1話 ザギが小さくなっちゃった!
レジェンド·オブ·レジェンドの続編です。
別で書こうと思ったのですが、バラバラになる(繋げ方が分からない)のでまた、そのまま続けて書くことにしました。
第三章 エボリューションフラッシュ
あらすじ
カイルの息子ケビンと契約しているザギ(ドラグル)が、突然肩乗りサイズに小さくなってしまった。
なぜ?
どうすれば、元に戻るのか?
ケビンとザギは、元の姿を取り戻す旅に出る。
第三章 エボリューションフラッシュ
1話 ザギが小さくなっちゃった!
ケビン(ケビンスロット·ロングフォード13歳)は、山羊の姿に転身したザギに乗って裏山を駆けていた。
山羊といっても家畜の山羊ではなくアルガリという大型の野生種で、肩までの高さが170㎝はあり、馬よりも大きいくらいだ。 また、左右に広がる半円形の大きな角は、先の方が僅かに捻れて前に突き出していた。
馬と違って跳ねるような走り方をするので、鞍無しで乗るには相当な練習を要したが、今では難なく乗りこなす事が出来るようになっている。
ケビンはザギから降り、眼下に広がる王都に目を向けた。
「やっぱりここは気持ちいいや。 お父様も好きでよくここに来たっていうのも分かるよね」
ケビンは大きく深呼吸をした。
『しかしカイルはいつもこの辺りで、一度はハスランから落馬していたと聞いたぞ』
「え? あの完璧なお父様が?」
『ハハハハハ 奴が完璧だと? まぁ、お前にはそう思わせておいた方がいいかもな。
奴は1つの事に気を取られると周りが見えなくなる。 この景色に見惚れていていつも落馬していたとアルナスが言っていた。
この事は内緒だがな』
「分かった」
いつも完璧に見える父にもそんな面があったなんて、ケビンは嬉しかった。
「ところでザギ、 ザギは成長してない?」
『成長?』
「だって、始めの頃はザギの角は普通に半円形だったのに、今は先の方が捻れて前に出てきてるよね」
『そうか? 自分では見えんから分からん』
「このまま成長して、7つ目になったりして」
『ハハハハハ そんな事があったら、そこら中6つ目だらけだぞ。 それに今頃カイザーは目が10個くらいになっていたかもな』
二人は思わず、目が10個あるカイザーを思い浮かべた。
「ちょっと多いよね」
『ハハハハハ 違う意味で化け物だな』
「そういえばユニオンビーストって、6つが一番多い目の数なの?」
『いや、私が知る限り7つ目が最高だな』
「へぇ~~ でも、ユニオンの王のカイザーでも6つ目だよね それ以上って······」
「私が知る者はドラグルの王だった。 あっ! そろそろ戻ろう。 またカイルから拳骨食らうぞ」
夕方を知らせる鐘が鳴ったのだ。 暗くなる前に帰らないとカイルに怒られる。 前にも遊びに夢中になって、帰った時には日が落ちていた事があった。 その時に思いっきり痛い拳骨を食らったのだ。
「わぁ! 本当だ、急いで帰ろう」
ケビンはザギに飛び乗り、城への道を戻っていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
ケビンの部屋のテラスは広い。 ザギがドラグルの姿になっても大丈夫な様に、広いテラスのある部屋をもらった。
『たまには虫干しでもするか』
虫干しなど必要無いのだが、やっぱりドラグルの姿になるのは気持ちいい。
ドラグルの姿になり、翼を広げて初春の日差しを気持ち良く浴びていると、何か分からない衝撃が体を駆け抜けていった。
『なんだ? 今のは······』
すると小さかった回りの景色が、どんどん大きくなっていく
『な···何が起こっている?』
気付けばいつも鷲の姿の時の景色と変わらない
『?????······ドラグルの姿のはずだよな? えっ?』
自分の声に驚いた。 3オクターブは高い
『えっ? えっ? えっ?』
慌ててケビンの所に飛んで行った
『ケビン!!』
「······え?······ザギ?」
『そうだ、私だ!』
「キャハハハハ! ザギ、そんな事まで出来るの? サイズを変えられるんだ! 可愛い! キャハハハハ」
『笑い事ではない! 自分でしたのではなく、勝手に縮んだ!』
ケビンから笑みが消えた
「嘘だよね」
『嘘じゃない!』
「どういう事?」
『わからん』
「他の姿にはなれる?」
ザギは山羊の姿になってみた。
「いつも通りだね」
コウモリになり、ワニになり、オオトカゲになり、鷲の姿にもなってみたが、いつもと同じだ。
再びドラグルの姿になると、やっぱり小さい。 丁度ハリス(隼)位の大きさだ。
「本当に大きくなれないの?」
『なれない!』
ザギは泣きそうになっている。
「大変だ! お父様に聞きに行こう!」
ケビンは走り、小さなドラグルが飛んで付いてきた。
ケビンは執務室の扉をバタン! と開けて中に駆け込んだ。
父親の国王カイルは宰相と話し中だ。
宰相は[エンドルフ·エバンス]
小柄だが威厳があり、とても聡明だ。 カイルの父親の時代から宰相をしていてとても頼れる腹心である。
「ケビン!! 今は仕事中だぞ!」
カイルに怒鳴られたが、それどころではない
「お父様! ザギが大変なんだ!!」
「ザギが?」
後ろから付いてきた小さなドラグルがケビンの肩に止まった
「えっ? ザギ?······お前、そんな事が出来るのか? 可愛いじゃないか」
『自分でしたのではない! カイル!! 何とかしてくれ!』
「えっ? どういうことだ?」
『わからん!』
「えっ?」
『何か衝撃のようなものが体を貫いたと思ったら、急に縮んだ』
「こんな事があるのか?」
カイルはカイザーを見た
『······私も知らない』
その横でアルナスとナルナラが、ゲタゲタと笑い転げている。
「他の姿にはなれるのか?」
『なれる。 さっき試した』
「·········」
カイルの話しぶりから察したエバンスが、口を開いた。
「王様。 グルタニアのゴーダント殿がドラグルに詳しいと聞いた事があります。 ドラゴンに関する書物を読み漁ったと」
「グルタニアか······」
「僕、行って聞いてくる!」
「ダメだ どれだけ遠いと思っている」
「僕もう13歳だよ大丈夫!」
「だめだ······」
「じゃあ、お父様が行ってくれる?」
「それは······今は無理だ」
「じゃあ······」
「······分かった。 では、誰か······?!」
振り返ると、ユニオンは全員目線を外している。
カイザーまでも。
「アルナ······」
『嫌だぞ! あの嵐は二度と御免だ!······お前もいないし······』
カイルの言葉に被せてきた。
「·········」
「僕とザギだけで大丈夫だよ」
「······分かった。 ではアルナス」
アルナスはビクッとして、後退りする。
「ラングリーの港まででいいから送ってやってくれ」
アルナスはあからさまにホッとした。
「それくらいなら」
ケビンは、ザギと二人でグルタニアへ……
( ゜ε゜;)
ザギの中にある動物の山羊の「アルガリ」というのは、厳密には羊です。
しかし「ヤギ亜目・ヤギ族・ヒツジ属」ですので、この物語では「山羊」という事で通したいと思います。
立派な角を持ち、一番大きな種なのでアルガリにしました。
これからもよろしくお願いいたします。




