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15 ヨハネの養子録

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

~ロックロス家~


レイ達がアルカトラズを後にした数時間後―。


騒動が少しづつ収まってきたアルカトラズからキャバルの側近の家来に一報が入った。


アルカトラズが襲撃されフロア「10」に収監していたイヴが逃げ出したという事。

そしてその襲撃犯が他ならぬレイ・ロックロスであったという事。

報告を受けた家来は慌ててその情報をキャバルに伝えた。


――ガタンッ…!!


「――何⁉イヴが逃げ出しただとッ⁉ 」


食事をしていたキャバルは報告に驚き勢いよく席を立ち上がった―。


見るからに焦っているキャバルはイラついた様子で家来に詳細を伺っている。

そして事の成り行きを聞いたキャバルはイヴの脱走にも驚いたが、その襲撃犯が自分の子供であるレイだという事に更に驚いた。


「一体何が起こっているッ……⁉ このままではマズイッ……」


魔力0のレイがアルカトラズに襲撃するなど絶対に有り得ない。

いや、例え実力のあるSランクハンターでさえそんな馬鹿な事をする奴がいるとは到底考えられなかった―。


幾つも疑問が浮かぶキャバルであったが、何よりもまず“自分にとって”都合が悪いのは、襲撃犯がレイでありその身元がバレる事。もう一つは全ての始まりである“真実”を知るイヴが逃げたという事。


どう手を打とうか考えているキャバルに“息子”が話しかけた―。


「――父上」


「ん……どうした?“ヨハネ”」


「お話を聞いていたのですが、今回の件……いっそ全てを無しにするのはどうでしょうか?」


そう提案したのは六年前のあの日、キャバルがレイに言い放った“養子”の子であった―。


今では出来の良い正真正銘ロックロス家の跡取り息子として王家の間でも知られている。

歳は勿論レイと同じ十六歳。

施設にいた彼をキャバルが見つけた。魔力が高く頭の回転も早い。

キャバルは何よりそんなヨハネのキャバルに対する“忠誠心”を大きく買っていた。

それに加え、まさにロックロス家向きなその性格にキャバルも絶大な信頼を持っていた。


「……と言うと?」


「はい。まずこのままでは間違いなく世界中に知れ渡る程のニュースになります。それ自体は問題ではありませんが、今回の事態の“中身”がロックロス家にとって、父上にとってデメリットしかありません。レイの存在とフェアリー・イヴの脱走……これを伏せるにはこの件に関わった者達全てを黙らせるのが一番です。


事が大き過ぎるので、中途半端な事をすればどこからか情報が漏れてしまうでしょう。ならば虫一匹出られない様に、関係者全てに蓋をした方が賢明かと―。

そうすれば絶対に今回の件が外に出る事もありませんし、仮に出たとしても、“誰”が“どこから”漏れたのか直ぐに的を絞れます。

情報を漏らすなど、そんな事をした者は当然我がロックロス家への反逆罪で罰を与えれば良いでしょう」


台本もなくスラスラと流暢に話すヨハネ。

瞬時に完璧な案を出すヨハネに、キャバルは豪快に笑いながら“息子”の肩を抱いた。


「ガッハッハッ!流石我が息子だ!瞬時にそんな案が浮かぶとは恐れ入った!」


「ありがとうございます。父上。実はまだこの先の考えがありまして……」


「おお!そうかそうか、悪いな途中で遮ってしまって!それでその先とは?聞かせておくれ」


絶大な信頼を持つヨハネにキャバルも前のめりで話を聞く。

そして彼はまたスラスラと話し始めた。


「はい。関係者を黙らせるのはこのロックロス家の力持ってすれば十分ですが、やはり問題はレイとフェアリー・イヴ。父上もご存じの通り魔力0のレイではアルカトラズ襲撃など不可能……“イヴの力”が働いている事はまず間違いありません。

イヴの目的が何か分かりませんが、もし我らロックロス家を消したいのならば今すぐに戦争を起こしても良い筈です。それをしないという事は何か別の目的があるのではないかと思います。

仮に戦争を起こすにもしてもあのフェアリー・イヴとなれば無策に突っ込んでくるなどしないかと。だとすれば下手に捕まえようとせず奴らを泳がせ目的をこちらも把握した方が一番賢明かと思います父上」


作られた人形の様に笑みを浮かべながら話すヨハネ。笑ってはいるものの彼のその目には生気がまるで感じられない。ヨハネは独特な雰囲気を持つ少年だった。


話を聞いたキャバルは再び豪快に笑うと、ヨハネの案を全て受け入れその通りに家来達を動かせた。


心底満足しているキャバルは「これでまた何でも好きな物を買っていいぞ!」とヨハネに金貨を大量に渡す。


ありがとうございますと受け取るヨハネの表情はずっと変わらないままであった―。


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