第33話 議論、そして護衛付きの屋台巡り[思い出回]
「相談してくれたら良かったのに……。」
慌てた祭神や仏像から話を聞いて、神主たちと僧侶たちが集まった。
迂闊さを叱り飛ばしたい気持ちもあったが人目も憚らず号泣する神や仏を見て飲み込んだ。
ちなみに鳥居ちゃんとミカエル君は少し離れた部屋で子育て観音に付き添われながらYouTubeで各地の花火大会の映像をを観ている。
「2人とも立ち直って花火を楽しんだようにもみえるけど…。」
水鏡の映像をダイジェストで視聴したのび太の顔は曇ったままだ。
「強がっているだけだよね。」
「僕もそう思うよ。」
オタク神主の推測とのび太の推測が一致した。
2人の推測に祭神たちと仏像たちが、さらに落ち込む。
「とはいえ、認識されないものは仕方がないよね。」
「うん、2人には強く生きてもらうしかないよね。」
オタク神主とのび太の顔が痛ましく歪む。
それを聞いて俯いていた市杵島姫命様と田心姫命様と湍津姫命様の顔がグイッと上がった。
「認識されるようになれば良いのじゃな!」
「ちょい!ちょい!ちょいと待ったー!」
「なんじゃ、オタク神主。」
「急に元気になりよって。」
「元気じゃない!そうじゃなくて!」
「そうですよ!神様や仏様や妖は一般人から認識されてはいけないのです!」
「それだけは変えてはいけません!」
「それは分かっておる…。」
「島の外からきた一般人からは見えぬ。」
「島民だけに認識されるということですか?」
「しかし、それでも……。」
いつの間にか話し合いに参加していた上位階級の僧侶や神主たちが反対する。
「沖縄のキジムナーは島んちゅに溶け込んでいるではないか!」
「人間と結婚するキジムナーもいるらしいではないか!」
「あちらの島ではよくて、こちらの島では駄目だというなら、駄目な根拠を示せ!」
「島んちゅが良いのだから、宮んちゅだって良いはずじゃ!」
市杵島姫命様と田心姫命様と湍津姫命様が駄々っ子になった。
話合いの結果、お祭りの日だけ、島民限定で姿を認識し、会話を可能にすることになった。
「仕方ないの…。その条件で良いわ。」
「ウチの鳥居は可愛いからの。」
「いつでも誰にでも見えていたら良からぬ人間が現れるかも知れぬからな。」
祭神たちと仏像たちは、ミカエル君と鳥居ちゃんの護衛を名目に自分たちも姿を現すことを了承させた。
話合いが終わると同時にオタク神主とのび太が商店街に走り、ミカエル君と鳥居ちゃんのために、もう少しだけお店を開けていてもらえることになった。
ミカエル君と鳥居ちゃんはイケメン化した仏像たちに護衛されながら露店で食べ歩きを楽しんだ。
最初はギクシャクしていた島民たちだったが、人懐こい2人は直ぐに馴染んだ。
次に会えるのが楽しみだねえ!と見送られ、2人の初めての花火大会は楽しい思い出で幕を閉じた。




