表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いきなり異世界と繋がっても、すぐには結婚できません!  作者: 七瀬夜香
候補者は誰のもの?
24/56

1

「え…………朝………?」


 ついさっき寝つけたところなのに、暗かった部屋が、今は窓からの朝日がさし込み、私とベッドも明るく照らし出している。



 ………まぶしい………眠い………おやすみなさい………

 ………まだ大学まで、時間あるし………

 ………アラームかけてたかな………

 ………なんかいい匂いがする………もうちょっとだけ……



「って、違う!!!!!」

「エリィ様、おはようございます。」


 家じゃなかった!と、ガバッと起き上がったら、目の前には優しく微笑むフィリアさん。


「ゆっくり………は、休まれてない様ですね?」

「………ほとんど………眠れなかったです………。」


 フィリアさんから気の毒そうに言われて、両手で顔を覆う。

 朝が弱くて、寝起きがボーッとしてるのはいつものことだけど、今日は、ボーッとどころではない。目が開かない………。


「あらあら…。まずは目を覚ましましょうね、エリィ様。」


 その後、まずは冷たいハーブティーですわ、とか、さてお顔を温かいタオルで…とか、さぁ湯浴みをいたしましょう連れてかれたりと、あれやこれやとされるがまま、準備をされる。


「今日も素敵ですよ、エリィ様♪」


 気がつけば、鏡台の前で、おろされた長い髪に白い髪飾りが飾られ、薄い水色のドレスを着せられていた。胸元大きなレースのお花と、白い小花の刺繍がスカートにほどこされていた。


 ………いつの間に…………。


「朝食はこちらにお持ちして、お食事が済みましたら、広間に参りましょう。」

 すぐにお持ちしますねと言って、フィリアさんは一礼して寝室から出ていった。


「あ…そうだ、ペンダント…。」

 まだ眠いけれど、一応起きた頭の中に思い浮かんだのは、レオさんから貰ったペンダントだった。

 ベッドのサイドテーブルに置いた小箱から、そっとペンダントを手に取って首からかけると、フワッと香りが広がる。

 …レオさんの香り…そう思うだけで、あっという間に顔に熱がのぼる。

 カードを読むのはやめとこう。朝から顔が爆発したら、倒れるかもしれない…。



 昨日の夜、カードの言葉に、充分悶絶し、プレゼントにずっとドキドキしたままで、このままじゃダメだ!と、仕方なくペンダントを外して寝ようと思った。


 でも、目を閉じるたびに、レオさんに抱き締められた感触が蘇って、あーっ!てなりながら飛び起きて、これはもう無理だな…と諦めて、本を読むことにした。


 フィリアさんが、レイと話していた時にテーブルに置いてあった本を、ベッドの枕元に重ねて置いてくれていたので、まだ読み終えていなかった『双子の世界』に目を通すと、やはり内容は、『時間の流れの比較』と『この世界の成り立ち』がメインだった。


 時間の流れについては、ディナーの前に読んだ内容の、色々な例が書かれていて、やはり元の世界とこちらの世界では、時間経過に差があるということは、よーくわかった。


 巫女姫になれば、こちらの世界では年を取らないなら、なぜ巫女姫が亡くなって、代替りが起きるのか…とか疑問はあったけれど…。


 世界の成り立ちについては、巫女姫の歴史で少し書かれていたけれど、それについて詳しく書かれていた。


 女神ライザ様が、ふたつの世界をお作りになられた。この世界と、もうひとつ次元の違う世界。ふたつの世界は『双子の世界』と呼ばれ、お互いの世界に影響を与えあう。

 片方の世界が荒れると、それがどのような形かはわからないが、もう片方の世界に影響を与える。その影響を安定させ『双子の世界』を管理するのが、巫女姫という存在らしい…。

 あとは、こちらの世界には、妖精の存在があるが、『機械』や『科学』等が特に発展していないこと(全く無いわけではないらしい…)や、あちらの私の世界には、妖精や魔力の概念がなく、人の作り出した物の進化がすごいこと等が書かれていた。


 本を読むほどに、色々な疑問がわき出ては来るけれど…。


「色々考えても仕方ないよね…。」


 私は今日、元の世界に帰る予定で。

 この先巫女姫になってもいいと思ってるのか、二度と関わり合いたくないと思ってるのか、それだって、まだなんとなく自分のことだっていう実感がないまま、ここにいる。


「レイも、私と結婚をする気は無いって言ってたしね…。元の世界に戻れば、それでおしまい……だよね。」


 ペンダントトップを、優しく握りしめる。

 そう、帰ればここに来ることはないから。

 …レオさんに…………会うこともないから………。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ