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いきなり異世界と繋がっても、すぐには結婚できません!  作者: 七瀬夜香
貴女は私の巫女姫様
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貴女は私の巫女姫様 6

私とレイ、二人の間に、なんとも言えない空気が流れている…。



「…………帰れるってことで、いいんだよね?」


よくわからない単語が色々聞こえた気がしたので、とにかく一番大事なことだけ、繰り返し確認する。


「元の世界に帰ることはできますよ。ただし、今すぐに、と言うわけではないですが…。」

「え…?今すぐには帰れないっていうのは、どういうこと………?」


まぁ最悪、今日1日帰ることができなくても、スマホを忘れて出かけていたとか、大学サボったとか、それぐらいのことで事なきを得られると思うけど、さすがに何日も連絡ができる状況にないと、困ったことになる。


レイは、なぜそんなに深刻な顔をしているのだろう?と不思議に思っているようで、少し困ったような笑顔を浮かべている。



「エリィさんは、今すぐあなたの世界に帰れないと、何か困ることがあるのかな?」

「いや困るでしょ、普通に。」


間髪いれずに答えた。普通困るだろ、いきなりいなくなったら。


「最悪、今日は帰ることができませんなら、なんとでも後で言い訳ができるけど、さすがに何日も過ぎると、学校や家族との連絡がとれなくなるから、困るのよ。いつだったら帰れるの?」

「なるほど。エリィさんは、学校に通われているんですね。となると、登校しない学生がいれば、問題となりますね。ご家族と連絡がとれなくなると困ると言うことは、離れて暮らしておられるのかな?」


おそらく、頭はいいのであろう。レイは、私の困るという発言で、色々と察してくれている。


「エリィさん。まずは、あなたが元の世界に帰る為の方法を説明します。それがわかれば、何故『今すぐ帰ることが難しいのか』がご理解頂けると思います。」



レイは、真剣だけれども、私を不安にさせないようにと気遣ってくれているのか、やわらかな笑みを浮かべてくれている。


「まず、異世界へ渡る為には、魔法を使い『扉』開き『道』を作ることが必要になります。この魔法は、僕達の世界でも、魔法のキャパシティが大きい者でないと使えない魔法です。要は、一握りの者にしか使えないということです。」


レイは、指で空中に絵を描くように、扉とそこから繋がる道のようなものを、キラキラとした白い光で描き出す。

恐らくこれも魔法なのだろう。私に分かりやすいようにという配慮なのだと思うけれど、そのキラキラが美し過ぎて、夢中になってしまう。


「僕は、扉の魔法を使うことができるだけの

魔力のキャパシティがあったので、それを使い『扉』と『道』を作りました。そして、『道』のたどり着いた出口が、エリィさんの…………お風呂だったということです………。」



申し訳ないといいながら、頭を下げているレイに、もう大丈夫だからと頭を上げてもらう。


「この扉の魔法は、使える人間も限られますが、使える条件があります。それは、『僕達の世界から巫女姫がいなくなってしまった場合』です。この扉の魔法は、巫女姫を異世界で探し出し、連れ帰り、新たな巫女姫となって頂くことが目的の魔法なのでね。」


引き続き空間へのお絵描きで説明をしてくれているが、私の頭の中は、ひとつの疑問でいっぱいになる。


「ねぇ、さっきからミコヒメ?って言ってるけど、それって何のことなの?それが私が帰る帰れないの話とも関係があるってこと?」


「あぁそうか。エリィ達の世界では、巫女姫は存在しないんだったね。」


なんだか、丁寧な説明をしてくれたり、いきなり砕けた口調になったりするけれど、どこかの先生みたいに思えてきたな…。


「僕達の世界では、女神ライザを唯一神として信仰をしている。その女神に仕える巫女。そして、女神の力のかけらである、全ての妖精から愛され、妖精を束ねる姫、それが『巫女姫』だ。ちなみに、女神ライザ様は、時々世界に降り立ち、屋台で焼き鳥を食べてたりする、気さくな女神様だよ。」


焼き鳥を頬張る女神様…

…どんな女神様なのか、興味津々だわ。


「話をそらしてしまったが、巫女姫はこの世界の者ではなることが出来ない。それは、遠い昔から定められたことで、理由はわからないがね。そして、扉の魔法を使えた者は、異世界で巫女姫となりうる『巫女姫候補者』を探しだす。」


「ここまでで何か質問は?」と聞かれるが、そもそも想像もつかない突拍子もない物語過ぎるし、疑問しかないし、女神ライザ様のキャラが気になって仕方がないので、返答のかわりに首をふった。


「巫女姫候補者は、魔力の多い女性が選ばれる。エリィ達の世界では、魔法を使うことが難しいんだが、本人が全く気付かないだけで、魔力を持つ人はたくさんいるそうだ。それは生まれつき持った魔力であり、魔法を使わないから減ることはない。そして、仮に減ったとしてと、エリィ達の世界には妖精が存在しないので、増えることもない。だからこそ、巫女姫候補者は、気付かず持つ魔力が多い女性が、選ばれる。」


レイはお茶をひと口のみ。そして大きく息を吐いた。ちなみに、私がこっそりと、お皿のフルーツをちょこちょこ食べているのには気づかれていると思う。


「巫女姫候補者程の魔力のキャパシティがあれば、僕達が作った『道』を通り『扉』を開けることができるはずだ。間違いなくエリィさんは、『巫女姫候補者』たる魔力を持っているからね。」

「はぁ?」


確信を持った瞳で、力強く断言するレイは、私を真っ直ぐにみている。真剣な表情なので、自信があるのだろうけど…。

…いやいや、いきなり魔力があるだの、巫女姫候補者だの、何を言っているのかって感じだ。


「まず、ソファに座った際に、妖精の声が聞こえたらしいこと。何より、僕の作った『道』を通ることができたのが、巫女姫候補者である事実だよ、エリィさん。巫女姫候補者程の魔力を持てば、扉を開き道を通ることは容易だ。道は一度通れば、同じ場所に繋がるから、扉の場所さえ把握していれば、通るための魔力があれば、自由行き来はできる。…候補者の中から、巫女姫が決まるまではね。」



「で………狩に私が巫女姫候補者とやらで、何で今すぐ帰れないの?」

レイの話では、私が巫女姫候補者だとすれば、いつでも行き来ができるという話だ。恐らく、急にたどり着いたここと、私の家のお風呂が繋がっているということなのだろう。


「魔力が足りないんだよ、エリィさん。」

「え?でも、私の魔力?があれば、行き来できるんでしょ?」

「あぁ、行き来はできるはずだ。ただ、こちらに来る際に魔力を使っていることで、エリィさんの魔力は減っている。今の魔力の量では、今すぐ帰るのは無理だろう…。」


申し訳なさそうな顔をして、空中に描いた説明の『道』の部分に、大きく「×」と描いて、レイはカップを手に取った。


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