16話 原住民
崖を一気に駆け下り、山脈の内側に着いた。
そこには原住民がいて······
16話 原住民
『さぁ! 一気に降りるぞ。 落ちないように、しっかりと私の体に縛りつけておけ』
ケビンはザギにしがみつくのに邪魔な宝珠をハリスに持ってもらい、ザギの体に自分の体を縛り付けた。
ルナはネズミの姿で、ハリスの背中に乗っている。
『いいか? 行くぞ』
ザギはポンと地面を蹴り、降り始めた。
「ぐうわぁぁ~~~あっ! わぁぁ~ぁ~~!」
降りているんじゃない。 どう考えても、落ちている。
たまに岩場に足を付き、また落ちる。
ザギが岩場に足を着く度に体を硬くして衝撃に備え、ガクッ! とくると、また浮遊感。
その度に、ザギの筋肉がグンと盛り上がる。
《ケビン、大丈夫か?》
《何とか······》
《ハハハハハ》
ザギは楽しそうだが、ケビンはそれどころではない。
「わぁ~~~ぁ~~っ! うわぁ~~っ!!」
空を飛ぶ方がよっぽどいい。
ガクッ、浮遊、ガクッ、浮遊·········
目の前を岩肌が、凄い勢いで駆け抜ける。
◇
永遠に続くかと思われた浮遊感と衝撃の間隔が短くなり、やっとザギの動きが止まった。
《着いたぞ》
「ふぅ~~っ」
ケビンは大きく息を吐いた。
自分を縛りつけた紐をほどき、ザギから降りて座り込んだ。
登る時は2日も掛かったのに、下りは数十分で崖の下まで到着した。
『大丈夫だったか?』
「大丈夫な訳ないだろ! 死ぬかと思った」
『ハハハハハ』
やっぱりザギは楽しそうだ。
ハリスから宝珠を受け取り、首に掛けて服の中に入れ、ザギに跨がり残りの山を降りた。
ルナもケビンの胸ポケットに潜り込んでいる。
◇◇
一息付いて干し肉を頬張っていると、ザギが『人が来る』と言う。
草むらから出てきたのは7~8人の男達だが、どうやら原住民のようだ。
腰に草で編んだ腰巻きを着けている以外は裸で、赤、白、青の塗料で顔と体に点と線で独自の模様を描いている。
髪は頭のてっぺんで1つにくくり、大きな鳥の羽で飾り付けていた。
「おっと」
全員が、こちらに槍を向けている。 ケビンは両手を挙げた。
「なんですか? 戦う気はありません」
「○★☆&▼§▽*☆!」
「?」
『壁の向こうに帰れと、言っている』
「わかるの?」
『何とか』
「今さら帰れと言われても…」
「☆*&▽◇#*!」
『お前のいる場所ではない、と』
「困ったな······」
3人の男が前に出てきた。 何だかヤバい雰囲気。
ギンギンにケビンを睨み付け、槍を構えて近付いて来た。
「いや、だから······わっ!」
急に攻撃してきたので、剣を抜いて槍を払う。
カン!カン!カン!
簡単に攻撃を交わされ男達は戸惑っている。 攻撃はしたくないのだが、有無を言わずに攻撃してくる。 身を護るためには仕方がない。
『ケビン、手伝おうか?』
《大丈夫。 手を出さないで》
すると後ろから1人の男が前に出てきた。 他の男達より一回り体が大きく、髪飾りも豪華で、沢山の綺麗な鳥の羽が扇型に飾られている。
そして、腰に半月形の変わった剣を2振り下げていた。
出てくるなり両手をクロスさせ、2本の剣を抜くと攻撃してきた。
ザザッ!
一歩二歩、近付いただけで分かった。
この人はできる!
「ちょっと待っ···わっ!」
この人も、聞く耳を持たない。 てか、言葉が分からないから仕方がないか。
上から振り下ろし、右から左から薙ぎ払ってくる。
速い!
護りの剣でなければ、間に合ってなかった。
どうにか受け止め次の剣を払い、下から切り上げてくる剣先をかわして、後ろに一回転し、立ち上がった時には、半月形の剣先がケビンの喉元にピタリと止まっていた。
「参りました」
ケビンは剣を捨てた。
『ケビン!』
《大丈夫。 この人からは殺気が感じられない。 殺しはしないだろう》
男達はケビンを縄で縛り、ザギの首にも縄をかけて引いていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
ケビンは集落に連れて行かれた。
数名の住民が待ち受けている。 その先では、見えるだけでざっと200名程か、住民が仕事をしながら、こちらに注目していた。
小さな家がいくつも立ち並ぶ。 それらは直径5m程の円形の住居で、円錐形の屋根には2~3mはある大きな葉が何枚も重ねてあり、壁は土を練って造られているようだ。
入り口には屋根に付いているのと同じ大きな葉が、一枚垂れ下がっているだけ。
その中の1つの家にケビンだけ連れ込まれた。
家の中の真ん中に大きな柱が一本ある以外は、壁沿いに幾つかの荷物が置かれているだけだった。
思ったより広い。
その真ん中の柱に縛り付けられた。
《ケビン、大丈夫か?》
《縛り付けられたけど、取り敢えず大丈夫》
ザギの声はよく聞こえる。 すぐ近くにいる証拠だ。 どうやらこの家の直ぐ外に繋がれているらしい。
《外の様子はどう?》
《何だか祭壇みたいなのを準備しているぞ》
《生け贄······とかじゃないよね》
《さぁ······》
そこへルナが入ってきた。
『祭壇みたいな所で話していたのを聞いたんだけど、ケビンを壁の向こうまで誰かに連れて行ってもらうような事を言ってたわ』
生け贄じゃなさそうなので、一安心。
「そんな御親切な······誰が?」
『さぁ? ここの人達の言葉は分かりにくくって······でも、[神]みたいな事を言ってたわ』
「神様が連れて行ってくれるの?」
『さぁ~?』
「?」
『「明かりが壁に隠れてから」って言ってたから、多分日が沈んでからの事よね』
その時、ルナがハッとして、荷物の陰に隠れた。
女性が水と食事を持ってきてくれた。 褐色の肌をしている女性も、体を隠す物といえば腰に巻いている物だけだが、大きな飾りが付いたネックレスを何重にも着けているので、殆ど胸は隠れている。
ケビンが見ても綺麗な人だ。 女性の年齢は分かりにくいが、ケビンより少し上というところか。
なぜかルナがその女性をやたら気にしている。 ゆっくりと出てきて、ケビンの後ろから女性を見ている。
「◇&★☆▼▽◇」
女性が、自分の胸に手を当てて話す。
名前を言っているようだ。
『名前がザザリトだって。 ケビンに名前を聞いているわ』
やっぱり。
「ケビン。 ケ ビ ン」
聞き取りやすいようにゆっくり話すと、コクンと頷いた。
「ケビン。 ▽◇☆#★◇&」
食べ物を口に入れる仕草をしている。 食べさせてくれるようだ。
芋を練ったような食べ物を口に運んでくれた。 ほんのり甘味が有り、なかなか美味しい。
食事が終わりザザリトが出ていくと、なぜかルナも一緒に出ていった。
もしかするとザザリトはルナの契約相手なのかもしれないな、などと呑気に考えていた。
日が傾きかけた頃、ケビンは外に連れ出された。
捕らえられたケビン。
どうなる?
!!ヽ(゜д゜ヽ)(ノ゜д゜)ノ!!




