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20 ゴブリン帝国

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


~雑木林の奥~


ロープで縛られ作戦もバレたゴブリン達はさっきまでの勢いが嘘かの様に意気消沈。

とぼとぼと大人しく歩きレイ達をアジトへと案内して行く。

雑木林の奥へ暫く歩くと“ゴブリン帝国”と書かれた大きな木の看板が地面に打ち付けられていた。


「ゴブリン帝国って……」


トワイライトの町から雑木林の更に奥へと行くと木々が沢山生い茂る森。


しかし看板の先はそこの辺り一面だけ開拓されたように木々が無く、代わりに如何にも“アジト”っぽいものが建てられていた。


小さな村のように造られたそのアジトには一番奥に大きな建物が一つあり、その周りに三つ四つ小さな建物があった。

縛られ歩いてくるゴブリン達に気付いたアジトの仲間達。何事かと次々に仲間のゴブリンが集まって来た。


「……おい!どうした⁉」

「何で縛られてるんだ⁉」


仲間に心配されているが、意気消沈の捕まったゴブリン三体は何も言わずアジトの奥にある大きな建物向かって歩いている。

その後に続きレイとローラが付いて行こうとしたが他のゴブリン達に止められた。


「何だお前達は!」

「ここは人間が来るような場所じゃないぞ!」

「何しに来やがった!」


突然のやってきたレイとローラにピリピリしているゴブリン達。

いつの間にか周りには二、三十体のゴブリンが集まっていた。

ゴブリン達はレイとローラを取り囲む様に行く手を阻む。

血気盛んなゴブリン達は直ぐにでも攻撃してきそうな雰囲気。


皆が一斉に野次を飛ばしていると奥から一際大きな声が聞こえて来た。


「――静かにしろッッ!!!」


その声で騒いでいたゴブリン達が一気に静かになった。


他のゴブリンとは圧倒的に違う体格をしたデカいゴブリン。

コイツがビッグ・Gだと一目で察したレイ達。


想像以上の大きさと危険な雰囲気を醸し出したビッグ・Gは、三メートル程あろうかというその身長に加えゴリラの様な屈強な体つきで目の前に現れた。


手には車二台分ぐらいのゴツいこん棒を持っている。こんなので殴られた日には一瞬でお釈迦だ―。


見上げる形でビッグ・Gを見るレイとローラ。

あまりのデカさに開いた口が塞がらなかった。


そんなビッグ・Gのすぐ横では、ローラに拘束されていたゴブリン三体が形勢逆転だと言わんばかりのドヤ顔でレイ達を見ていた。


多くのゴブリンに取り囲まれている間にあの三体はビッグ・Gの元へ行って事情を話し連れて来たのであろう。


ローラの魔法で縛られていたロープも解かれていた。お通夜モードから一転した三体はニヤニヤとずっと笑っている。


少しでも同情した自分が馬鹿だったと思うレイだったが、今はそんな事よりも眼前にそびえ立つビッグ・Gだ―。


「人間のガキが何の用だ……?」


ローラは大きく目を見開きパチパチと瞬きをしながらレイを見る。

嫌な汗が流れ鼓動はバクバク……怖くて言葉が出ない様子だ。


確かに想定よりも大きいゴブリンだったが、外の世界全てにワクワクしているレイはローラとはまた違ったドキドキが生まれている。


「―俺はレイ!いきなりお邪魔して悪いんだけどさ、町の畑荒らすの止めてくれない?町の人達困ってるからさ」


「…………」


「そんなにトワイライトの農作物が美味いなら俺が作り方聞いてきてやるよ!そうすればお前ら自分達で作れッ――⁉⁉」


レイが話している最中にも関わらずビッグ・Gは突如その巨大なこん棒を振り上げた―。


レイとローラは勿論、周りにいたゴブリン達もまさかの事態に皆慌てて逃げ出す。

ゆっくりと振り上げられたこん棒は一番上まで上がりきると一瞬動きが止まった。


「――ヤバい」……瞬時にそう直感した二人は反射的にビッグ・Gから距離を取る。


レイとローラが逃げようと動いたその刹那―。

二人の予感は的中。止まっていた巨大こん棒が凄まじい速さでレイ達ギリギリの所を通過していった。


間一髪で避けた二人だが、こん棒の風を切る音とその風圧が威力の強さを物語っていた。


「……あっぶねぇ~……!」


「死んだかと思ったわ……」


交わした二人は驚きの表情でビッグ・Gを見ていた。

右と左に分かれて避けたレイとローラのちょうど真ん中あたりに位置するビッグ・G。

ローラは恐怖のあまり地面に座り込んでしまっている。

攻撃を避けられたビッグ・Gは鋭く二人を睨みつける。


「小賢しい鼠だ」


そう呟くとビッグ・Gは体の向きをローラの方向に変えた。


「えッ…!ちょッ……噓でしょ……⁉」


<マズいなこれは>


「あっちのガキはまるで魔力を感じない……。先ずは貴様からだ人間の女ァ!」


狙いをローラに定めたビッグ・G。

その光景を見て呑気に感想を言っていたドーランを無視してレイはすぐさま走り出した。


既にビッグ・Gは再び巨大こん棒を振り上げ攻撃態勢に入っている。

間に合うか間に合わないか微妙過ぎる距離―。


ローラは完全に腰を抜かし魔法を繰り出すどころではなかった。


レイは動き出してはいるものの、さっきと同じ速さでこん棒を振られたら流石に間に合わない。

そんなレイの思いも空しく、ビッグ・Gは巨大こん棒をローラ目掛けて振り下ろした―。


(――畜生ッ……!間に合わねぇ……ッ!!)


その瞬間レイには一連の動きがスローモーションに見えた。


よく“最悪”の瞬間とかに見られる現象……。


まさに今のレイはそれであった。全ての動きが遅くなる。

このスローモーションでも分かる絶対に間に合わないタイミング―。


ゆっくりだが確実に巨大こん棒がローラに迫っていた。同時に、レイの頭の中では“あの日”の光景が過っていた。


(――“また”か……。また俺は目の前の人一人守れねぇのかッ……!!)


キャバルにエリザベスを……母さんを消された日―。


あの日の事をどれだけ後悔しているか……。


あの時の自分に魔力があれば……あの時の自分に力があれば…あんな悲しい思いはせずに済んだ―。

レイは二度とあんな思いをしない様にと心に決めてロックロス家を出たのだ―。


なのに……


目の前のこの光景は何だ?


自分に問いかけるレイ。

ロックロス家を潰すどころかゴブリン達にも舐められている。


己の無力さに悔しさとどうしようもない怒りが芽生えた―。


スローモーションの世界で必死にローラへと手を伸ばすレイ。

しかし、振り下ろされたこん棒はローラの寸前まで迫っていた―。


「……ローーラァァァァッ!!!」

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