第53話 ロープウェイ観光
「ロープウェイ?」
「そうだよ、2人とも島内の観光はしたことなかったでしょう。」
今月も24日がやってきた。
鳥居ちゃんとミカエル君が実体化して島民と触れ合える日だ。
「鳥居ちゃんとミカエル君は動きやすい服を着て、あの帽子をかぶってね。」
「うん!」
バターン!
「お待たせ!」
「十一面観音菩薩様、ドアの開け閉めはお静かにお願いします。」
「…すまぬ。今日の護衛は我らじゃ!」
十一面観音菩薩と狸僧がカジュアルな登山スタイルでカッコつけていた。
髪型はストレートなロングで、バイオリンが得意なスパダリという設定の十一面観音菩薩。
タレ目を活かして、可愛い系弟キャラのイケメンな狸僧。
割と普通っぽい2人でホッとした引率の、のび太後輩。
「今日は僕と一緒だよ、1日よろしくね。」
ロープウェイ観光は弥山登山も兼ねるので体力のある若手が付き添う事になったのだ。
紅葉谷を抜けたところにあるロープウェイ乗り場に向かうが、鳥居ちゃんとミカエル君が元気だ。人外な2人は、はしゃぎ過ぎて後でへばる心配もないのだろう。
ロープウェイ乗り場へ向かう道は自然に囲まれて、これから登るぞという気持ちを高めてくれる。
「みんな集まってー。弥山に登るロープウエイは1度乗換えが必要だけど、2つ合わせてもあっという間だからね。
8人乗りだからみんな一緒に乗れるね。」
「わあ!すごい眺めだね!」
珍しくミカエル君が子供のようで微笑ましい。並んで外を眺める鳥居ちゃんの尻尾は高速で振られている。
2人を見守る十一面観音菩薩と狸僧も思わず笑顔になる。
「10分くらいで榧谷駅で獅子岩駅行きのロープウェイに乗り換えだよ。
終点の獅子岩駅から弥山山頂までは、だいたい20分くらいかかるかな。」
「天狗は普段から、こんな景色を眺めているんだねえ。」
「そうだな。羨ましくもあるが、あの翼は普段からお山の平和維持のために役立てられているからなあ。」
「着いたよー。2人とも降りて。」
乗り換えるとあっという間に終点だった。
「まずは展望台から景色を楽しもうか。」
「わあ!」
「とっても綺麗だね!」
「瀬戸内海の海って優しいね。」
「モン・サン=ミッシェルの海も素敵だよ!」
「そう?ありがとう。」
「今日は歩いて弥山のパワースポットを巡りながら頂上の展望台を目指します。登ったり下ったりの繰り返しだから頑張ろうね。」
頑張りが必要なのは自分だけなんだろうな…みんな人外だものね…と思いながら説明するのび太後輩。
予想通り、楽しくお喋りしながら歩く鳥居ちゃんとミカエル君と十一面観音菩薩と狸僧。
そして無言の のび太後輩。ぜえぜえ。
「なんて素晴らしいんだ…!」
日本らしさと伝統と威厳を兼ね備えた弥山本堂と霊火堂にミカエル君が言葉を失っている様子を見て、十一面観音菩薩と狸僧が誇らしげだ。
「ミカエル、三鬼堂もおススメだぞ。」
「全国で唯一、鬼の神様(鬼神)を祀っているんだよ。」
「タイムスリップしたみたいですよね。」
「うん、ここの空気は心地良いよね。」
「この先には観音堂、文殊堂、そしてインスタ映えなくぐり岩だ。ここで写真を撮るぞ!」
はしゃぐ十一面観音菩薩と狸僧が納得するまで撮影させられた。
「くぐり岩を抜けたら、あと少しで山頂ですよ。」
自分に言い聞かせるように説明するのび太後輩。人外たちは疲れ知らずだ。
山頂でも人外たちは元気にはしゃぎ回った。
その間、のび太後輩は展望台の二階で寝そべって疲れを癒した。
鳥居ちゃんとミカエル君のことは十一面観音菩薩と狸僧に任せた。人間の体力では無理だ。
同じコースを逆に辿って夕方には大聖院に戻ったが、のび太後輩は、へとへとでもう動けない。
「ただいま!メイちゃん。」
「じゃあ、僕たちメイちゃんのお散歩に行ってくるね!」
ミカエル君と鳥居ちゃんはテンション、アゲアゲなまま休憩もせずにお散歩に出掛けた。




