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ユニオンビースト ~霊獣と共に生きる者達~  作者: 杏子
第一章 ユニオンビースト
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8話 誕生祭

城では舞踏会が行われた。

 8話 誕生祭




 誕生祭当日は朝から忙しかった。


 次々と訪れる来賓の対応に追われ、午後からはパレードで街中を馬車で一周してから城に戻り、再び来賓の対応に追われた。



 夜には、祝賀舞踏会が開催された。



 大広間は楽士による美しく優しい音楽が奏でられ、数百名の人で賑わっている。 


 招待客は色取り取りで豪華な衣装で身を包み、これでもかというほど美しく飾り立てている。

 立食式の食事に舌鼓を打つ人。 大広間中央で音楽に合わせて踊っている人。 知り合いを見つけて話しに夢中になる人。


 それぞれが祝賀舞踏会を楽しんでいる。





 飾り物のようにグラント国王、ラウレア王妃、そしてカイルが上座に座り、次から次へと挨拶に来る人の対応をしていった。


 カイルは次々と訪れる招待客の対応にいい加減うんざりしていた時に、グラントから「立っていいぞ」と言われて、カイルは弾けるように立ち上がった。



 大広間の隅の方に立っているエリアスの所へ急いで行き(途中、何度も呼び止められ、挨拶されたが)手を引いてバルコニーに出た。



「ふぅ~~っ。 やっと解放された」

「今日1日、忙しかったわね」

「お祝いしてくれるのは嬉しいけど······疲れた」



 カイルはテラスにある椅子にドカッと腰掛けた。



 その時、エリアスの侍女ロージーがショールを持ってパタパタと走ってきた。

 この時期の夜は、ドレス姿には少し寒い。

 その為、バルコニーに人はまばらにしかいない。



 今度はタントゥールが食事を運んで来て、テーブルの上に並べてくれた。



 カイルとエリアスが食事をしながらお喋りを楽しんでいると、少し離れた所に14~15歳の青年が出て来たのに気が付いた。



 回りは大人ばかりだったので、居場所が無かったのか、つまらなそうに外を見ている。





「エリアス。 あの人に話しかけてみない? あの人の名前は何ていったっけ?」

「エグモント国の第二王子の、コーヴ·クロンメル様です」


 タントゥールが答えてくれた。


「エグモント国? いつもは違う人が来ていたよね」

「例年は国王様か第一王子様がいらしていましたが、先月エグモント国で大規模な洪水があった為、御二人ともお忙しいとのことで、今年はコーヴ様が代わりにいらしたそうです」


「大変なんだね·········一人で淋しいだろうから、お友達になろうよ」

「そうね。 行ってみましょう」



 二人はコーヴに近づいた。




「あの······こんばんは コーヴさん······」


 コーヴはゆっくりとこちらを向き、何故かカイルの顔を見て顔をしかめた。

 小柄な痩せ形で目が細く、薄い唇をした神経質そうな青年だ。



「あっちで食べながら、お話しませんか?」

「あ···に······てろ······」

「え? 何て言いました?」


 カイルはコーヴの顔を覗き込むようにして聞き返した。



「あっちに行け!!」


 カイルはコーヴに突き飛ばされ、ドシン!と尻もちをついた。 



「わっ!!······ごめんなさい。 でも、僕······」

「カイル! 行きましょ!」

「でも······」

「いいから!」



 エリアスはカイルを無理やり引っ張って、元の場所に戻った。



「私、あの人、怖い」

「そうかな······」

「あの人の目を見た時、ゾッとしたもの」



 その時、ハリスが飛んできた。


『カイル様! 大丈夫ですか!』

「ハリス。 どうしたの?」

『それはこちらのセリフです。 何があったのですか?』

「あぁ······一人でいたいと思っている人の邪魔をしたから少し怒られただけだよ。 大丈夫だから」


 その時、タントゥールが「カイル様」と寄ってきた。

 彼も見ていて心配になったのだろう。


「お部屋に戻られますか? お食事はお運びしますよ」

「いいの?」

「王様には私から申し上げておきます」

「うんじゅあそうする。 エリアス、行こう」



 ◇◇◇◇



 部屋に戻るとナルナラが飛び付いてきた。


『カイル! 大丈夫だったのね!』

『その程度でいちいち気にする事はないと言っただろう』


 アルナスが呆れたようにぼやいた。


『まぁ! アルナス様って冷たいのね!』

『お前が気にしすぎなのだ』

『あら? でもアルナス様も一瞬飛び起きたように見えたのですけど?』

『うるさい!!』


「·········で、アルナスが飛び起きたんだって」



 カイルがエリアスに通訳している事に気が付いたアルナスは『カイル! 訳するな! ふん!』と怒鳴って背中を向けて寝転がった。


 契約とはこういう事なのだ。 自分に何かあれば、それが分かるみんながとても心配する。



「アルナス······心配かけてごめんね」

『何もなければ、それでいい』

「うん。 皆も心配してくれてありがとう」


「ユニオンビーストって素敵ね。 私も契約してくれるユニオンビーストといつか逢えるかしら」

「きっと見つかるよ」


「ええ、そうならいいわね·········あっ!そうだ。 ナルナラ、見て!」


 エリアスはクルッと後ろを向いて、ナルナラに髪飾りを見せた。


「ナルナラにそっくりだったから買ってもらったの」

『あら! 本当だわ 可愛い!』

「ナルナラも喜んでるよ」



 そこにタントゥールとローシーが食事と着替えを持って入ってきた。


 


 祝賀舞踏会から聞こえる音楽を遠くに聞きながら、カイル達は、その夜を楽しく過ごした。



 ◇◇◇◇



 翌朝、カイルは早くに(叩き)起こされ、正装して大広間にいた。


 今日帰国する人達への別れの挨拶をしなければならない。

 カイルは閉じそうになる目を開き、あくびを噛み殺しながら座っていた。



 何組目かに、エグモント国の一行が挨拶しに入ってきた。



 コーヴはチラリ()()カイルを見ることもなく挨拶を終えると、さっさと立ち去った。


 


そんなコーヴを、カイルは複雑な気持ちで、見送った。





 大好きなエリアス一行も昼食を共にした後、別れを惜しみながら帰っていった。







う~ん コーヴ·クロンメルって (゜_゜;)

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