表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/56

王様と私6

「ちょっと待って………。家庭がある人も召喚されるの…?」

「候補者は魔力のみで選定される。年齢も状況もそれぞれのようだ。」


そんな………家庭があって、それでこの世界の人と結ばれちゃったの!?


「…キイが暮らしていた国のことは詳しくは知らんが、あまり恵まれた環境では無かったようだな。俺が会った頃には、夫はずいぶん昔に亡くなり、自分も終わりを静かに迎えたいと…言っていた……。」

「召喚されたのは、キイさんが若い頃なのかな?それとも、30代とかそれ以上…とか?」

「……さぁな。とにかく、キイはこの世界で不老不死で暮らすより、エリイの世界で『命を終えること』を選んだということだ。他に聞きたいことはあるか?俺の可愛い巫女姫は。」


ニヤッとわらって、ルシェルが私を見つめる。


「別にあなたのものじゃないんで、私。」

「キイのように、家庭があっても心を通わせることもある。エリイがサフィーリア家の者達に惹かれていたとしても、心変わりも充分あり得るさ。聞きたいことがなければ、俺は仕事に戻る。」

「じゃあ…ひとつ聞きたいんだけど…。」

「何だ?」

「………実は婚約者がいます……とか、無いよね?」


レイの前例がある。

…ルシェルを好きにならなかったとしても、婚約者がいて、問題が起きるのは嫌だし…。


「今は婚約者はいない。しかし、何もせずに、ここまで生きてきたわけではないがな。未来の夫の過去が気になるのか?」

「未来の夫とか、勝手に決めないでくれる?気にならないから、大丈夫だし。ミエナさんに、他の場所を見せてもらってきまーす。」


なんか誤魔化された感じもするけど、これ以上ルシェルの手の上で転がされるのも不服なので、今度はそんなに甘くなかったお茶を飲み干して立ち上がる。


「ミエナさん、お願いします!」

「はい!お任せください!」


気合いを入れて言った私の言葉に、ミエナさんも同じように力強く返してくれた。

ミエナさんが扉を開けてくれたので、私はそこを出る前に、ルシェルを振り返ると、彼はこちらを真剣な眼差して見つめていた。


「よく見てきてくれ、ストリアの現状を。」


ミエナさんが一礼して、扉を閉めた。

…ストリアの現状…?


「ルシェル様があんなに楽しそうにされている所、久しぶりに見ました。巫女姫様、ありがとうございます。」


ミエナさんが、嬉しそうに私に頭を下げる。


「楽しそうって、完全にからかわれてただけだと思うけど…。」

「…元々気さくな方なんです、ルシェル様…。でも、先代の巫女姫様が亡くなられて、ストリアが大変な状況になってからは、常に私達国民の為に、忙しくされていて…。」

「…妖精の力が集まらないって言ってたけど、そんなに妖精がいないの…?」

「……そうですね…。今はまだキャパシティが大きい者は、蓄えていた魔力でなんとかなってはいますが…。それもいつまで続くかは…わかりません。」

「……魔力が足りないと、この世界の人は普通の生活も大変なんだよね、確か…。」

「……ルシェル様がおっしゃっておられたように、ストリアを見て頂くのが一番良いかと思います。巫女姫様がいらっしゃったとなれば、皆絶対喜びます!色んな意味で!」


…色んな意味とは…?

ミエナさんの翳っていた表情が明るくなったので、最後の台詞のことは一応スルーしておいた。



「じゃあ、とりあえずここから近いところを見て回ってもいいかな?」

「わかりました!まず、謁見室をご覧になりますか?ルシェル様はいませんけど。」

「謁見室とか入ったことないから、見てみたい!」


そうして、ミエナさんとのストリア探検を始めた。

謁見室は、特に豪華な調度品等もなく、ただ二つの焦げ茶色の木に彫刻が施された、重厚で大きい椅子があった。

勿論、ルシェルも誰もいないので、ただガラーンとしていて、ローブを着ていても肌寒いぐらいだった。


その他に、夜会等をするらしいホールも見たけれど、謁見室とは違って豪華だったが誰もいなかった。

ホールを出たあと、下の階へ向かう為に階段に向かう。

階段の前には頑丈な扉があるようだが、そこは今は開かれていて、階段は床と左右の壁はあるものの、上は透明の壁に覆われて外が見えていた。

壁があるってありがたいと思った…安心して降りられたし、今回は階段も広めだし、ミエナさんと話す余裕もあった。


「謁見室もホールも、誰もいないんだね。警備の人とか、騎士の人?とかいるのかと思ってた…。さすがに、階段の扉のとこには、2人いたけど、それがルシェルとミエナさん以外で初めて会った人達だったし…。」

「ストリアは魔術師の国なので騎士はいませんが、衛兵はほとんど皆、日常生活の手助けや、魔物の警戒にまわっています。」

「魔物!?」

「ストリアがある岩山は、魔物が多く住む土地でもあるんです。皆の魔力が減っているので、魔術で管理する障壁から魔物が入ることも増えてきていて…。ここは城の主要な場所が集まっているので、障壁もルシェル様の力もあり強固なんですが、下の居住地については、広さがあるので、どうしても綻びが出てしまうんです…。なので、衛兵やルシェル様直属の方々も、主に居住地をまわられています。」

「大変な…状況なんですね…。」

「そうですね…。ストリアは建国から、全てを魔力に頼って生きてきた国ですから…。」


ミエナさんがそういい終えた時、階段の終わりが近づいていた。

目の前に、閉じられた扉が見えてきた。


「ここからは、主にお客様をお迎えする場所になります。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ