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ユニオンビースト ~霊獣と共に生きる者達~  作者: 杏子
第三章 エボリューションフラッシュ
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24話 緑の珠

緑の山にどうしても近付けない。

その時ケビンが打開策を見つけるが······

 24話 緑の珠




 翌日から本格的に攻略法探し。


 しかし、緑の山に近付けない。

 

 つい風下に行ってしまい、花粉の匂いに引き込まれそうになるのを何度かザギに引っ張って戻してもらった。


 今は風上にデンと胡座をかいて、思案中だ。




「あの中にあるんだよな······」 




 緑の山の中心辺りに2mは有りそうな大きな真っ赤な花が1つ、地面から直接咲いているのが見える。


 花びら1枚が70~80cmはあり、細長いそれが何枚も何重にもひしめき合うように分厚い大きな花を形成している。 真ん中には雄しべなのか雌しべなのか、真っ青な突起がびっしりと突き出ていた。 その中に緑の珠が無造作に置いてあるらしい。



『そうだ。 あの花の真ん中にある』

「目の前にあるのになぁ」


 ケビンは真っ赤な花を睨み付けた。


「ん?」


 よく見ると、花の下から四方に何かが出ている。


「根? (つる)?」


 場所を移動してよく覗き込んで見ると、それぞれの先は食獣植物に繋がっていた。


「ザギ、あの花が親玉みたいだ」

『そうなのか?』


 ザギはコウモリの姿に転身し、上空から観察する。


《本当だ。 真ん中の花から(つる)が、出ている》

「じゃあ、あの(つる)を切ってしまえば食獣植物は死ぬかな?」

『多分。 しかし、あそこまで行く事が出来ればの話だな』

「······だよね」



 ケビンは再び胡座をかいて、思案する。



 その間にも時々小鳥が誘い込まれ、大きな袋に入れられている。



 一度焼き払おうとしたが、一向に火がつかず諦めた。




 何か方法がないか考えているうちに、日が傾いてきた。


 その時、音もなくコウモリが数羽飛んできた。

 (つる)の間を飛び回る。 小虫を捕まえているのだろう。 



「あの中は、虫が多そうだ······ええっ?!! ザギ!! 見て!!」

『どうした?』

「ほら、コウモリは平気で中を飛んでいる」

『小さ過ぎて餌にならないのではないのか?』

「いや、同じ位の小鳥も捕まっていたぞ」

『そういえばそうだな』


 ザギはコウモリに転身して近付いた。 (つる)が動く気配がない。 それどころか少し避けているようにも見える。

 ザギは超音波を強く出してみた。 すると、(つる)が明らかに避けた。


「『いける!」』


 ケビンは立ち上がった。




 ザギが最大限に超音波を出すと、ザザザッと蔓が逃げて道が出来た。 ケビンは服で口を押さえ息を止めた。


『行くぞ!』

「おう!」


 ザザザッ、ザザザッ。


 (つる)()けて道が出来、少しずつ前に進む。 既に後ろは再び元に戻った(つる)に囲まれている。 

 ケビンに(つる)を伸ばそうとするが、ザギの超音波を受けて後ずさる。 ほんの10mほどの距離なのだが、永遠に続くような気がした。



 そしてやっとのことで目の前が開け、花の前に出た。 



 ケビンは花に駆け寄り、花の回りから伸びている(つる)の付け根をザッザッザッと切り落とす。 最後に花の中心にある緑の珠の直ぐ横を目掛けてズザッと剣を突き刺した。 そしてそのままザン!と花を切り裂くと、ブワッと花粉が飛び散る。 


 キュキィーーーーーーン!!


 花の鳴き声が聞こえた。



 ◇◇◇◇



「ザギ、ザギ、たのちい!」

『ハハハハハ、楽しいか! そうか、楽しいか! ハハハハハ』


 大トカゲに転身したザギの背中に乗っている。 体が左右にクネクネ動きながら移動するのが、何とも楽しい。


 ◇


「ザギ、いつもケビンを背中に乗せてると、ケビンが歩けなくなるぞ」

『心配するな。 鬼ごっこやお前の好きな隠れんぼをして走り回っているからな』


 ◇


 肩にザギを乗せて、街に出ている。


「ザギ、もうすぐお父様の誕生日だ。 今年は何にしよう? そうだ、ザギにも何か買ってあげるよ。 何か欲しい物はない?」

『お前がいれは十分だ』

「嫌だよ、ザギったら、照れるじゃないか!」


 クレアの真似で、照れを隠す。 すると後ろから声がした。


『ケビン!』

「ナルナラ! ルーアン! みんなも! あっ、お父様、お母様! どうしたのですか?」

「あなたの誕生日プレゼントを買いに来たのよ。 欲しい物はある?」


「カイル様、エリアス様こんにちは。 皆さんお揃いで、お買い物ですか?」


 通りすがりの人が気軽に声をかける。


「もうすぐケビンの6歳の誕生日ですから」


 ◇


「もうすぐお前も8歳になる。 国王になるための心と体の準備を始める時期だ。

 これをお前に授ける」


 父である国王カイルは、護りの剣と癒しの盾をケビンの前に差し出した。


 「これはアルタニアの秘宝で、今朝光を失った。 お前が18歳になり、この秘宝に触れた時、再び光を取り戻すだろう」


 ◇


「アッシュさん、この馬は?」

「この馬はマルバス。 ケビン様の馬です。 これから毎日マルバスの世話をしてください。 朝早いですよ」


 ◇


「ザギ、この場所はやっぱり気持ちいいね」


 山羊の姿のザギに乗って城の裏山に来た。


『カイルはいつもハスランから落ちていたとアルナスが言っていたぞ。 お前も景色に見とれて、私から落ちるなよ』

「お父様にもそんな所があって、嬉しいよ」


 


ーー強くなれーー


 


「勇者様は妻を救う為に城に侵入し、出合う敵をバッタバッタと倒したが、外に出ると百人の敵に囲まれた。 勇者様危うし! しかしそこに現れたのは[ザギ]! 敵を薙ぎ倒し勇者様を助け出す。 やっぱりお父様とザギは凄いや!」


 ◇


「ケビン、団長から強いと聞いていたが、まさかこんなに強いとは思ってもみなかったぞ」


 ウィンガが呆れた顔をしている。


 ◇


「な···なんだ?······お前、どれだけ強いんだ」

「先生! 凄~い!!」


 モーガが呆れ、ドングはケビンを抱き締めた。


 ◇


「大切にするよ」

 ケビンはエリエンヌの耳元で囁いた。


 ◇


『ケビン! 会いたかったぞ!』

「僕も!」


 小さなドラグルの姿のザギが胸に飛び込んで来た。


 


ーー強くなれーー


 


「ザギ、いいぞ!」


 ザギに飛び乗り、火を噴く火口から飛び出した。


 ズドドドドッッ!!


 先ほど火口に落とした大岩が飛んできて直ぐ横に落ちた。


 ◇


「綺麗だよね。 水の中って」

『そうか?』


 感動のない奴だ。


 ◇


『動物達にまで渡す心は持っていない』


 


ーー強くなれーー


 


『非情さ、無情さから、目を逸らさないでください』


 ◇


『ケビン、戻って来い!』


 どこかから声がする。


「戻る?」


 


ーー強くなれーー


 



『ケビン! 早く戻って来い!!』


 なんだかとても懐かしい声だ。


「·········どこに戻るの?」




ーー強くなれーー




『私の元へ、戻って来い!』


 心地よい声の方へ自然と足が向く。呼んでいるのは誰だろう。


「君は誰?」


 何かを思い出しそうだ。



 なに?



 何かを思い出さなくてはならない気がしてきた。



 なにを?



「············ザギ?······ザギ!!」



  ◇◇◇◇



 ケビンはパッと目を開けた。


『ケビン!!』


 小さなザギがケビンにドン!と飛び付いた。


『戻ってきたか! ケビン! 良かった!!』


 ケビンはまだ事情が呑み込めない。


『ケビン殿。 良かった』

「ハリス?」

『戻れたな』


 そこには緑色の小さなドラグルがいた。


『2日で戻れるとは、大した奴だ』

 

 ザギが緑色のドラグルを睨み付ける。


「2日? 長い夢を見ていた気がする······僕はどうしたんだ?」

『あの花の花粉を浴びて夢を見せられていたらしい』

『心の弱い奴なら、一生眠り続ける事もあるのだが、感心するぞ』


 再びザギは緑色のドラグルを睨み付けた。


『もう大丈夫だな。 じゃあな』


 緑色のドラグルはポンと消えた。




「あれは緑の珠の精霊?」

『ああ。あのくそ野郎の名は、[リョクジン]だとよ』


 ザギは怒りが収まらない。


『ケビンが一生目覚めなかったらどうするつもりだったんだ!!』



 心配してくれるザギにとても感謝した。



「目覚めたし。 さぁ!」


 ケビンは立ち上がった。


『どこへ行く?』

「緑の珠を取りに」


 既に枯れ草の山となっている花がある場所に向かった。

 眠らされいたケビンを随分遠くまで運び出していた。



『本当にもう大丈夫なんだろうな。 なぁケビン、近くでは息を止めろよ』


 ザギは何だかオロオロしていて少し可笑しいが、顔には出せない。 そこはグッと我慢して、神妙に答える。


「分かった」




 枯れ草の中に足を踏み込んだ。

 既にいい匂いはせず、死体の腐敗した臭いが充満している。 


 狼の死体らしき足が袋から出ていた。 無惨にも半分溶けて骨がむき出しになっている。

 ケビンは少しの間目を閉じて黙祷してから、直ぐに花に向かった。



 緑の珠は枯れた大きな花の中にちょこんと置き去りにされ、綺麗に輝いている。



「よし! 3つ目、ゲットだぜ!」



 心配そうなザギとハリスの元に戻った。


『大丈夫か? 何ともないか?』

「大丈夫じゃない。 お腹空いた」


 ケビンはお腹を押さえ、苦しいフリをしてみせた。。


『直ぐ先に小川があります。 先に行って魚を取っておきます!』


 嬉しそうにハリスは飛んで行く。



『私達も行こう』

「うん!」



 ケビンはザギに飛び乗った。






ケビンは戻って来れて良かったですね。

恐るべし、赤い花!

( ;`Д´)

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