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王様と私12

「ル………シェル…!?」

「弟かどうか、試してみるか?」


肩まで長い髪はそのままに、急に大人の、しかも絶世の美男子の姿になったルシェルの姿に驚いている私の頬に、変わらずひざ枕をしたままの彼の手が伸びる。


「大人に………戻っ………!」


ルシェルは、私の頬を優しく撫でると、手を離し、ゆっくり起き上がる。

すべての動作が、神秘的なことのように美しくて、ただ起き上がっただけなのに、目が離せない…。


「弟かどうか…本当に試してみるか?」

「えっ………」


起き上がり、前に座った彼の手が、私の頭をゆっくりと撫でる。

その手は、先程彼を撫でていた時と違って、ひんやりとしている。

その冷たさと、彼の優しい笑顔に、一気に動悸が激しくなる。


「あの、弟っていうのは、その…。」

「エリイ…」


頭を撫でていた手が、私の顎に移り、その指で唇を優しく撫でる。


「やわらかいな…」

「んっ…ちょっ…!」

「もっと触れてもいいか?」

「へっ…?」


もう片方の手が、ベッドに置いた私の手を握りしめる。

私を見つめる、黒く深い紫の瞳が、熱を帯びる。


「もっとお前に近付きたい…。」


唇に触れる手が、私の首筋に移り、髪を掬う。

その冷たい手が首筋に触れ、思わず目を瞑る。


「ちょっ…!ルシェル…!」

「嫌だと思うなら、拒んでいい。防護魔術を使ってくれて構わない。」

「えっ…?」


後頭部に手を回したルシェルの顔が、少しずつ近づく。

逃げようと、拒みたいと思うのに、彼の真剣な表情と、この世のものとは思えない美しさから、目が離せない…。


「……ルシェ……ル……」

「ここにいてくれ、エリイ。」


そう言って、ルシェルは私の頬にキスをした。

その瞬間に、私の顔が真っ赤に染まり固まる。

それを見て、ルシェルは満足そうに微笑んだ。

…ペンダントの防護魔術は、発動しなかった…。私、嫌じゃなかったってこと…?


「なぜ、防護魔術でぶっ飛ばせなかったか…といったところか?」


ルシェルは、私の髪を撫で、そしてまた首筋に手を当て、親指で耳を撫でている。

私は、放心状態で、されるがままだった。


「身の危険を感じなければ、防護魔術のようなものは易々とは発動はしない。」

「……………あの………ルシェル……」

「ん?」

「そろそろ、…離してくれない…かな…。」


ベッドの上で重ねられていた手は、いつの間にか恋人繋ぎになってるし、耳に触れていた手は、いつの間にか二の腕を優しく掴んでいた。


「…まだ離したくないと言ったら?」

「……膝を貸すだけの約束だったわよね…。」

「あぁ。しかし、大人の男女がベッドですることは、ひとつだろう?」

「…………ひとつじゃ…………ないわよーっ!!!!」


ルシェルの遊び人発言に、放心状態から怒りにかわり、目の前の彼を思いっきり蹴る!

しかし、瞬間移動の魔法なのか、ルシェルは気づけば、ベッドの端に腰かけていた。


「俺の巫女姫様は、中々の格闘派だな。」


大人の姿に戻ったルシェルは、私を見てニヤッと笑う。


「…元から大人の姿になるつもりだったの…?」

「いや…そこまで魔力は回復していなかったが、エリイの膝で寝はじめてから、急激に魔力が回復した。恐らく、エリイに触れることで、俺がエリイの魔力を吸いとったんだろう。少年の身体では魔力が蓄えきれないと感じ、勝手に元に戻ったようだ。」

「吸い取るって…吸いとられたら、私が帰る為の魔力が減っちゃったってことよね?」

「そうだな。」


…そうだなって…おい…。

ルシェルが応接セットの方に移動したので、私もパンプスを履くために、ベッドの端に腰かけた。


「…誰かがいないと寝られないっていうのも、嘘?」

「さぁ、どうだろうな。」


ドレス姿でパンプスを履くのに一度ベッドから降りようとしていたら、ルシェルがこちらに来た。

片ひざをついて、私のかかとを持ち上げ、慣れた手付きでパンプスを履かせてくれる。


「…ありがと…。でも、自分で履けるからね。」

「お姫様扱いも、少しは慣れておくといい。」

「なんで?」

「俺の妻になれば、王妃だからだ。」

「ならないからっ!!!」


ルシェルは、私の足首をそっと持ったまま、笑顔でからかってくる。

離してほしくて足を動かしていると、手を離して私の横に腰かける。

そして、真顔になって私を見つめた。


「俺と共に生きることは、絶対にあり得ないか?」

「絶対っていうか、私は他に…」

『なんじゃ、エリイは巫女姫にはならんのか?』

「ん…?誰の声…?」


絶世の美男子の、真顔で熱のこもった視線に耐えられなくて、顔をルシェルの反対に向けたところで、おじいさんのような、小さな声が聞こえた。


「珍しいな、岩山の妖精が顔を出すとは。」

「何やら懐かしい魔力を感じたからなぁ。ライザ様かと思って来てみたら、なるほどなぁ。」


ルシェルが、応接セットのテーブルの上を向いて、誰かに話しかけている。


「あの、ルシェル?もしかして、妖精さんがいる?」

「あぁ。ストリアの岩山に宿る妖精だ。」

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