第21話 ピグモン君の人化
「僕、毛皮がモジャモジャだから人化が難しいんだ。」
ピグモン君が自分の家にミカエル君と鳥居ちゃんを招待し、悩みを打ち明ける。
「ピグモン君はプードルみたいで可愛いよね!」
鳥居ちゃんは今日もポジティブだ。
「ピグモン君はすでに人気者だから、
ありのままのピグモン君しか思い浮かばなくて…。」
俗世に疎いこともあり、アドバイスできないミカエル君。
「そうだ!ミカエル君の国にピグモン君みたいな人がいたよね!」
「どんな人!?」
「ちょっと待って……この人!」
太陽王と呼ばれたフランス王、ルイ14世の肖像画を掲げる鳥居ちゃん。
「…… 後ろ姿は似てるかな?」
ミカエル君のコメントは、あまりポジティブでは無かった。
「僕、王様のコスプレは止めておくよ。」
ルイ14世がユグノー(フランス・プロテスタント)を弾圧したことを思い出したピグモン君が遠慮した。ミカエル君を傷つけてしまうかもしれないと思ったのだ。
鳥居ちゃんに、この辺りの知識が無いのは鳥居ちゃんの生みの親である祭神たちが西洋の歴史に詳しくないからだろう。
「ねえ、鳥居ちゃん。現代の巻毛の人はいないかな?」
ピグモン君の質問に頭を捻る鳥居ちゃん。
―― 巻毛でロン毛……ロン毛といえばミュージシャン…。
「ピグモン君!この人はどう?」
鳥居ちゃんがマーティ・フリードマンの画像を掲げた。
「ええっ!Megadethのメンバーだったマーティさん!?Megadethの黄金期を支えた、あのマーティさん!?」
※ Megadethは、アメリカ合衆国出身のヘヴィメタル・バンド。同時期にデビューしたMetallica、SLAYER、ANTHRAXと共に、スラッシュメタル"BIG4"と呼ばれた。
「Megadethの4thアルバム『RUST IN PEACE』 (1990) から 8thアルバム『RISK』 (1999)までの作品すべてにメンバーとして参加したマーティさん!?
特に全米チャート初登場2位を記録したり、ダブル・プラチナムを獲得したりしてバンド史上最大のヒット作となった5thアルバム『COUNTDOWN TO EXTINCTION』(1995)、あのアルバムの素晴らしさは、サウンド面におけるマーティさんの貢献抜きには語れないよね。
それに誰に何と言われても好きなものは好きと言うマーティさんて本当にカッコいいよね。
演歌好きなマーティさんが『2008年紅白歌合戦』で石川さゆりさんの「天城越え」の伴奏を務めた時は感動したよ…。」
「ピグモン君、楽しそう!」
「ピグモン君はマーティさんのことが大好きなんだね!」
「に・に・に…似てるかなあ……。」
嬉しそうなピグモン君。
「変化してみなよ!」
「う、うん……。」
どろん!
ギターを背負った8歳くらいの赤い巻毛の少年がいた。とっても可愛い。
「可愛い!」
「うん格好いいよ!ピグモン君。」
「そ、そうかな。」
鏡を見て、コスプレの完成度にニヤけるピグモン君。
皆んなに見せに行こうと外に出た3人は、早速、不動明王に出くわした。
「おお、ピグモンはギター少年に化けたか!似合うな。でも仏や神の要素は無くても良いのか?」
「え?その要素って必要なの?」
「不動明王様たちだって、ただのコスプレを楽しんでるのでしょう?」
ミカエル君と鳥居ちゃんのピュアな疑問が不動明王の胸に刺さった。
「ワシらミカエルのために頑張ったのに。」
「そうですね。」
「確かにちょっとはしゃぎ過ぎたかもしれんが、怖がられないような顔になりたかっただけなのじゃ。せっかくなのでイケメンに寄せていっただけで……。」
「そうですねえ。」
その夜、大聖院の愚痴聞き地蔵は上司である不動明王の愚痴を聞かされた。
―― 今日も朝までコースかなあ……。




