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第2話 交際契約書を作ってしまった私

「ん?えーと……交際契約書?てなんだよ」


 返って来たのは幸久(ゆきひさ)の怪訝な表情。

 やっぱり、そうよね。


「えーと。私は、今まで恋人とか出来たことないから。交際するに当たっての決まりを作ろうかと思って。それで契約書を読んでOKならサインしてほしいんだけど……」


 こんな事を言っている事がひどく非常識でずれていることはわかっている。

 たぶん、他の誰でもこんなことは書かないだろう。

 幸久ならなんとなく意図を汲んでくれるんじゃないかと思って作った代物。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

              交際契約書


 各当事者は、交際をするにあたり、交際契約(以下、「本契約」という)を締結する。


 甲:羽多野幸久(はたのゆきひさ)

 乙:湯川雅(ゆかわみやび)


 交際内容:

  1.甲と乙の二者間での外出や屋内での遊戯(以下、デート)

  2.甲と乙の肉体的接触(手を握る、抱擁、性行為などを含む)

  3.甲と乙の二者間での文字および音声によるやり取り

  4.甲と乙の相互排他的な独占権。


 契約締結日:2021年7月2日


 特記事項:

  1.について:一ヶ月につき一度以上とする

  2.について:一週間につき一度以上とする

  3.について:三日間につき、一度以上とする

  4.について:甲と乙はお互いに、甲乙以外の第三者と二人きりで会わないことを求める事が出来る。


第一条(契約の目的)

 1.本契約は、甲と乙の交際における権利および義務について定めることを目的とする。

 2.甲および乙は、信義誠実の原則に従い、誠実に本契約上の義務を履行する。


第二条(交際の内容)

 甲と乙が行う交際内容は上記の通りとする。


第三条(善管注意義務)

 甲と乙は交際をお互いに積極的かつ善良な注意をもって行うものとする。《《乙は甲の信用を傷つける行為》》その他不信用を一切行わない。


第四条(契約解除)

 《《甲は乙が》》以下各号のいずれかに該当するときは、何らの催告なしに直ちに本契約の全部または一部を解除することができる。


(1)本契約に定める義務の履行を怠り、これらの是正を求める甲の通知を受領した後、7日以内にかかる違反または不履行を是正しないとき


(2)乙が死亡した時。


(3)その他、本契約を継続し難い重大な事由が生じたとき


第五条(契約の有効期間)

 本契約の有効期間は、甲から乙へ契約満了の申し出があった月の月末までとする。


第六条(協議)

 本契約書に定めなき事項又は各条項の事項について解釈上の疑義が生じた場合は、両当事者誠実に協議した上、円満に解決する。


 本契約成立の証として、本書作成し、双方にて署名あるいは捺印を施し、双方保管するものとする。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「それと、交際してみて合わなかったらいつでもクーリングオフしていいから」

「……」


 幸久は言葉を失っていた。

 それもそのはず。こんなものを作成した恋人なんて普通居ないはず。


「なんていうか、雅も本当しょうがない奴だな」


 でも、かえってきたのは呆れではなくて、微笑みだった。


「自分に自信がないからって、こんな《《控えめな》》契約作らなくても。それに、雅。俺のこと好き過ぎるだろ」


 堅い言い回しだけど、気づいてくれたらしい。

 こんな事をわかってくれるのは、やっぱり幸久らしいなって思う。

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