第42話 楽しいお出かけでした!
アシカライブでは飼育員の指示を無視して泳ぎ回るアシカがいた。その自由さは、まるで仏像たちのようだな…と、メタボ先輩とオタク神主は思ったが、アシカライブは全体的に見応えがあって超楽しかった。
「輪投げ、やってみたい人ー?」
アシカライブの飼育員さんが観客に呼びかける。
「なんと!この芸には観客も参加できるのか!?」
「さあ、鳥居にミカエルよ、我こそはと挙手をせよ。」
「うむ、これは良い記念になるぞ。」
仏像たちが鳥居ちゃんとミカエル君を持ち上げて「はい!」「はい!」「こっちです!」と激しくアピールする。
…今日はシーズンオフな上に平日で観光客がとても少ないので、こんなにアピールする必要は絶対にないと思うメタボ先輩とオタク君だったが、鳥居ちゃんとミカエル君が嬉しそうなので黙って見守った。
無事に輪投げに参加した鳥居ちゃんとミカエル君は、とても楽しそうだったし、本気で参加してくる観客の存在は飼育員さんたちも歓迎してくれたので結果オーライだ。
「楽しかったー」
「アシカって頭がいいんだね!」
「うむ、芸達者であったな!」
アシカライブの感想を楽しげに話す鳥居ちゃんとミカエル君と仏像たちが微笑ましいな、別に心配することも無かったな…とメタボ先輩とオタク神主に余裕が生まれた頃…。
「ねえ…」
「だよね……!」
現代のイケメンにアップデートした仏像たちをチラチラと見る女性が少なくないことに気がついた。従業員たちは島民なので見えているのだろう。
振り返ってみると仏像たちが、「イケメン……」とか「あの人たちカッコいい…。」とかの囁きに、めっちゃ反応していた。
見られる角度を変えたり、自慢のポーズでイケメンぶりを見せつけていたが、見せつけるだけなら…と放置した。見られている相手は島民らしき従業員たちなので安心だ。
「可愛いね!サンチェとフレッチェの仮装?」
ペンギンふれあいタイムで気さくに話しかけてきた飼育員さんは、耳付き帽子の鳥居ちゃんとミカエル君の姿をサンフレッチェ広島のチームマスコットの仮装と思ったようだ。
「!」
「そうなんです、僕が好きで。」
一瞬、うろたえたメタボ先輩だったが、サッカー好きなオタク神主がそつなく対応した。
ちなみにオタク神主がサッカーに目覚めたきっかけは『キャプテン翼』だ。
そんなオタク神主を頼もしく思いながら、カープの話題は俺に任せろと意気込むメタボ先輩だったが、飼育員さんはプロ野球に興味がないようだった…。
その後、鳥居ちゃんとミカエル君は、ペンギンの餌やり体験やアザラシふれあいタイムを堪能し、大満足な1日を過ごした。
帰宅後、嬉しそうに水族館で見た事を話す2人に大聖院と厳島神社の関係者全員が、ほのぼのした。
バターン!
「ドアは静かに開けてください、十一面観音様。」
今日のお出かけ報告会に、お留守番だった仏像たちが乱入してきた。
嫌な予感しかしない。
「細かいことは気にするな!」
「毎月、24日は鳥居ちゃんとミカエル君のお出かけじゃろう?」
「ワシら、交代で護衛するからのう!」
嫌な予感が的中した。
その後、疲れた顔の僧侶と神主たちで引率のローテーションについて話し合われた。




