第7話 怒りすぎです!
日本も暑いがフランスも暑い。
今年もヨーロッパに熱波がやってきて死者が出た。9月になってもまだ暑い。
暑いのでミカエル君と鳥居ちゃんはモン・サン=ミシェルの干潟で水遊びをした。
――― スーツ男にめっちゃ怒られた。
「うっ、うえっ…ひっぐ…。」
「ごべんなしゃい…。」
「この湿地はラムサール条約にも登録されている国際的に重要な湿地だ。そこでバッシャバッシャ水遊びするわ、水鳥を追っかけまわすわ…なんて悪い子たちだ!」
もともとスーツ男の顔は怖いが、怒ると超怖い。
「ちょっと怒りすぎだろう!」
「ミカエル様と鳥居ちゃんは、そもそも人じゃないんだ!一般人には姿も見えないし、自然に影響を与える訳がないだろう!」
見かねた3人組がスーツ男を諫める。
「う、うえっ。私だちが悪い子だっだのです、ごべんなじゃい…喧嘩じないで…ひっぐ。」
泣きじゃくりながらスーツ男と3人組の仲を心配する鳥居ちゃん。
お耳がぺったんこ…とか、尻尾がしぼんで…などとつぶやきながらオロオロする3人組。
毒気を抜かれたスーツ男は、ミカエル君と鳥居ちゃんに「もうしない」と約束させ、執務室に戻っていった。
「すんっ。」
「ひっく。」
「ああ可哀想に。」
「あの人は怒りすぎだな。」
「2人とも気にしないで。」
「すんっ…あのね3人にお願いがあるの。」
「ひっく。今日、本当はその話をするつもりだったんだけど、暑くて…お水をみたらつい遊んじゃって…。」
2人の子供らしさに苦笑する3人組。
「それでお願いって何かな?」
「すんっ。…あのね、もう9月でしょう?」
「そうだね、暑いのももうすぐ終わるね。」
「私、もうすぐここに来られなくなるの。」
「な………!」
「え…?」
「どうしてっ!」
「すんっ。鳥居…。」
「ひっく。9月までの期間限定だって聞いた…。」
鳥居ちゃんとミカエル君が、涙をこらえ、絞り出すように言った。
「そうか…鳥居ちゃんは鳥居がなくなったら出現できないのか…。」
「あの鳥居は9月までの期間限定での設置だから…。」
ぽろぽろ涙をこぼす鳥居ちゃんとミカエル君。
呆然とする3人組。
ちょっと言い過ぎたな…と後悔して引き返してきたスーツ男が柱の影で硬直していた。