第1話 モン・サン=ミッシェルの鳥居ちゃん
「わあ!ここがモン・サン=ミッシェル!ミカエル君の言ってた通り、とっても綺麗!」
今、期間限定でモン・サン=ミッシェルに鳥居が設置されていると話題だ。
モン・サン=ミッシェル市と宮島のある廿日市市の観光友好都市提携10周年の記念に、モン・サン=ミッシェル市長が知人の大工に頼んで作ってもらったという鳥居が観光客を楽しませている。
そのため、鳥居の化身の鳥居ちゃんはモン・サン=ミッシェルに出現できるようになった。
「鳥居ちゃんに見せたかったから嬉しいよ。」
狐耳と狐尻尾に巫女服な幼女の隣で誇らしげなのはミカエル君だ。
ミカエル君は宮島にある寺院の中で最も歴史が古いとされる大聖院に設置された聖ミカエルの化身だ。
廿日市市とモン・サン=ミッシェルが観光友好都市提携を結んだことをきっかけに、お寺の中に、大天使ミカエルをお迎えしたのだが、宮島にきたばかりのミカエル君は、異文化の中に一人きりで大変心細い思いをしていた。
境内の仏像さん達にも馴染めず泣き暮らすミカエル君を見かねた厳島神社の祭神である市杵島姫命様と田心姫命様と湍津姫命様達が鳥居の化身である鳥居ちゃんを使わし、お友達になったのだ。
鳥居ちゃんが現れて、ミカエル君の生活は激変した。
大聖院の仏像様たちと打ち解けることができたし、二人で宮島内をあっちこっち遊びに出かけるのはとても楽しい。
とはいえ誰にでも2人が見えている訳ではない。
神社や寺院に勤めるものなら例外なく鳥居ちゃんとミカエル君の姿を見て、声を聞くことが出来るが、一般人は2人の姿を見ることが出来ないし声を聞くことも出来ない。
しかしお祭りの日などに2人ぼっちで寂しげな様子の鳥居ちゃんとミカエル君の様子に心を痛めた市杵島姫命様と田心姫命様と湍津姫命様たちがお祝いの日だけは一般人と交流できるようにしてくれたので2人はお祝いごとをとても楽しみにしている。
「鳥居ちゃん、中を案内するよ。」
鳥居ちゃんの手を引いて歩きだすミカエル君。
実家なので当然遠慮はない。ユネスコの世界遺産(文化遺産)とか関係ないし気にしない。
2人は観光客の入れない場所にもズカズカと入って行った。