貴女は私の巫女姫様 2
シャワーの音が妙にはっきり耳に届く。そして、目の前で気絶している金髪碧眼の男。
老後の趣味のひとつとして、世界中の格闘技を極めんとする祖母に教わった、ちょっと人には言えない内緒の技で、目の前の男を昏倒させた。
…眠いし、低血圧でボーッとしてたから、即反応できなかった…。いつも、おばあちゃんに「隙はコントロールしてなんぼ。」と謎のアドバイスをもらっているのに、完全に隙だらけだった…反省!!
しかし、先ほど口にしたクッキーの糖分おかげが、コスプレ不審者男が何やらぶつぶつ話している間に、頭がハッキリしてきた。
そして、こちらに腕を伸ばしてきた瞬間、祖母に「男はこうやって倒すんだよ、やってみな。」と、鍛えに鍛えられたおかげか、叫びながら瞬時に秘密の技をかけることができた。
おばあちゃん!!本当にありがとぉぉぉぉ!
さて………この男、どうしよう。普通なら即警察へ連絡するところなんだけど…。
おそらく、警察に連絡すれば、家に警察が来る。そして、まだ学生の私だけでは…と、父に連絡することになるだろう。
父は今頃、最寄り駅から空港へ向かう高速バスの中だろう。あんなに楽しそうに出かけて行った父に連絡をすれば、例え飛行機に乗ってしまった後だとしても、なんとかしてすぐに家に戻ろうとするはず…。
できれば、パパには気持ちよく妖精探しにいってもらいたいな…。でも、警察に連絡すれば、絶対にパパに連絡することになるだろうし…。
家の中、しかもお風呂場に、怪しい男が入り込んだなんてことになれば、もう2度と長期で海外へ調査に行くなんて言い出すことはないかもしれない。
妖精にかける情熱と同じ、いやそれ以上に、私は父に愛されている自負はある。となると、やっぱり警察沙汰にするのは、少し気が引ける…。でも、身なりは驚くほど立派な衣装を身につけてはいるが、不審者だし…。
うーん!悩む!
あ、ちなみに、眠くてたまらなかった目はパッチリ覚めて、今はスッキリしています。
いやでも、警察に電話しないとダメだよな…やっぱり…と結論を出そうとしたときに、目の前の男が小さく「うっっ……」と苦しげな声を出す。
目の前の男は、倒れながらも、足の付け根の間を両手でしっかりおさえる様にしている。恐らく小一時間は目を覚まさないはず…。時々「こだねが…いのちが…」とか聞こえる気がするけれど、そんなことは知らん。
そんなことを思っていると、突然倒れている男の身体が、先ほどのお風呂の鏡のように、ほんのりと青白く光りはじめた。
「えっ?何…?綺麗な光…って、いやいや!気持ち悪いけど、このまま放置しとくわけにもいかないし、気絶してる間に何かで縛り上げとかなきゃ…」
棚から薄手のフェイスタオルを取り、足の付け根あたりを守るようにしている男の両手を縛ろうと、男の手に触れた瞬間…
気絶した男と私を、青白い光が包み込んだ。




