36 レイside③
何やらリエンナは訳あって食事会はおろか両親の所にも戻りたくないのだと言う。
理由は分からないが、流石にそれでは皆が心配するし王家のご令嬢がいなくなったとなれば大騒ぎになると思う……とレイはやんわりリエンナを促した。
しかしリエンナは余程戻りたくないのか、納得しないまま俯いてしまっている。
悩んだレイであったが、食事会は大体夜だった事を思い出しリエンナに確認すると今回の食事会もやはり夜である事が分かった為、少しだけリエンナの気晴らしになればと思い「一緒に王国内を観光しに行こう!」と重くなりかけていた空気を一変させた。
少しだけ表情が明るくなったリエンナと共に、二人はその場を後にした―。
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~水の王国・某所~
レイとリエンナは王都の飯屋に来ていた。
水の王国に来てからはしゃぎまくっていたレイは腹ペコだったらしく、リエンナに付き合ってもらいご飯を食べる事にした。
飯屋のメニューには美味しそうな料理の写真がズラリ。
そのメニューを嬉しそうに眺め選んでいるレイを見てリエンナも釣られて微笑んだ。
注文したメニューがレイ達のテーブルに運ばれ、腹ペコのレイは「いただきますッ!」と言うや否や勢いよく食べ始める。
王家というのはやはり色々大変なのだろうか、リエンナはレイと同じくあまり自由が無く、レイが経験してきた外の世界の話を聞かせてほしいとレイに言った。
似たような境遇でしかも年齢が同じ十六歳らしい。
レイには他の人より何倍もリエンナの気持ちが理解出来た為、リエンナの要望通りこれまでのレイの冒険談を教えてあげた。
王家を出てドーランと出会った事。
公にはなっていないアルカトラズでの騒動。
ローラという女の子とフェアリー・イヴに会った事……。
レイは初めてローラと会った時もこんな話をしたなと思いながら、つい最近のゴブリンやランベルの話もした。
話していて結構濃い内容だなぁと改めて思うレイ。
色んな事が起こって色んな出会いをしているが、まだかれこれ数日しか経ってないと思うとちょっと怖いなとも思うレイだった。
思い出というには早すぎる気もするが、そんなレイの旅の話をリエンナはとても楽しそうに聞いている。
「私も行ってみたいなぁ」と儚い表情で呟くリエンナに、レイは少し前の自分の姿が思い浮かんだ。
本当に似たような境遇―。
運が良かったのか悪いのか……何が正解かなんて分からないが、レイは自分が思う自由な世界へと羽ばたき始めた所。
狭く暗い息苦しい籠からやっと解き放たれ得た、自由というこれまでに経験できなかった外の世界。
新しい世界へ羽ばたけた者もいれば、まだ籠に閉じ込められている者もいる。
何か力になってあげたいと思うがこればかりはレイでは解決出来ない。
リエンナ自身の問題であり他人のレイが人の家の事に口を挟むなど筋違いもいいところだ。
だが、そんなレイでも少しばかりでもと思いローラとランベルをリエンナに会わせようと考えた。
大したことは出来ないが気分転換にはなるであろうと思い、食事を済ませたレイとリエンナは引き続き観光も楽しみつつローラとランベルを探し始めた―。
「―ホントにどこ行ったんだアイツらは……」
やれやれと溜息を付いているレイに、ドーランは「お主のせいだよ」と心の中で突っ込んでいた。
レイ一人なら空から大声でも出して探せばきっと直ぐに見つけられるだろうが、リエンナと一緒ではそうは出来ない。
またいつどこで誰に狙われるかも分からないし、リエンナがいないと気付いた家来や護衛の人達も当然探しているであろうからだ。
時間や集合場所を決めておけば良かったと後悔しながらも、レイ達はただひたすら探すしかなかった。
外からは分からないかもしれないが、それでも一旦城とその周辺の様子も伺っておこうとレイがリエンナに言い、
ローラとランベルを探しつつ、二人は城へと向かって行くのであった―。




