第20話 依り代ともみじ饅頭
依り代の中は1L D K のアパート空間に似ている。
鳥居ちゃんは鳥居に、ミカエル君はミカエル像に住んでおり、それぞれの依り代は個性に合わせた快適な環境になってる。
「ミカエル君!市杵島姫命様と田心姫命様と湍津姫命様が、もみじ饅頭をくださったの。一緒に食べましょう?」
「いいの?」
「もちろんよ!私のお家にきて!」
鳥居ちゃんと手を繋いで鳥居を潜ると、キツネ好きな小学生の女の子のお部屋!という雰囲気の空間が広がっていた。
「僕、ずっと1人だったからお友達の家に遊びに来たの初めてだよ!とっても嬉しくて楽しいね。」
はにかむミカエル君がピュアで可愛い。
「どうぞ。」
「緑茶だね!」
「うん、やっぱりもみじ饅頭にはお茶が合うよね!」
「アメリカのセレブの間でも人気だよね。
ヴィクトリアズ・シークレットのエンジェルだったアレッサンドラ・アンブロジオも、
お〜い お茶を飲んでいたよ。」
「へえ、私たちにとってはお水代わりだよ。さあ、どうぞ!こしあん、粒あん、カスタードにフルーツ、いろいろあるよ!」
もぐもぐタイム。
「こしあんと粒あん、どっちも美味しいけど僕はこしあんの方が好きだな。でも粒あんも美味しいよ!」
「私はアップルが美味しかった!アップルパイみたいで美味しいよね!」
軽々と伝統を飛び越える鳥居ちゃん。
粒あんとこしあんを真面目に食べ比べたミカエル君もびっくりだ。
「其方らは子供よのう…。」
「ブランデーに浸してある“ほろ酔いもみじ”の旨さが、早う分かるようになるのじゃぞ。」
いつの間にか市杵島姫命様と田心姫命様と湍津姫命がいた。
「待て待て、ミカエル君はイケる口かもしれぬぞ。」
「そうじゃな、仏蘭西ではワインは水代わりで子供もグイグイ飲むと聞くからのう。」
「さあミカエル君、遠慮は要らぬぞ。」
なんだか嗅ぎ慣れない強い芳香がするが、断りきれずパクパクいった。
「どうじゃ?」
「美味であろう?」
ぱたん。
ミカエル君が気絶した。
「ミカエル!」
「どうした!?」
「しっかりせい!」
「う、うわーん!ミカエル君がー!!」
祭神たちは薬師如来にめっちゃ怒られた。
「こんなに小さな子供になんて事を!」
「ごめんなしゃい…ミカエル君を助けて…えぐえぐ。」
他人事のような祭神たちと泣きじゃくる鳥居ちゃん。
「鳥居ちゃんは悪くないぞ。悪いのはこのおばちゃんたちだ!」
薬師如来によるおばちゃん呼びに殺気立つ祭神たちだったが反論できず……とりあえず空気に同化した。
「さあ、これでアルコールが抜けたぞ。」
「あ、目が覚めたみたい!」
「起きても大丈夫?」
寝ぼけ眼で起き上がるミカエル君を薬師如来が診察する。
「鳥居ちゃんとピグモン君?」
「お酒入りのお饅頭を食べたミカエル君が倒れちゃって、慌てて薬師如来様を呼びにいったの。」
「鳥居ちゃんが薬師如来様を呼びながら違う方向に走って行くから驚いたよ。」
「えへへ、ピグモン君が薬師如来様と私を連れて帰ってくれたの。」
「ありがとう、鳥居ちゃん、ピグモン君。」
ギクシャクしていたミカエル君とピグモン君が親しくなるきっかけとなる事件だった。




