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ユニオンビースト ~霊獣と共に生きる者達~  作者: 杏子
第三章 エボリューションフラッシュ
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25話 白い珠

朝日がよく見えそうな場所をみつけ、行こうとケビンが誘う。 その時······

 25話 白い珠




 ケビンとザギは湧き水が出る岩場の横で、野宿の為の焚き火の前に座っていた。


 湧き水のチョロチョロ流れる音が心地いい。

 倒木(とうぼく)にもたれて水の(かな)でる優しい音に耳を傾ける。




「ザギ、僕と初めて会った時の事を覚えているか?」

『もちろんだ。 お前はこんなに小さかった』


 小さなザギが二本の指で大きさを示す。


「それじゃあ虫だろ。 あぁ、あの時のザギにしたら本当にそれ位か」

『そうだ。 少しでも動いたら壊してしまいそうで、怖かった』

「僕もあの時の大きな姿のザギも、大トカゲの姿のザギに乗せてもらった事もよく覚えている」

『ハハハハハ、そうか。 あんなに小さかったのに覚えていたか』


「あれからずっと一緒だな。 何をする時も、どこへ行く時も、いつも傍にいてくれた」

『どうした? 急に?』


 急に神妙に話し出すケビンの顔を覗き込む。



 ケビンが小枝で焚き火を突つくと、赤い火の粉が舞い上がる。



「·········あの時、沢山の夢を見たのを思い出した」

『あの時? あぁ、花粉で眠っていた時の事か?』

「うん。 夢というより、15年間の出来事を見ていたと言う方が正しいな」

『へぇ~ そうだったのか』

「いつもザギと一緒だった······いつも楽しかった······でもあの日に言われた一言が、胸に刺さっていた」

『あの日の一言?』



「······強くなれ······」


『·········』


 ザギは目線を落とす。



「でも、あの言葉のお陰で目覚める事が出来たんだ」 

『·········』


 ザギは再び愛する契約者の顔を見上げた。



「夢の中でもザギのあの一言がずっと聞こえていた。 強くならねば······もっと強くならねば······心の奥でずっと感じていた」

『······そうか』



「ザギには感謝している。 これからも僕に足らない所があれば(さと)してくれ。 ちゃんと強くなるから」

『分かった······でも大丈夫だ。 お前が強い事を私は知っている。 まだ少し順位が分からないだけだ』


 ケビンの顔に明るさが戻った。


「うん、ありがとう」



『もう寝ろ』


 ザギは山羊に転身して、ケビンの横に横たわる。


「おやすみ」


 ケビンはザギにもたれて目を閉じた。 




   ◇◇◇◇◇◇◇◇




 翌朝、朝日が昇る前に目が覚めた。


「ザギ! 日の出を見に行こう!」


 ケビンは横の小高い山を指差した。

 その山には高い木が生えておらず、森に緑の帽子がちょこんと被さっているように禿山(はげやま)の頂上が木々の上から顔を出しているのが見える。  


「あそこなら良く拝めそうだ」

『拝む? 太陽を拝んで何になる』

「いいから!」




 ザギに乗り、禿げ山の頂上に着いた。



 まだ太陽は顔を出していなが、既に山脈の向こう側が明るくなりかけていた。


 山脈のギザギザのシルエットが黒く浮かび上がり、向こう側の空に浮かぶ雲が暗い色からオレンジ色に変わり、そして金色に輝く。


 山脈の上から朝日の最初の光がピカッとケビンを照らす。


 朝靄(あさもや)から所々に顔を出す山が、宙に浮くように影を落とし、幻想的な風景が眼下に広がった。

 平べったい太陽が少しずつ膨らみ、頭をもたげるように姿を現して来た。




「わぁ~~! 綺麗だ! そう思わないか?」


 ザギから返事が無いので振り返ると、なぜかケビンの足元を凝視している。


「ザギ?」

『お前の足元だ!』

「何が?」

『丁度お前が立っている足元にある!』

「だから何が?」


『白い珠だ! 白く光っている!』

「えっ?!!」


 ケビンは慌てて飛び退いた。


『そこを掘ってみろ』


 ケビンはナイフを取り出して足元を掘った。


『もう少し左だ』


 慎重に掘っていくと、乳白色の小さな珠が出てきた。


「あった!! 白い珠だ!」


 ケビンは珠の汚れを拭き取り、ザギの前に差し出した。


『あれ?』

「どうしたんだ?」

『珠の輝きが消えたぞ? 本当にそれで合っているのか?』


 今まで白く輝いていたのが、突然光が消え、ただの乳白色の珠になっている。



 そこへポン!と、白いドラグルの精霊が現れた。



『残念! こんなに早く見つかるなんて、思ってもいなかったわ!! ケビン、ちょっとそれを貸して』


 ケビンは動揺しながらも、言われるままに珠を精霊に渡した。 すると精霊は珠に向かって何やら呪文を呟き始めた。

 

『おっ! また光りだしたぞ』


 白い聖霊はフフンと鼻を鳴らす。


『この珠は太陽が山に掛かっている数分の間だけ輝くように術をかけていたのよ。 この広い土地でこれを見つける事が出来るのは、1日の中のその数分間だけって事よ』

『それでいくら探しても見つからなかったのか』

『でも、簡単に見つかっちゃったわ。 あなたの強運が為せる業ね!』


 白い精霊はケビンを見上げた。


『私は白竜の[シラユキ]よ。 よろしく! でも[アンガ]はそう簡単にはいかないわよ。 覚悟して挑むのね』


 シラユキが来た時と同様ポン!と前触れもなく消えた。




 ケビンとザギは顔を見合せ、ニンマリと笑った。


「『やった!! 4つ目ゲットだぜ!」』



 ケビンはフフフとザギを見つめた。  


『な······何だ?』

「朝日もなかなか良いものだろう? ザギは(おもむき)というものが分かってない。 もっと綺麗な物を見て感動したり、綺麗な物を見たいと思ったりしろよ」

『ふん! 感動しないものは感動しないのだから、仕方がないだろ? そういうのはお前に任せる。 だが必ず付き合うから、お前が感動する物を私にも見せてくれ』


 ケビンはクスッと笑った。 こういう物は強要するものではないが、ザギなりに努力しようとしているのが分かったからだ。



「うん。 ()()というものを必ずザギにも分かってもらうよ」


『期待してるぞ ハハハハハ』






ケビンが2歳の時から、ずっとザギと一緒です。

王族で学校にも行けないケビンにとってザギは、唯一の友です。

( ^∀^)

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