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ユニオンビースト ~霊獣と共に生きる者達~  作者: 杏子
第三章 エボリューションフラッシュ
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20話 赤い珠

ケビンとザギは赤い珠を取りに、火山へと向かった。 噴火を続ける火山の中へ入るには······

 20話 赤い珠




 2ヶ月以上が過ぎた頃、やっとザギが戻って来た。


 飛んで来るなりケビンに抱きついた。


『会いたかったぞ!』

「僕も!」

『楽しく過ごしていたようだな』

「うん。 みんなに良くしてもらった。 それでどうだった? 見つけたのか?」


『見つけたのは見つけたのだが······』

「凄いじゃないか! 5つとも?」

『いや、1つがどうしても見つからんから、とりあえず戻って来た』


「じゃあ、先ずは4つを取りに行こう」

『それが·········』

「?······どうしたんだ?」

『どれも嫌がらせとしか思えん場所にあるんだ』

「試練だからね·········ん?」


 周りを見ると、みんながひれ伏している。


 そこへ、ルナとザザリトが走ってきた。


『ザギさん! お帰り!』

『おう! ルナ、元気だったか?······ん?』


 ザザリトもひれ伏した。


「ルナ、これ、やめてもらえないかな」


 ケビンはひれ伏している人達を見回した。 せっかくみんなと仲良くなったのに、逆戻りだ。



「ザギが望んでいないと言えば、止めてくれるだろう。 なっ、ザギ」

『もちろんだ。 こんな事されても嬉しくも何ともない』



 その時、ギギンガとザザンガが走ってきて、彼らもお約束通り祭壇の下でひれ伏した。





 ルナがザザリトを説得すると、ザザリトがギギンガ達に話した。 ギギンガは少し戸惑っていたが、納得したのか、みんなに向かって大きな声で話し始める。


「▽★☆&§▼◇#&!!」


 するとみんなが立ち上がり、ザギに一礼した後、仕事に戻っていった。


「良かった。 とにかく中で話そう」


 ケビンとザギは、イザクも伴い家に入っていった。

 


   ◇◇◇◇◇◇◇◇



 翌朝早々に出発する事になった。


 村人全員が見送りに出てくれた。

 今度はひれ伏してない。


『ザギさん、ケビン、気をつけてね』

「ありがとう」

「▽★§☆☆*◇&」

『待っているから、いつでも戻って来てって』

「ナグゥナットゥ!!」


 ケビンは唯一覚えた「ありがとう」という言葉を、みんなに聞こえるように大きな声で叫んだ。


 すると村人全員がひれ伏した。



 おっと······





 ケビンは山羊の姿のザギに(また)がった。


 

 実は、暇を持て余していたので、虎の毛皮を(ひも)にして手綱を作り、簡単な鞍と(あぶみ)らしき物まで作ってみた。


 これがなかなか良い出来で安定する。 まぁ、本物には及ばないが、無いより全然いい。 虎の毛皮は殆ど使いきったが、別に要らないだろう。


 数日分の携帯食と虎の胃で作った水筒をザザリトに貰ったカバンに入れ、ひれ伏す村人を後に、出発した。



   ◇◇◇◇◇◇◇



 2日程行くと、小さめの火山の入り口に着いた。

 大きな岩の隙間から、赤い火の粉がチロチロと噴き出しているのが見えた。


 ザギはやけに心配そうにオロオロしている。


『やめるか? 後にするか? 危険だぞ······諦めてもいいぞ』

「とにかく見てみる」




 ケビンは火の粉避けに癒しの盾を腕に通して頭にかざし、火口に近付いた。


 このまま体が燃えてしまうのではないかと思う程の強烈な熱気に、心が()えそうだ。


「ぁちっ!」


 小さな火の粉が手に当たった。

 大岩の隙間から火口を覗き込むと、顔が焼けそうに熱い。


『あそこに洞窟があるのが見えるか?』

「うん。 珠はあの中?」

『そうだ』



 ケビンは焼けそうな熱気に、火口の外へ顔を戻した。


「火口の溶岩が見えている部分は案外小さいな。 あれを塞いでしまう事は出来ないのかな?」

『火口を塞ぐ?』


 ケビンは上を見上げた。


「この岩を落として火口に蓋をしてしまえば、あの洞窟まで行けそうな気がする。


 ザギは頷く。



 ハリスも手伝い、みんなで押したがびくともしない。

 ザギがワニの姿に転身した。

 

 大きな体を岩の下にググッと潜り込ますと、ゴゴッと音を立て、岩が少し動いた。


「いける! ザギ、頑張れ」


 少しずつ潜り込んでは動かす。

 また、潜り込んでは動かす。


 バラバラと小石が火口へこぼれていく。



「あと少し! 行くぞ! せーの!!」


 ケビンとハリスも一緒に押すと、ゴゴッ! ゴゴゴゴッ! 岩が火口の方に傾く。


「もう一度! せーの!!」


 バラバラ! と周りの石が落ちていくと、その後を追うように大きな岩が下に転がっていき、ズドドン! と、良い具合に火口を塞いだ。

 吹き出していた炎の先だけ残して赤い溶岩に(ふた)がされた。




『今だ! 乗れ!! いつまでももたんぞ!!』


 ケビンはザギに飛び乗り、ザギが火口をトトン、トトンと、降りていく。

 

 火口を塞いでも熱気は凄い。 ケビンの身体から汗が吹き出す。

 火の粉が飛んできているのだろう、体のあちこちがチクチク痛む。


 静かになっていた火口から、ズズッ!ゴゴッ!と、不気味な音がし始めた。



 トトンとザギは洞窟の入り口に降りた。 

 ケビンは飛び降り、洞窟の中を中腰で駆け抜ける。


《突き当たりの右側に穴がある。 その中だ!》


 ケビンは突き当たりの横の小さな穴に這って入り、赤い珠を鷲掴みにすると、直ぐに踵を返してザギの元に走りながら、ズボンのポケットに珠を押し込む。


 洞窟から出るなりザギに飛び乗り、しがみついた。


「いいぞ!」

『振り落とされるなよ!』


 ザギは、ダダン、ダダンと大急ぎで火口を登ってゆく。


 火口に落とした大岩の隙間から炎が噴き出してきた。


 ブシュ~ゴゴッ、ゴゴッ!

 ゴゴッゴゴゴゴッ!

 ズッドォォォォォ!!


 炎が凄い勢いで噴き出しズドドドドォ!!と噴火した。


 


 間一髪ザギは火口から飛び出し、そのまま全速力で走り続ける。


 上からバラバラと真っ赤に焼けた石が降り注いでくる。

 


 するとズドドドドッッ!! と、直ぐ近くに何かが落ちてきた。


 先ほど火口に落とした大岩が飛んできて直ぐ横に落ちたのだ。 それでもザギは無心で走り続けた。

 

 

 徐々にバラバラと落ちてくる石が減ってきた。


 そして安全な所まで来ると、やっとスピードを落とした。




 ケビンとザギは後ろを振り返る。

 

 そして、真っ赤な炎が噴き上がっている火山を見つめた。



 ◇



『ケビン、大丈夫か?』


 ケビンの服は所々焦げている。


「うん、大丈夫。 癒しの盾のお陰で痛い所はないよ」


 さっき腕に火の粉が当たった所も治っている。 逃げる途中にも何個か背中に石が当たったが、既に痛みはなかった。

 そしてケビンのポケットから赤い光が漏れ出ているのをザギは確認する。


『珠も有るようだな』

「とりあえず、一つ目ゲットだ!」 




『良くやったな。 おめでとう。 合格だ』

「『わっ!」』


 二人で喜んでいると、目の前に真っ赤なドラグルの精がポン!と現れた。



『ケビン、お前は人望もあり(ひらめ)きもある。 何よりザギとの連携がとてもいい』


 真っ赤なドラグルはうんうんと、一人で頷いている。


「僕達の名前をどうして?」

『コハクから聞いた。 俺の名は火竜のエンガ。 あの大岩によく気が付いたな。 バカな奴ならあのまま突っ込むか諦めるかのどっちかだと思っていたが、思ったより早く気付いて驚いたぞ』

「もしかして、大岩はわざとあそこに?」


『別に俺が置いた訳ではないが、あれ以外に人間があそこに辿り着ける方法はないだろ。 (きわ)どかったが、よく切り抜けた』



 何気に上から目線なのが、ザギには気にくわない。



「では、この先の試練にも、必ず解決方があるのですね」

『ちょっと鋭いな。 しかし答えは[知らない]だ。 他の珠は他の奴が仕掛けているからな』

『チッ!』


 エンガかザギを睨み付けた。


 ザギが目を反らす。



『ただ、1つの珠だけだが、ちゃんと仕掛けてあるかどうかは分からんのがある』

「どういう事ですか?」

『200年程前から精霊の一人が行方不明なんだ』

「行方不明? ドラグルの精霊が?」

『もしかして、どうしても一つだけ珠が見付からないのだが、それの事か?』

『さぁ? だが、もう仕掛けたような事を言っていたから、珠は大丈夫かもしれないが······まあ、頑張れよ』



 エンガは現れた時と同じようにポンと消えた。



『おい! 何色の珠だ? それくらい言って行けよ! おい!!』


 ザギは宙に向かって叫んだが、返答は無かった。


『チッ!』

「仕方ない、次に行こう」




 ケビンとザギは次の場所に向かって歩き出した。







赤い珠ゲットだぜ!

まだまだ先は長い。

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