表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/56

王様と私13

「ここに来て初めて、妖精さんの声を聞いたかも…。」

「岩山の妖精は、あまり人と関わらない。気まぐれで、気難しい。そのせいで、この土地は元々人が住まなかった。」

「わしらは、長い長い時をここで静かに暮らしてきた。女神様に仕えることが、わしらの使命。全ての妖精が、人間の力になるなど、傲慢も甚だしい。」


丸い猫足テーブルの上にいるらしい岩山の妖精さんと話す為に、私とルシェルは椅子に座る。

声を聞く限り、妖精さんは一人しかいないようだった。


「あの…初めまして。絵梨衣と言います。ごめんなさい、私は妖精さんの姿が見えなくて…。」

「おぉぉぉ!エリイと言うのか!何とも心地よい魔力じゃ~。そうか、見えんのか…。では、これでどうじゃ!!!」


テーブルの上に、大きな銀色の光が現れる。


「見えたかのぉ~?光が見えたかのぉ~?」

「見えました!綺麗な銀色の光!」

「それはわしらの魔力の輝きじゃー!美しいじゃろぉ~!」

「…エリイには優しいのだな、岩山の妖精は。」

「お前にも優しくしとるぞ。」

「…ストリアの国民すべてにも、優しくしてもらえたら助かるんだが。」

「若くてかわいい者らには、目をかけとる。」

「…………茶の用意をしてこよう。」


ルシェルは、大きなため息をついて部屋から消えた。

…待って!姿が光だけの人と二人きりは、声が聞こえてもどうしていいわかんないから!


「えっ!ちょっと!?えっ!?」

「エリイは、ルシェルに興味はないのか?」

「あの………実はですね……フレールで、その…。」

「ほぉ!そうかそうか!それなら、その者と早く契るがええのぉ。」

「ちぎっ……いやいやいや、ただちょっと気になる人が出来たってだけなので!!」


ペンダントを握りしめながら、ちょっと前のミエナさんのように、全力で首をふる。


「そうかぁ…?巫女姫にならんと、気になる殿方とも離れることになるぞ?」

「あ………そうですね……。」


…そうだった…。候補者は、巫女姫が決まった後は帰ることしか出来ないんだった…。


「まぁのぉ……巫女姫とならなかった候補者が、召喚した人間と結ばれることもあるが…。」

「えっ!?それって、あり得るんですか?」


思わず、ペンダントを握る力が強くなる。


「あるとも!なんじゃ、ルシェルは話しとらんのか?」

「…話してないとは、何のことだ?」

「ふぁっ!ルシェル!」


お茶セットとお菓子をのせたトレーを持ったルシェルが、いきなり部屋に現れた。


「エリイ、こやつは候補者の息子じゃ。」

「えぇっっっ!!?」

「隠していたわけではない。話す必要が無かっただけのことだ。」


トレーをサイドテーブルの上に載せ、そこから手際よく、私と妖精さんの分のお茶、自分のお茶と、お皿に盛られた焼き菓子を用意して運んできてくれる。


「おぉ!わしらの好物、蜜入りクッキーじゃないか!」

「ライザ様が、蜜酒の為に蜜を集めて来ていたらしい。かなり持ってきたらしく、キッチンの者が大喜びしていた。それを使ったらしい。」

「ありがたいことじゃ…。しかし、蜜酒がお好きじゃのぉ、ライザ様は。」

「あのっ!お話中なんですけど、聞いても良いですか?」


椅子に座ってお茶を飲むルシェルと、飲んでいるのかいまいちよくわからない妖精さんは、ライザ様の話で盛り上がっていた。

…話の邪魔をしちゃうかもだけど…。でも、どうしても聞きたい!


「ルシェルのご両親は、ルシェルが幼い時に亡くなったと聞きましたけど、その…候補者だったお母様は、元の世界に戻らなかったってことなんですか?」

「……ふむ……わしが説明しても良いが…。」

「はぁ………。わかった、俺が説明する………。」


ルシェルは大きく息をついた。


「俺の母は確かに、元々巫女姫候補者だった。召喚者は、婚約者を亡くしたばかりの俺の父親、先代の国王だ。」

「こやつの父親のルーベンリースは、病で幼なじみの婚約者を亡くしてなぁ…。深く深く悲しんでおった…。」


…病…。それが、ルシェルが病と妖精について研究したきっかけなのだろうか…。


「婚約者を亡くして数年経ってから、巫女姫が亡くなり、扉の儀式を行うよう通達が来たそうだ。ストリアは魔術師の国だ。扉の儀式を行える人間は、他国より多い。しかし、国内での巫女姫絡みのいざこざが起きるのを危惧した父が、王たる自分のみが召喚を行うと決めたらしい。」

「候補者の取り合いになることで、国民同士が争わない様にってことね…。」

「ストリアは、他国と必要な交流しかしない、岩山に閉ざされた国だ。それは魔術の研究を進めるには良いが、国外の刺激に国民は弱くもある。国の中に、巫女姫候補者が何人も現れれば、世界は救えてもストリアが滅びる可能性もあるだろう。」

「その刺激に、しっかりやられたのが、ルーベンリースじゃ。」

「召喚した候補者と、恋仲になったってこと?じゃあ、何でその候補者は、候補者で終わっちゃったの……?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ