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ユニオンビースト ~霊獣と共に生きる者達~  作者: 杏子
第三章 エボリューションフラッシュ
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17話 神

ケビンは祭壇に連れて行かれた。

手足を縛られ、身動きが取れない。

そこに現れた「神」とは······

 17話 神




 祭壇は2m程の高さに土が盛らていて、丸太を組み込んだ階段まで作ってある。

 広さは30m四方はあり、階段を上がって直ぐの所に、家で使われている大きな葉が2枚、2mの間隔で立てられている杭に(くく)り付けられている。


 そして、四隅に篝火(かがりび)が焚かれていた。



 ケビンは大きな葉の間に手足を縛られて立たされた。




 ルナが祭壇の隅から顔を出した。


『どうする? ケビン。 縄を噛み千切ろうか?』

「大丈夫。 もう少し様子を見よう」


 祭壇の下を見ると、ここの住民達全員がケビンを見上げている。

 その先頭に、半月刀の男が腕を組んで立っていた。




 ケビンはこんな時にと、少し躊躇(とまど)ったが、思い切って聞いてみた。


「ルナ。 もしかしてザザリトは契約相手?」

『そうみたい』

「そうか。 遠慮しないで、ここに残っていいからな」

『ごめんね』

「ザギから離れなかったのは、ザザリトに会う為だったのかもしれないな」


 ルナは、少し恥ずかしそうに(うなず)いた。



   ◇◇◇◇◇◇◇◇



 太陽が山脈の向こうに沈み始めた。


 半月刀の男が隣の老人から角笛を受け取ると、周りの住民達が何やら呪文のようなものを唱え始めた。

 低い声でもぞもぞ言っているが、人数が多いので変な地鳴りのようにも聞こえる。



 太陽の上限の明かりが山脈の陰にプツンと消えた途端、半月刀の男が三度角笛を吹いた。             

 

 フォ~~~ッ! 

 フォ~~~ッ! 

 フォ~~~ッ!


 地鳴りのような呪文の声が大きくなる。




《何かあると、直ぐに飛び出すからな》

『直ぐに縄を切れる様に、準備しているからね』

『剣と盾は私が持ち出します』


 ユニオン達の準備は万端だ。



 ケビンはゴクリと生唾を飲み込み、成り行きを見守った。



 

 遠くから、何かがこちらに向かってくる。

 目を凝らして見ると、ドラグルだ。


《ザギ! ドラグルだ》

《その様だ。 神とはドラグルの事か? ちょっと話してくる》



 ザギは小さなドラグルの姿に転身し、縄からスルリと抜けて飛び上がった。 すると、呪文を唱えていた住民達が驚き、ザギを指差し、わぁ!わぁ!と騒ぎ出した。


 ザギは気にせず向かってくるドラグルの方へ飛んで行った。


 



 気付くと周りは呪文も止めてシンと静まり返っている。

 振り返ると、全員が地面にひれ伏している。


「?······あぁ、神とはドラグルの事なんだな。 小さくても神なのか?」


 ザギを見てひれ伏したのだと思っていた。

 



 半月刀の男が立ち上がり、祭壇を上がって来る。


「ザギがいないのに、参ったな」


 ハリスとルナがケビンの横に来た。


 しかし、男からは殺気はない。 二頭に動かない様に指示した。

 男は剣を抜き、ケビンの縄を切り、そのままケビンに向かってひれ伏した。



 僕に?



「いだいなるちいさきかみと、こころのかみ☆*◇★▽」


 初めの方は分かる言葉だった?



「偉大なる小さき神と、心の神?」

『そう聞こえたわよね。 その後、謝っているわ』


 住民が剣と盾、ナイフと虎の皮を慌てて持ってきて、ケビンに捧げ持っている。


「えっと~、貰っていいんだよね」


 ケビンが受け取ると、その捧げ持っていた男達もまた、ひれ伏した。



 なぜか気まずい。



 ザギがドラグルと共に戻ってきた。


 基本ドラグルたちの形はほぼ同じだが色が違う。 グルタニアのドラグル達も全員色が違っていた。 ザギも緑がかっている。

 そのドラグルは、ゴトーによく似た赤みがかった角のない5つ目だった。



『よく分からんが、私達を待っていたらしいぞ······ん?』


 ケビンの縄が解かれ準備も万端に整っているし、住民達がひれ伏している。



「よく分からないけど、僕達にひれ伏しているみたい」

『まぁ、いいか。 それよりこいつが送ってくれるそうだ』

「えっ! 山脈の外に?!」

『違う。 どこかだ』

「どこかって?」

『知らん。 行けば分かるそうだ。 この体に関係あるらしいぞ』

「そうか! 元に戻れるのかもしれないな! 行こう!」



 ケビンはドラグルに飛び乗った。 ザギも乗り、ドラグルは飛び上がった。



 ルナとひれ伏す住民達を残して。 



   ◇◇◇◇◇◇◇



 この丸い山脈の中心に向かって飛んでいる。 緑深い山々がうねり、所々で火山の煙が立ち上ぼり、真っ青な空を映し返す湖が点々と緑に穴を開けている。


 

 下降を始めたので下を見ると、山に囲まれる湖の湖岸に開けた場所がある。 

 そこは山の端を削り取り、人工的な大きな黒い扉のような物が付いている。

 そして沢山の黒い何かがその大きな扉に向かって扇型に並んでいる。


 ドラグルだ。 凄い数がいる。


 この円形の山脈の中はドラグルの住処のようだ。





 赤いドラグルは無数のドラグルが取り囲んでいる、その大きな扉の前に降りた。



 巨大な扉の高さは20m以上はあるだろう。 

 


 その扉の中心の下の方に、2m程の台座が組み込まれていて、そこには目を閉じた7つ目のドラグルの顔の彫刻が施されていた。


挿絵(By みてみん)



ドラグルに連れて行かれた先にある大きな扉は、一体何?

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