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第18話 因縁の対決


 一ヶ月ちょっとの練習期間をおいて、魔法競技祭の日はすぐにやってきた────


 魔法競技祭は、魔法学院と修剣学院の間にある訓練用の森林や平地が広がる場所に建っている円形の競技場で開催される。


 そして、障害物競走や魔法狙撃などなど……競技はどんどん行われていき、最終競技プロテクション・オブ・キングを残した現在の暫定順位が────


 一位:一組

 二位:三組

 三位:二組

 四位:五組

 五位:四組


 という感じになっていて、レイの所属する三組と一組とのポイント差は僅かで、次のPOKの結果次第で順位が逆転することも可能……なのだが────


 総当たり戦のこの競技。

 一組と三組はどちらも三勝無敗という結果に。

 つまり、一組と三組の直接対決の結果で順位が決定されるのだ。


(ってか、気にしないようにはしてたんだが……)


 レイはフィールド整備の待ち時間の今、ため息を吐いた。

 都合の良いことに、近くにアリシアとルードルの姿はないから別に大丈夫だろうと判断して、レイは後ろに振り向く。


「ソフィー……お前来てたのな?」


 レイの目の前には、スピリチュアル・ボディーになったソフィリアが不満げに立っていた。


「ずっと観客席で叫んでたのに、君が全然気付いてくれないのでここまで来て差し上げました」


「気付くわけないだろ。客席に何人いると思ってんだ……」


 レイは呆れた視線を向けながら、面倒臭そうに後ろ頭を掻く。


「ただまあ、私が鍛えただけのことあって敵なしのようですね! 私のお陰です!」


「変に目立ってしまって、こちとら苦労してんだけどな……」


「次勝てば君のクラスが優勝ですね! まあ、人間に勝利するなんて出来て当然のことですが」


 と、ソフィリアは人間であるレイに向かって、鼻を鳴らして得意気にそんなことを言う。

 しかし、レイは「うぅん……」と唸って、待機場所からフィールドに──そして、その奥の別の待機場所にいるであろうある人物に視線を向ける。


「一組には、トップの成績で学院に合格した()()()がいる……これまでの試合でも同期とは一線を画す強さだったが、恐らくまだ本気じゃない……」


「ああ、()ですか……確かに別格でした。でも、それは君も同じですよ?」


「どうだろうな……」


「何ですか? 不安になってます?」


「いや、別に魔法競技祭で負けたからなんだよって感じだし……」


「ふふっ、相変わらず素直じゃないですね。誰よりも負けず嫌いのクセに」


「うっせ」


「では、そろそろ私は観客席に戻りますね。

 レイ……最後の一戦、頑張ってください」


「おう」


 レイの短い返答を聞いて満足したソフィリアは、翼をはためかせて客席に戻っていった。

 レイはそれを見送りながら、せめて客のいないところでスピリチュアル・ボディーを解除してやれよ? と思うのだった────



 □■□■□■



『さぁ! それではPOK最終決戦! どちらも無敗の一組と三組ッ! どちらが勝つのかぁあああああッ!?』


 実況も熱を入れた声になっている。

 そして、それに呼応するように、観客席の盛り上がりも最高点に達する。


「最後の最後で相手が一組……正直キツそうですね……」


 ルードルが苦い顔を浮かべながらそう呟く。

 その視線の先には一組から選抜された三人の生徒が立っていた。

 そして、その三人の真ん中には、第一位の男子生徒が立っている。


 長身でかなり痩せている。髪の毛は暗い灰色で、目は見るもの全てに興味を示していないかのようで活力が感じられない。

 これまでの試合から、黒魔法の属性は『錬金』だと判明している。


 しかし、そんな第一位の生徒に注目すべき中、レイはその隣の生徒に視線を向けていた。


 ────ルイド・ベリオール。一歳下のレイの弟だ。


 性格は最悪。

 レイが家を勘当される前も、レイとの仲は良くなかった。

 ことあるごとに、魔法の才に欠けるレイをバカにし、見下してきていたのだ。


(最近は意識してなかったが……ソフィーに魔法を習い始めたきっかけはベリオール家を見返すため……)


 レイの視線が若干鋭くなる。


 ここでこの勝負に勝つことが出来れば、その目的も達成ということになるだろう。

 どうせ元父バルサも観客席のどこかにいることだろう。


 そして、ルイドももちろんレイの存在に気が付いているし、一年生の間で広まっているレイの噂は耳にしているので、レイのことを不愉快そうに見詰めている。


「ねぇ、レイ……あの人と何か因縁でもあるの?」


 レイとルイドが視線を交錯させていることに気が付いたのだろう──アリシアが小声でレイに尋ねてくる。


「ああ……実は俺、アイツの兄だったんだ」


「えっ!? ……って、()()()?」


「俺はもともとベリオール侯爵家の長男だ。でも、魔法の才能がないとかで勘当されてな……」


「い、いきなり衝撃的なことすぎて理解が追い付かないんだけど……え、何? 貴方に魔法の才がないですって? そこが一番ワケがわからないわ……」


「あはは……まあ、アリスにはこの試合が終わったら話すよ」


「え、なんかフラグっぽく聞こえるんだけど大丈夫……?」


 レイは心の中で物語の読みすぎだろと呟くが、ふっと笑ってみせる。


「多分ルイドは問題ないはずだ。ただ……やっぱりあの第一位の奴……なんか嫌な予感がする」


「貴方がそう言うなら……相当ヤバイんでしょうね……」


「ん、随分と信用されてるな。俺」


「べ、別にそういうワケじゃ! ……でも、まぁ少しは信頼してるわ……」


「そっか」


 なぜか恥ずかしそうにするアリシアを横目に、レイは再び一組側へ視線を向ける。


 自分達の後ろには、守るべき王の姿をした石像が立っている。

 相手の後ろにも同じような石像が。


 どちらが先に壊すか────


『それでは! POK最終決戦──』


 会場全体が息を飲む。


『──開始ッ!!』

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