10話 ヨースへ
クレモリスを発ち、ヨースに向かうケビン達。
今回は、少し短いです。
10話 ヨースへ
翌朝、ロギオンが迎えに来た。
一緒に来ていた兵士が、ケビンの愛馬マルバスを預かるといって連れて行った。
ガオは既に転身している。
アリクイの頭に、体は熊でフクロウの翼と黒豹の尾を持つ4つ目のユニオンだった。
転身したユニオンは珍しいらしく、人が集まってきた。 ガオを指差し騒いでいる。
「気を付けて行くんだよ」
クレアがケビンを抱きしめた。
今までに見た事が無いほどの優しい笑顔で、王子だからではなく本当の息子を旅立たせる親の様に心配してくれている気持ちが身に染みた。
「機会があれば、また一緒に旅をしようぜ」
傭兵達とも一人一人とハグをし合った。
短い間だったが初めてできた仲間だったので、ケビンも後ろ髪をひかれる思いだ。
「フォント団長。 お世話になりました」
「こちらこそありがとうございました。 気を付けて行ってらして下さい。 御無事をお祈りしております」
フォント団長は、少し緊張した面持ちで答えた。
ケビンはみんなに一礼すると、ガオに飛び乗った。
ザギはロギオンとケビンの間に、ルナはネズミの姿でケビンの胸ポケットの中に収まっている。
「ありがとうございました!!」
ガオは飛び上がった。
ウィンガが団長の肩を叩いた。
「団長、アストに対して、くそ丁寧でしたね」
フォントはクルクルのヒゲをいじりながら、悪戯っ子のようにニッと笑った。
「あの御方はケビンスロット様。 アルタニアの皇太子様だ」
「「「えぇ~~~~~っ!!!」」」
◇◇◇◇◇◇◇◇
ガオの空の旅は快適だ。 アルナスの様に安定しているうえに、フクロウの翼なので羽音がしない。
居眠りしないように気をつけなきゃ。
クレモリス国の北側にはほとんど民家は無く、暫くは野宿になると教えてくれた。
ロギオンは無口で必要なこと以外殆ど喋らない。 その代わり、ルナが一人でずっと喋っているから退屈はしない。
『そういえばザギさんって、何年くらい生きてるの?』
『長すぎてよく分からん。 2千年か3千年くらいじゃないか? ハハハハハ 数えてないから分からん』
そりゃ分からんわ。
「ルナはどれくらい?」
『私? 私は若いわよ。 五百年位かな?」
若くて五百年って。
「ガオは?」
『さぁ? 千年は過ぎていると思います」
「規模が大きすぎて想像できないや。 そう考えると人間って短命だね」
『ケビン。 せいぜい長生きしてくれよ』
「ハハハ、頑張るよ。 そうだ、前から気になっていたんだけど名前って誰がつけるの? 自分? 森の長?」
『名前って決まっているものでしょ?』
「え?」
『私達って、気付けばそこにいるし、名前も分かるの』
「分かる?」
『初めから決まっているって事よ。 人間は違うの?』
「大抵は親が決めるんだ」
『親ってなに?』
「人間も含めて、動物はお母さんから生まれてくるんだよ。 お父さんとお母さんが親だよ」
『ルナは見た事ないか? 動物から小さい動物が出てくるんだ。 不思議だぞぅ』
ザギは得意そうにケビンの胸ポケットにいるルナを見上げる。
『出てくるの? 小さいのが? あぁ、それで動物は小さいのがいるのね』
『そうだ。 一度見ているといい。 ただし、人間のを見たいと言うなよ。 なぜか分からんが、怒られるぞ』
◇◇◇◇◇◇◇◇
何度か休憩に降りたが、日が傾いて来たので野宿する場所を見つけて降り立った。
そこは綺麗な川の広い河原だった。
商団で野営はしたが、何もせずに見ていただけだったから新鮮だ。
城でも色んな人に聞きはしたのだが、結局聞いただけなので、いざとなると何からすればいいのか分からない。
ロギオンに一から教えてもらいながら準備をした。
食べれる野草と、食べてはいけない野草を教えてもらい、リュックの中の調味料や非常食等についても教えてもらった。
そして魚の釣り方や獣の罠の仕掛け方に、さばき方も教えてくれた。
動物を殺すのは忍びないが、こちらが生きるためだ。
初めは泣きそうになったが、そのうち慣れた。
慣れてしまった自分が少し悲しい。
それらを毎日、とても分かりやすく丁寧に教えてくれる。
10日もすると、ポツポツと民家が見えてきたので、納屋や離れを借りて夜を過ごした。
そうやって港町ヨースに着いた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
『来るかな?』
『来るさ』
『あのままじゃ嫌でしょう』
『そうだよな』
『待ち遠しいな』
『うん、楽しみだ』
『本当にね!』
色々とロギオンに教えてもらい、これで1人旅の準備万端です。
p(^-^)q




