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09 ツインヴァルト

「俺はレイ!名前は?」


「あ、私は……ローラ」


「そっか!ここにいるって事は……何か悪い事したの?」


「してないわよ!間違って連れてこられただけ!もう帰るところだったのに急に天井に穴が開いて何故かここまで落ちてきちゃったのよ!」


今初めて会ってローラの事は何も知らないレイだが、彼女が嘘を付いていない事は直ぐに分かった。


こうなってしまったのはほぼ自分のせいであると思ったレイは座り込んでいるローラに手を出し立ち上がらせると、イヴの方を向いて言った。


「じゃあ無事イヴも出られたし、これ以上面倒起こらないうちに逃げようぜ!」


<確かに。もうここに用はないからな。イヴ…後で異空間について詳しく教えてもらうぞ>


「――ここを出るのは賛成だが、私は異空間について“何も知らないよ”」


「<……はッ⁉⁉⁉>」


まさかのイブの発言にレイとドーランは目玉が飛び出る程驚いた。


この状況でまだふざけているのかと思ったが本当にイヴは知らない様だった。

今までの事は何だったのかと文句をぶちまけたいレイとドーランだったが、アルカトラズの建物の無線で「緊急要請していた軍の部隊が到着する」と繰り返しアナウンスされたので、兎に角ここから逃げようとレイはローラを抱え再び翼で飛び立った。


それに続きイヴも飛び立ち…レイ、ドーラン、イブ、そして事の成り行きでローラという女の子を連れ、レイ達はアルカトラズを後にした―。



この出来事が、後に起こる大きな争いの引き金となるとは、この時はまだ誰も予想していなかった――。



□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


~とある森・ツインヴァルト~


アルカトラズでて大騒動を起こした一行は、アルカトラズから離れたとある森に着いた。


イヴが暮らしていたという世界でも一、二を争う大自然の森である。大きな二つの山が並んでいるのが特徴で、通称『ツインヴァルト(双子山の森)』と呼ばれるその森は妖精やエルフ、野生の動物達も数多く暮らしている。


広大に続くこのツインヴァルトでは滅多に人が入ってこない。迷い込んだら帰られないと言われる程広く深いのだ。


一騒動起こした事もあり、余り人目に付かない場所がいいとここに来た。


「――あ~。懐かしいねぇ“我が家”は」


イヴは千年ぶりの自分の住処の匂いや空気に浸っていた。

すると、イヴの魔力を感じ取ったのか次々にエルフや妖精達が驚いた顔をしながら集まってきた。


「イヴ様ッ!!」

「――⁉⁉」

「何でここに⁉⁉」

「アルカトラズから出てきたのですか⁉」


アルカトラズに捕まっていたはずのイヴがいることに皆驚いている様子だ。


「久しぶりだねぇ皆。元気にしていたかい?フフフッ」


エルフの寿命は人間と比較するととても長い。

およそ人間の百倍と言われるその寿命は一万年―。

単純計算で人間の百歳がエルフの一万歳となる。レイと同い年ぐらいなら一六〇〇歳、ちなみにイブは八九九〇歳になる。


森にイヴが帰って来たという情報は一気にツインヴァルト中に広がり、エルフや妖精達が一堂に集まったかと思いきやそのままパーティの様なお祝いが始まった。イヴが帰ってきて皆とても喜んでいる様だ。


突然の盛り上がりだったが、レイもローラもその陽気で楽しいこの場の雰囲気に直ぐに溶け込みエルフや妖精達と仲良く話したりご飯を食べたり踊ったりと、とても和やかに盛り上がっっていた―。


イヴは皆から質問攻めにあっていたが、結局のところ「面白いことが起こりそうだ」とアルカトラズから出ることを決めたと皆に話している。

盛り上がりも一段落してきた頃、まだ盛り上がっているエルフ達を見ながらイヴとレイ達は本題である異空間について話し始めた。


「イブ!本当に異空間について知らないのか?」


「知らないねぇ……。アレはロックロス家の連中が魔力と“呪い”を合わせて生み出したと言われる遥か古代の古魔法。私も千年決戦でアンタが封印されるのを見るまで信じられなかったからねぇ」


<そうであったか……。魔法をよく知るイヴが唯一の手掛かりだったが……>


「何でそんな昔の魔法をロックロス家なんかが……?」


「それは私にも分からないが、結局のところ全てはロックロス家が始まりさ……」


「――ねぇねぇ……!」


イヴとレイとドーランが話し始めると、これまでなんとなく流れで一緒に盛り上がっていたローラも割って入ってきた。


「改めて……助けてくれた事はありがとう!レイ……だっけ?聞きたいことが山ほどあるんだけど!」


アルカトラズから帰ろうとしていたローラにとってはここに至るまで怒涛の展開だった―。


レイが何をしていたか、何故あんなところにいたのか、一緒にいるエルフは何者なのか、そもそも天井に穴を開けて私がこんな目に遭ったのもレイのせいなのか等々…ローラは溜まりに溜まっていた疑問を全てぶつけた。


事の発端は間違いなくレイ達であった為、その責任を取ろうとローラの質問に全てしっかり返したレイ―。


この質疑応答はしばらく続いたのであった―。

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