第36話 ミカエル君たちの目撃者は?
「こんにちはー!」
「遊びに来ましたー!」
今日も「鳥居のようなもの」を通って鳥居ちゃんとミカエル君がモン・サン=ミッシェルにやってきた。
「いらっしゃーい。」
いつもの3人組が2人を出迎える。
「ねえ、ミカエル君の噂ってどうなってるの?」
モン・サン=ミッシェルに遊びに来るたびに、ミカエル君が狐に変化した鳥居ちゃんを連れて観光客の前に出現してきたので、そろそろ結果が出ていないかと気になっていたのだ。
「僕も気になるな!」
「じゃあ聞きに行こうか?」
3人組と手を繋いでスーツ男の執務室へ向かう。
「こんにちはー!」
「遊びに来ましたー!」
「ミカエル君と鳥居ちゃん…とお前たちか……。」
3人組が2人と手を繋いでいるのを素早く確認したスーツ男。
「2人に案内を頼まれたんですよ。」
「ヤキモチですか?」
―― ヤキモチだった。
「あのね!ミカエル君のこと、噂になってる?」
「鳥居ちゃんのキツネも噂になってる?」
2人がスーツ男にまとわりつく様子を見て、3人組がヒヤヒヤしたが、スーツ男の顔がニヤけた。
おや?
――― ちょっと嬉しそうじゃね?
――― 意外だけど、あの方は子供好きって噂は本当なんだね…。
――― でも不幸なことに子供に敬遠されてばかりらしいけど…。
見せてー!と言いながら鳥居ちゃんとミカエル君が左腕に押し寄せ、落ち着きなさいと言い聞かせるスーツ男の頬が薔薇色に染まっていた。
――― ミカエル君と鳥居ちゃんは、現実の子供と違って怖がらないんだね。
――― 良かったねえ。
生暖かい気持ちでスーツ男を見守る。
スーツ男がネット掲示板を開いてみせる。
「このスレッドだ、2人とも見えるか?」
「…。」
「…ちょっと待って!」
どろん!
キツネに化けた鳥居ちゃんがモフっと、スーツ男の膝に乗る。
「ミカエル君、見える?」
「…うん、なんとか。ねえ、どの辺に何て書いてあるの?」
鳥居ちゃんキツネとミカエル君がスーツ男を見上げる。
――― おい…。
――― 写真に残したいくらいだね。永遠にからかうネタになるよ。
――― 顔面崩壊じゃないか……鼻血を吹かないといいけど…。
鳥居ちゃんキツネをお膝に抱いて、ミカエル君に寄りかかられ、2人が可愛く見上げてくる。
スーツ男のリミッターを越える幸せな出来事に、自我を保とうとする働きが制御できなくなり、人間らしさを失った結果…
「コノ スレッド コノアタリ。ココ。」
――― ロボットのようだった。




