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「戻って………きた?」


一瞬、真っ暗闇で分からなかったが、どうやら物置の中に戻ってきたらしい。

一応、万が一の為に中から扉を開けられる仕様になっているものの、鍵はかかっていなかったので手間がかからなくて良かった…。


「……………ダメだ…………さすがに疲れた………。」


恐らく、ストリアにいた時間からして、先ほどからほとんどこちらの時間は過ぎていないはずだった。

窓からリビングに入り、テレビを見れば、やはり数分しか経ってはいないようだった。


「とりあえず、シャワー…。」


浴室に向かい、鏡を見ながら背中の編み込まれた紐を外して、ドレスを脱ぐ。

久しぶりに解放された感じがするっ!!!

ペンダントは、洗面台の小物置きにそっと置いた。

本当は湯船にゆっくりつかりたいところだが、こちらでは数分とはいえ、ストリアには何時間か滞在していたので、お腹が空いていた。


洗面所兼脱衣所で、いつも用意している厚手のタオル地のキャミソール型ワンピースを着て、ペンダントを首からかけて、自分の部屋へと向かった。

ペンダントは、なるべく肌身離さず持っていたかった。

タンスから下着類とTシャツとジーンズを出して、タオルワンピースを脱ぐ。

ショーツとブラジャーを着けた瞬間だった。

私のベッドの上で、青白い光が輝き出す!


「へっ…?」

「…着いたのか?………エリィ?」

「えっ………?レオさん……?」


さすがに3回目のことに、思わず戦闘態勢に入れば、目の前には、ベッドの上に片膝をついて座るレオさんがいた。

今日は、赤と白を基調にした騎士の服装だった。

もちろん、ブーツのままベッドの上にいる。


「…………っつ!済まない!着替えの途中だったんだな!」


レオさんは即座に後ろを向いて、うつむいた。

…そうだった!私、ブラとショーツしか着けてない!!!!


「わっ!!!こちらこそごめんなさい!!こんな格好でっ!!すぐ着替えますから!!!」


私は急いで、キャミソールにTシャツとジーンズを履く。

それにしても…どうしてレオさんがここに…?


「あの…お待たせしました。着替えたので…。」

「本当に申し訳なかった…。しかし、まさかエリィの所に繋がるとは思わなかったよ。」

「扉の魔法を、レオさんも使われたんですか?」

「あぁ、そうなんだ。父の命令でね…。おっと、ここは土足の場所ではないようだね。」


レオさんは、ベッドから降りて、ブーツを脱ぎ始める。


「びっくり……しました……。ストリアから帰ってきたら、レオさんが現れるなんて…。あ、ベッドで良ければ…座ってください。」


驚きから、再会できたことの喜びが沸き上がってきて、顔が爆発しそうになってきた。

レオさんがいる。目の前にレオさんがいる…!

もう会えないかもと思っていた人が、目の前でベッドに座っていることに、心臓の音がレオさんに聞こえそうなくらいだった。

レオさんが、私のベッドに腰掛けていることが、現実とは思えなかった。


「俺も…エリィの元へ繋がればいいと思っていたが…。まさか本当に繋がってくれるとは思わなかったよ…。」

「もう…会えないかもと思ってました…。」


レオさんを見つめながら、思わず出た言葉に、恥ずかしさからハッ!となり、レオさんから目をそらす。


「一緒に座って話さないかい?それとも、別の所へ移動した方が良いかな?」


そう言うと、レオさんはベッドの自分の隣をポンポンと叩いた。

ベッドで隣に座れと…!やばい!恥ずかし過ぎて、顔が3回ぐらい爆発しそう!


「あの…失礼します…。」

「ここは、エリィのベッドだから、失礼するのは俺の方かな?」


少し間をあけて座ったものの、優しく微笑む彼を直視するのは、心臓がギリギリだった。

相変わらず、とても素敵な人だと思った。

数回しか会っていないのに、彼を見つめるだけで、心臓がギュッと締め付けられる。


「そうですね…。えっと…レイは元気ですか?」

「あぁ、元気だよ。変わらずエリザベス嬢の元へ出向いているようだよ。」

「そうなんですね。…エリザベスさん、レイの話を聞くと、すごく会ってみたい方です…。」

「…俺は、エリィにまた会えたらと、ずっと思ってたけどね。」


目元をくしゃっとして笑う彼に、私の顔面が再び爆発した。

いやいやいやいやいやいや、反則でしょ!!!その顔は反則でしょー!!


「わわわわわわ私も、あの…………会いたかったです………。」


思わずTシャツの中に隠れた胸元のペンダントを、Tシャツの上から握りしめた。

それに気付いたレオさんが、私を見つめる。


「もしかして、俺がプレゼントしたペンダント?」

「あっ!はい!プレゼントしてくださって、ありがとうございました。」

「こちらこそ、可愛い小鳥をありがとう。これのおかげで、エリィの元に扉が繋がったのかもな。」


彼はそう言うと、胸の内ポケットから紺色の巾着袋を取り出した。

そこから出したものは、私がプレゼントしたときの小さな木箱だった。

箱を開けると、確かにラッピングして渡してもらった赤い柄の鳥が入っていた。


「夫婦鳥の相方に会えるように、繋いでくれたかな?」

「あっ!私の香木、下に置いたまま!ちょっととってきますね!」


部屋を飛び出し、リビングのダイニングテーブルに置いたかごを取りに、急いで階段をおりた。

ダイニングテーブルの上のかごは、フィリアさんから受け取ったまま、無事に置いてあった。

中身は、着ていた服に、レイのお土産と、レオさんのプレゼントの包装、そして、小さなメッセージカード。

あちらの世界の文字で書かれているので、見つめてみるけれど、妖精がいないこの世界では、読むことができなかった…。


「そっか、レオさんに見てもらえばいいのか。」


家着は洗濯かごに入れ、残りをかごごと抱えて2階の自室へと向かう。

…部屋にレオさんがいるとか…自分の部屋なのにすごく緊張してきたっ!!!

自室ながら、コンコンと軽くノックをして入ると、そこには先ほどと同じ体勢で座るレオさんがいた。

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