第26話 ミカエル君が目撃されなくて!
「こんにちはー!」
「遊びに来ましたー!」
今日も「鳥居のようなもの」を通って鳥居ちゃんとミカエル君がモン・サン=ミッシェルにやってきた。
「いらっしゃーい。」
いつもの3人組が2人を出迎える。
そのままお茶でも飲もうかと、ほのぼのする5人をスーツ男が呼び止めた。
「最近モン・サン=ミッシェルでミカエル様の目撃事例がないと噂になり始めている。」
「そうなの?」
キョトン顔のミカエル君が3人組にたずねる。
「うーん、僕らは聞いたことないなあ。」
首をかしげる3人組。
「まだ噂になり始めたところだからな。」
それがどうしたの?と5人が仲良く首をかしげる。
「信者の皆さんはミカエル君に会えるかもしれないと、少なからず期待している人もいて…。」
スーツ男が言いにくそうにボソボソと話す。
「…でもミカエル君は姿を見せたいと思ってはいないんじゃ……。」
「ミカエル君が望まないことは、ちょっと…。」
「ミカエル君はもう、ここの住人じゃないし…お引越しして向こうでお友達が出来たのに…。」
3人組の表情が曇る。
「それに信者の皆さんじゃなくて観光客って言いたいんじゃ?」
「ミカエル君を集客に利用するなんて…。」
3人組が覚めた目でスーツ男を見る。
過去数百年、見えていないつもりだったのに、たびたび目撃されていたミカエル君にスーツ男が酷いことを言ってミカエル君を傷つけたことを根に持っているのだ。
「僕は構わないよ。」
「…ミカエル君。」
「本当にいいの?」
「無理していない?」
心配そうな3人組。
「うん、以前は人間に見られちゃいけないって思ってたけど、鳥居ちゃんと一緒に宮島で神社やお寺のみんなと過ごすのが楽しいんだ。
もちろん、向こうでも一般の方には僕らは見えていないんだけど、たまに見える人がいるみたい。ネットで噂になっているのを読むのが楽しいんだ!」
「オカルト板の私達のスレッド!【モルダー、あなた疲れているのよ】宮島での妖怪?天使?目撃情報【23体目】まで進んだよ!」
「ねえ、鳥居ちゃんも一緒でいいよね?」
「じゃあ私、狐に変化するね!」
どろん!
ふかふかの小狐に変化した鳥居ちゃんがミカエル君の腕に飛び込む。
「うわあ!可愛い!」
「ふかふかだねえ。」
「柔らかいねえ。」
「可愛いなあ。」
ミカエル君と3人組が代わる代わる狐の鳥居ちゃんを抱っこする。
「……。」
もふもふが好き。
そう言って仲間に入れたら良いのに言えないスーツ男。
それからしばらくすると、リアル狐に変化した鳥居ちゃんを連れたミカエル君の話題がネットで見られるようになった。
ミカエル様が連れている狐が可愛いと評判で鳥居ちゃんはご機嫌だ。