5話 手掛かり
アルタニアに戻り、レジェンド·オブ·レジェンドを見ると、新しい手掛かりが見つかった。
5話 手掛かり
ラングリーの港に着くと、既にアルナスが待っていた。
『何か分かったか?』
「うん。[レジェンド·オブ·レジェンド]の中に書いてあるって」
『えっ? そうなのか? では、無駄足だったな』
「そんな事ないよ! だって、あの本の中にある事が分かったんだから」
『それもそうか』
ケビン達はグラードや船員達に別れを告げ、町の外まで歩いていった。 そして人気のない場所まで来てからアルナスが転身した。
『早く乗れ』
「うん。 ザギおいで」
ザギが胸元に入れるように服のボタンを外して開いた。
ザギが肩からパタパタ飛んで胸元に入ろうとしたが、何かがあって入れない。
『あれ? あれ?』
胸元に入ろうとするがダメだ。
「ザギ何してるの?早くおいでよ」
『そ···そう言われても、なぜかケビンの胸元に近付けない』
「どういう事?」
よく見ると、ケビンの胸から20㎝程の所で目に見えない何かが有るように阻まれている。
『そう言えばケビン、そのペンダントは何だ?』
「これ? グルタニアの王様から頂いたんだ。 秘宝の宝珠だって。 綺麗でしよう?」
ケビンはペンダントを外してアルナスに見せた。 すると、ザギがドン!とケビンの胸にぶつかってきた。
『あれ?』
『ケビン、もしかしたらその宝珠のせいじゃないか?』
「えっ?」
ケビンが宝珠をザギに近付けてみると、何かが有るように少し手前で止まってしまう。
「わぁ! 何これ!」
『秘宝と言うだけあって、不思議な力があるみたいだな』
ケビンは試しにアルナスに近付けたが、何の抵抗もなく付ける事が出来る。
「あれ? ザギだけ?」
『そのようだな······とにかく戻ろう』
ケビンは秘宝をズボンのポケットに入れ、落ちないようにしっかりボタンを止めてアルナスに飛び乗った。
◇◇◇◇◇◇◇◇
アルタニア城に着くと、カイルの部屋のテラスにみんなが集まっていた。
「ただいま戻りました!」
「お帰りなさい。 まぁ!真っ黒になって、逞しくなったわね」
エリアスが抱きしめた。 久しぶりのお母様の匂い。 ホッとする。
「何か分かったか?」
「はい、お父様。[レジェンド·オブ·レジェンド]の中に小さいドラゴンについて書いてあるって」
「本当か? そう言えば、忙しくて途中から読んでいなかった」
カイルは急いで本棚から[レジェンド·オブ·レジェンド]を取り出して開いてみた。
「後ろの方って言ってたよ」
ページを捲っていくと【エボリューション】(進化)と書かれたページが出てきた。
色々な動物の進化についての記述がある。
読み進むと[小さきドラゴン]という文字が目に飛び込んできた。
「お父様これだ!!」
その【エボリューション】の欄の後ろには地図が載っていた。
そこにはこう書いてある。
[小さきドラゴン。 北の最果ての地にて、魂を共有せし者と試練に立ち向かい、世界の覇者となる]
「これだけ?」
「この地図が北の地か? この下側にある大陸がこちらなのだろう。 という事は、海の向こうなのか」
「お父様見て! 地図のここにドラゴンの模様があるよ。 きっとここに行けば何か分かるんだ。 僕行ってくる! いてっ!!」
カイルは拳骨でケビンの頭を殴った。
「バかな事を言うな! グルタニアとは訳が違う! 絶対ダメだ!」
「ザギがこのままでもいいの?」
「他を探してみる。 とにかくそこはダメだ!」
カイルはそれだけ言うと、バタン! と本を閉じて本棚に直し、そのまま出ていった。
「ケビン。 ザギさんが心配なのは分かるけど、もう少し調べてみましょうね。 さぁ、体を洗って着替えて来なさい。直ぐに夕食ですよ」
エリアスも、出ていった。
「ちぇっ! お父様はザギがこのままでもいいと思ってるんだ。 でも僕は絶対嫌だぞ! 何とかして説得しないと!」
『そうだそうだ! カイルのケチ!』
小さいザギが合いの手を入れる。
「でも、どうしたら許してもらえるかな? とにかく先ずは、もっと何か書いてないか調べよう!」
『調べよう!』
ケビンは[レジェンド·オブ·レジェンド]を本棚から取り、こっそりと部屋に持ち帰った。
とりあえず本をベッドの下に隠し、体を洗って部屋着に着替えて食堂に行くと、皇太后のラウレアが食事の準備をしていた。
「おばあ様、戻ってきました」
「まぁまぁ! すっかり男前になって、カイルの若い頃にそっくりだわ。 さぁ、座って」
国王であるカイルは、普段は忙しくてなかなか食事を共にできないのだが、今日は久しぶりのケビンとの食事の為に、時間を作って既に席に着いている。
今回はケビンの冒険談に花が咲いた。 中でも演劇の話しになると、立ち上がって身振り手振りで大興奮だ。
「お父様は凄いんだよ! どこに行っても、みんながお父様に感謝してるんだ!」
弟のコルトロッドとナルナラなどは目をキラキラさせて聞いている。
「そうだ! お父様、これを見て!」
ケビンは胸から秘宝のペンダントを外し、ケビンに渡した。
「綺麗なペンダントだな。 これはどうしたのだ?」
「グルタニアの王様から頂いたんだけど、実はこれってグルタニアの秘宝なんだって」
「そんな大切な物をなぜ?」
「ゴーダントさんや、ドラグルと契約しているシャーザさんもだけど、グルタニアの王様も物凄くお父様に感謝しているんだよ。 それで凄い歓迎を受けたんだ。
そして帰りの船に乗る時にも見送りに来てくれたんだけど、将来僕に必ず必要になるから渡すようにって、ゴーダントさんに言われたからって言ってた。 ゴーダントさんって、予知能力があるんだって!」
「ゴーダントが?」
「お父様、その宝珠をザギにくっつけてみて」
カイルがザギに宝珠を付けようとしたが、少し手前で止まってしまう。
「?? どういうことだ?」
「でしょ~。 不思議だよね」
今度はアルナスに付けてみると、何の抵抗もなく付ける事が出来る。
「でしょ~~。 僕もやってみた」
「ザギだけという事は、ドラグルに関係する物なのは確かだな。 とにかく大切に持っていなさい」
「はい。 でも、[レジェンド・オブ・レジェンド]には少ししか書いてなかったけど、それでも大きな手掛かりだよね!
ザギはボスなのに、小さくなって立場が無かったのか、小さくなっちゃった事をずっとみんなに内緒にしてたんだ。 もしかしたらドラグル達は何か知っているかもしれないから、話しを聞いてみたかったのに······」
あら······バレてた? とザギはこっそりと思った。
「だからお父様、これはドラグルの誇りをかけて何とかしないと! お願いだから行かせて!」
『ドラグルの誇りがかかっているんだ』
ケビンとザギは、目をウルウルさせて懇願した。
「ダ·メ·だ!!」
ショック!
遠い北の国に手掛かりがありそうだ。
しかし、14歳のケビンには遠すぎる。
どうする?ケビン!




