


かと思いきや、リエンナが二、三歩進んだところでローラが引き留めた。

リエンナは少し戸惑いながら振り返り、レイとランベルもローラを見ていた。


「リエンナ……私達だけじゃ、あなたの悩みなんか到底解決出来ない。だけど……少しの気晴らし程度なら私達にも出来ると思う!」


ローラは何かを思いついたような顔でリエンナに言った。


「何か思いついたのか?」


「ええ。ここじゃアレだから、もう少し静かな場所へ行きましょ!」


飯屋の前で話していた一行は、ローラに言われその場を後にする―。

リエンナとは全く別の事だが、歩いて移動している最中ふとローラは疑問に思った事をレイに聞いていた。


「―てゆうか、レイよくお金あったわね」


「お金?ああ。ダンジョンやった日の夜に、ボルゴにハンタータグ作ったから送金してくれって頼んでおいたんだ。なんか送るのに“時間掛かる”って言ってたから入ってるか心配だったけどな!」


レイの何気ない発言にローラは引っ掛かった。


通常、送金は専用の設備がある所からなら誰でも気軽に送れ、ソウルエンドの人々の生活には欠かせない当たり前のライフラインの一つである。

送金はとてもシンプルで簡単。必要なお金と送りたいハンタータグのデータがあれば一瞬だ。


それにも関わらず、たかが送金で時間が掛かるとはどういう事であろう……。

気になったローラがレイに聞くと、流石王家とも言うべき回答が返って来た。


「レイ……アンタ、“いくら”送金してもらったの……?」


「え?いくらって……100,000,000Gぐらいだけど」


「いッ……一億ぅぅぅぅ⁉⁉⁉⁉」

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