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王様と私10

「…街の中…?」


移動してきたのは、間違いなく街の中だった。

白と灰色の雲に覆われた空が見えていて、道は土の地面だった。

私達がいるのは、小さな広場の様な場所らしく、やはり小さな噴水があり、少しだけベンチが置かれている。


周りに見える民家やお店と思われる建物は、すべて石で作られているようで、白い壁のところが多い。

けれど、レンガ作りのようなものや、カラフルな色で塗られた壁があったりと、とてもバラエティにとんでいる。

お城の中の居住地と聞いていたから、時代劇に出てくる長屋みたいな作りを勝手に想像しちゃってたけど…。

ただ、魔物が出るからなのか、出歩いている人は、ひとりもいない。


「綻びって、うちの家の裏手でしたよね!ルシェル様!」

「それは既に修復している。しかし、農園に気をとられていた間に、居住地に何匹か魔物が入ったようだと連絡があった。」

「えっ!?魔物入っちゃってるの!?」


焦るミエナさんに、淡々と答えるルシェル、そしてひとりで焦る私…。


「あそこだ。ミールもいるな。あの程度に苦戦するとは、まだまだということか…。」


小さな広場から繋がる道の先で、何人かの人達の一番前にいるミレフレルさんがいた。

どうやら、熊のような生き物や、大きな鳥のような生き物、他にも何かわからないけれど動物のようや生き物が、ミレフレルさん達に威嚇をしている。

10匹はいないようだけれど、ここからみた限り、襲ってくる魔物?のような生き物に、防御で手一杯のようだった。


「ルシェル様!行ってきていいですか!?」

「あぁ、やり過ぎ注意でな。」

「はいーーーーっ!」


ミエナさんはルシェルの言葉を聞いた瞬間に、返事をしながら走って行った。

…それにしても、やり過ぎ注意とは…どういう…

と、思った瞬間に「ドーン!」という爆発音が聞こえる。


「やり過ぎ注意と言った矢先に…全く。」

「ルシェル…あのー…ミエナさんって…。」

「ストリアで一番の攻撃魔法使いだな。勿論、俺を除いてだが。」

「へっ………?」

「ミエナが街を破壊する前に、行くぞ。」


ルシェルが私の腕を掴むと、目の前には、光の壁のようなものを前に出しているミレフレルさんと、炎のボールを次々出しているミエナさん。

そしてさっきまで遠くに見えていた魔物達は、丸焦げになっている…。

魔物もだけど、街も色々と…。


「うわっ…………」

「ミエナ。やり過ぎ注意と言ったはずだ。」


ルシェルの声に気付き、魔法を止めてハッと後ろを振り向くミエナさん。

ミレフレルさんは、まだ壁のようなものを出したまま、魔物達を警戒している。


「あの…申し訳ありませんっ…!ミールを守ろうと思ったら、必死になってしまって…。」

「周りの被害は最小限に、魔法を標的のみに定める。何度も話したはずだ。それができなければ、ストリアの魔術師として派遣することはできない。」


ルシェルは、何度も頭を下げるミエナさんに声をかけた後、杖を前に構えて、何かを呟く。

すると、黒焦げになった魔物以外の、炎で壊れてしまった街が綺麗に修復された。


「わっ!すごっ…!」

「城の中はすべて、復元ができる魔術を仕込んである。魔力を込めれば元に戻る。」

「ルシェル様!申し訳ありません!俺が遅くなったから…!!」


魔物が全て息絶えているのを確認して、ミレフレルさんがこちらにやってきた。


「お前は今、俺の右腕として働いていることを忘れるな。お前のミスは、俺の信用にも関わる。」

「……………はい………。」


見たからにしょんぼりとしてしまったミレフレルさん。

そして、同じようにしょんぼりとしているミエナさん…。


「でも良かったね。これで魔物は全部倒したんだよね?ミエナさん、すっっっごかったから驚いちゃった!一瞬だったもんね!」

「いえ…私なんてまだまだ…。昔から失敗ばっかりで、全然役に立てなくて…。」

「いやいや、凄かったよ!ガンガン攻撃しに行って、かっこ良かった!」


…周りもガンガン壊れてたけど、へこんでるから、そこはスルーしておこう…。


「他の者に指示を出してくる。ミールは一緒に来い。ミエナはエリイとそこにいろ。」

「わかりました!…ミエナ、ありがとな。」

「うん…。」


ルシェルが私達の後ろにいた人達の方へ歩いていく。

黒や白のローブを着て、杖を持っている人ばかりだったので、きっと魔術師なんだと思う。

ミレフレルさんは、ミエナさんから少し目をそらしながらも、お礼を言ってルシェルに着いていく。

ミエナさんは、ミレフレルさんの言葉に頷くと、その後ろ姿を目で追いかけていた。


「ミールは……凄いな…。」

「どうしたの?ミエナさん。」

「あっ!いえ、何でもないんです!あのっ、エリイ様にお見苦しいところを見せてしまって、申し訳ありません!」

「私が見たいって来たんだから、気にしないで。良かったね、皆を助けられて。」

「はい…。居住地の人も皆避難していたみたいなので、ホッとしました。」

「ミエナさんのお家が、ここにあるんだっけ?」

「あ、はい、そうなんです。ここは、農園から一番遠い区画なので、私とミールの家は、もう少し農園に近いところなんですけ

ど…。」


そう言うと、ミエナさんは、ルシェルとミレフレルさんの方を指差す。


「ここをずっと先に行くと、農園があります。」

「ミレフレルさんとは、ご近所さんなの?」

「家が隣同士で、ミールとは幼なじみなんです。私の母とミールのご両親は、農園で一緒に働いていて、私達もよく手伝っていました。」

「そうだったんだ…。じゃあ、心配になっちゃうよね。」

「すいません…。エリイ様のお世話という、大切なお仕事があるのに、私情を挟んでしまって…。」

「心配で駆けつけたくなるのなんて、家族や知り合いがいれば当たり前だから、謝ることなんでないよ?」

「ありがとうございます、エリイ様。」


ミエナさんは、少し涙ぐみながら、深々と頭を下げた。

…よっぽど心配だったんだなぁ…。

そんな話をしていると、ルシェルがこちらに戻ってきた。


「話は終わったの?」

「あぁ。魔物の処理やその他は、ミールに任せた。エリイは俺と部屋に戻るから、ミエナはミールの補佐を頼む。」

「えっ??はい、わかりました!エリイ様、失礼します!」


先程とは違い、ミエナさんはペコッと頭を下げて、ミレフレルさんのところに小走りで駆けていく。


「ルシェル、戻って大丈夫なの?」

「いつものことだ。それに、ミエナがいれば、ミールもいつも以上に必死でやるだろうから問題ない。戻るぞ。」

「えっ?」


ルシェルが私の腕を掴むと、目の前は召喚された時の、あの岩山の上の部屋の中だった。


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