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29 オーガ戦①

「――グオォォォォッ!!」


低く響き渡るオーガの唸り声―。


村人達が一斉に奥から逃げてくる。それに逆らうように走るランベルとその後を追うレイとローラ。

ランベルがオーガの声のする方へ辿り着くと、既に数人の村人達がオーガに備え弓や槍を手にし待ち構えていた。


「……おお!来たかランベル!」


「オーガは?」


ランベルが現れ、武器を持っていた村人達の表情が心なしか軽くなった様に見える。


きっとランベルは強い―。


レイはこの時そう思った。


トワイライトの人達と同様、このポロン村にも戦闘が出来るハンターは数少ない。それも最低限戦えるレベルであろう。

「皆下がってろ!」とランベルが腰に差した剣を握りながら皆の前に出た。


嵐の前の静けさ―。


キーンと小さな耳鳴りだけが聞こえる程の無音。

十数秒続いたその静寂は突如破られた―。


「――グヴォーッッッッッ!!」


激しい雄たけびと共に人の何倍の大きさもある屈強な体で現れたオーガ。

角を生やし荒い呼吸している。

今にでも人を襲いそうな禍々しい雰囲気を放っていた。

ビッグ・Gも似たような雰囲気を持っていたが明らかにこのオーガの方が格上。


構えていた村人達もオーガのあまりの恐ろしさに萎縮してしまっている。

ランベルも一瞬驚いたが直ぐに剣を抜き構えた。

レイとローラも反射的に戦闘態勢に入っている。


<ビッグ・Gやダンジョンのゴーレムより強いな。気を抜くと一瞬でやられるぞ>


「分かってる。気なんか抜いてねぇよ!」


レイとローラが魔力を練り上げる―。


しかし、ランベルから想定外の事を言われた。


「―皆!危ないから下がってろ!レイ、ローラ!お前達も大丈夫だ。俺一人でいい」


驚くレイとローラ。


ローラは一人じゃ危険だと加勢すると言ったが、ランベルの気持ちは変わらない。

一見無鉄砲にも感じられたが、ランベルの確固たる自信が背中越しにでも伝わってきた。


「ここは俺の村だ。お客は楽しく観戦しててくれよ……将来、大団長になる奴の実力をよ!」


イタズラっぽく笑いながら振り返るランベル。

レイとローラはそんなランベルを見て自然と安心感が湧いてきた。


それと同時に……レイには一瞬、ほんの一瞬だけだが、ランベルが大団長となった姿が目に浮かんだ―。


ここまで言い切られたら従うしかないなと、二人は村人達と一緒に離れた所に避難する。


ランベルvsオーガ 戦闘開始―。


オーガと一対一で対峙するランベル。

既に興奮状態のオーガはランベルに突っ込み攻撃を繰り出す。


巨体にも関わらず動きが速い。

しかしランベルも速さでは負けていなかった。

振り上げた太い腕がランベルに襲い掛かるがそれを軽やかに躱し、オーガの拳は空を切ったまま下の地面を砕いた。

凹んだ地面はオーガの拳の形をしている。


そこから二発、三発と連続で攻撃をするオーガだがランベルは全ての攻撃を避け切り、三発目を躱すと同時に剣でオーガの腹部を斬り付けた―。


しかし致命傷とはならず、斬られたオーガは怒りそのまま更に攻撃を繰り出した。ランベルはその攻撃も躱し一旦距離を取る。


「―堅ってぇ体だな~。いつも以上に体重乗せないとダメだな」


思った以上のオーガの堅い体に傷が浅くなってしまったランベルだが、流石騎士団の大団長を目指していると言う事だけあって冷静に対応する。


ここでオーガは魔力を高め出した―。

地響きの様な鈍い音と共に魔力が練り上がっていく。


何か攻撃が来ると察知したランベルも魔力を高めた。するとランベルの髪や服が少しづつ風で靡かれる。


「風の魔法……珍しいわね……。あまり見かけないから後で調べさせてくれないかしら……」


見ていたローラが呟いた。


そうー。


ランベルは風属性の魔法を操る剣士であった。


オーガはまた雄叫びを上げると魔法を繰り出した―。


ボコボコと足元の地面の土や石が浮遊して集まり、大小様々な塊がオーガの周りに浮いている。

ローラのF・ショットの地属性バージョンと言うのが一番近いだろうか。


火の弾の代わりに無数の土の塊がランベル目掛けて飛ばされた―。


ランベルは無数に飛んでくる土の塊を剣で弾き身を躱わす。

小石サイズのものまで入れたら凄まじい数がランベルに飛ばされているが、一発も当たることなくランベルは全てを躱し防ぎきった。

大きな塊は避けるか斬るか……小さい塊はランベルによって生み出されているであろう“風圧”でランベルに当たることなく弾かれていた。


「ランベル凄ぇー!」


「あれで何で“Dランク”なの……?」


それを見たレイはとても興奮しており、まだ戦闘が始まったばかりだがランベルの強さを知ったローラは、何故自分よりもランクが低いのだろうと不思議に思っていた。

勿論、“ランクの高さ=戦闘力”ではない。


それぞれのハンターが自分の得意な分野で実績を積めば、戦闘力がまるで無くても例えば専門的な知識やヒーラー、サポート等のタイプでSランクハンターの人も当然いるのだ。


強さだけで見るわけではないハンターランクだが、それを差し引いてもランベルの実力ならCランク以上でも可笑しくはなかった。


ローラがふと疑問に思っていると今度はランベルが攻撃態勢に入っていた―。


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