22話 祭壇
ザギのお陰で城から逃げ出せたカイル達は、五つ目のドラグルと戦う事になる。
22話 祭壇
ザギはカイル達を連れ、郊外の空き地に舞い降りた。
『カイル、すまない。 本当にすまなかった』
ザギは大きな頭を下げた。
『ルーアンは大丈夫だったか?』
「問題ない」
ザギはホッとした顔をした。
『どうしてもグドゥーには逆らえなかった』
「グドゥー? あのバカでかいドラグルの事か?」
『七つ目の我らのボスだ。 奴の命令は絶対だ······しかしもういい······エリアスを見殺しにはできない』
「西の山とは、祭壇がある所か?」
『そうだ。 昨日イザクが城の私の所に来ただろう? しかし、そのすぐ後にゴーダントが身代わりの女を連れてきて、グドゥーがエリアスを連れ去った。
女を助けに来る奴がいるかもしれないから部屋におびき寄せて捕えろと、多くの兵士をあの部屋に潜ませていた。
今頃はエリアスを連れて西の山にいるはずだ』
「あちらの戦力は?」
『兵士は30人程だが、グドゥーと五つ目のドラグルが五頭』
「問題はグドゥーだな」
『奴はゴーダントと契約している。 契約者を守るために直ぐには襲ってこないはずだ。 カイルと違ってゴーダントは無力だからな。 それでカイザー達は?』
「港の近くの島で待っている」
『では、今すぐ呼べ。 五つ目のドラグル達をおびき出して先に倒してしまえば、グドゥーを倒せる可能性はある』
「ザギ······いいのか?」
『?』
「仲間を裏切る事に······」
『腹をくくった』
「分かった。 アッシュ、ローゼン。 ディアボロとグーリを呼べ」
直ぐにカイザー達が来た。 アルナスはチラリとザギを見たが何も言わず、カイルにすり寄った。
『カイル、無事で良かった』
『カイル様、無茶をされましたね。 肝を冷やしました······それで···ザギは?······」
「ハスラン、詳しい話は後だ。 先に奴らを倒す!」
カイザー達の気配を察し、五頭のドラグル達がこちらに向かって飛んでくる。
「左の三頭は任せろ! ハスラン!」
カイルは転身したハスランに飛び乗り、槍を長く握り直した。
ハスランが左に回り、炎を噴きながら突進してくる一頭をかわし際にカイルが槍を振り下ろした。 するとそのドラグルは突然ぐったりしてそのまま下に落ちて行った。
カイルがハスランの鬣をグッと握り、足に力を入れるとハスランは急旋回した。 目指すドラグルに近づくと同時に槍で突く。 するとそのドラグルもまた錐揉みしながら落ちて行った。
それを見たもう一頭の赤いドラグルゴトーが、踵を返し逃げて行った。
◇
ザギと戦っていたドラグルは体中ザギに食いちぎられ、とうとう落ちて行き、ズズッと土の中に潜った。
◇
カイザー達は残る一頭と戦っていたが、炎を噴きまくるので逃げるのに精いっぱいだった。
うまく掻い潜り近付けたとしても硬い鱗に阻まれ、ユニオン達の爪や牙では傷をつける事も出来ないので苦戦していた。
ザギとカイルが加勢に入った。
ドラグルにはドラグルの炎は効かない。
ザギはドラグルが噴く炎の中を突き進み喉に喰らい付いた。 その隙にカイルが近付き槍を突き立てた。 ザギに喰い付かれて暴れていたドラグルは急にぐったりとして、ザギの口から落ちて行った。
少し心配そうに落ちて行くドラグルを見つめるザギにカイルは近付いた。
「心配するな、眠らせただけだ。 終われば目覚めさせる」
それを聞いたザギはホッとした顔をし、カイルが持つ槍に目を向けた。
『······その槍······それとその剣と盾······』
「あぁ、これか? これはアルタニアに伝わる物だ。 不思議な力を持っている」
『我らのだ』
「えっ? ドラグルの物?」
『いや······我らの牙と鱗だ』
「やはりそうか。 そうではないかと話していたんだ」
『我らの鱗は人間の剣やユニオンの牙は効かぬ······そういうことか·····それでその槍で倒せたのだな』
◇
その時、周りが少し暗くなってきた。 曇って来たのかと思ったが、空には雲一つない。
太陽を見ると端の方が少し欠けているように見えた。
「どういう事だ?······太陽が欠けていく」
「カイル様、 このまま太陽が消えてしまうのでは?······」
「そうか! [昼が夜になる]とはそういう事か。 時間がない! 急いでエリアスを助けなければ! 行くぞ!」
カイル達はの西の山の頂上を目指した。
後ろを見ると二千名程のグルタニア軍が土煙を上げて、こちらに向かってくるのが見えた。
先頭を進む者は白い馬に乗っているが、その馬には角が生えているように見える。
「ユニコーン?」
伝説上の生き物だと思っていたのだが、本当にいたのかと驚いた。 しかし直ぐに興味を失ったカイルは目指す山の頂上を睨みつけた。
◇◇◇◇
山の頂上には巨大なグドゥーと、先程逃げたゴトーがいた。
そして三十人近くの兵士が祭壇を取り囲んでいた。
そしてゴーダントと思われる白髪の老人が見下ろすその祭壇の上にエリアスが横たわっていた。
カイル達が近付いて来たのを見てグドゥーとゴトーが向かってきた。
「赤いドラグルとエリアスを頼む!!」
アッシュとローゼンを乗せたディアボロとグーリは一旦山に降りた。 アッシュ達を山の中に降ろすと、再びゴドーと闘っているカイザー達の方に飛んで行った。
◇
アッシュとローゼンは祭壇に向かって森の中を掛け上がった。
十人程の兵士達が木々の間を抜け、こちらに走って来る。
アッシュは最初に来た兵士が振り下ろす剣を跳ね上げ、返す剣で足を切った。 その兵士は、揉んどりうって倒れて、下に転がっていった。
次々と向かってくる兵士達を、アッシュとローゼンはほぼ一撃で倒し、祭壇のある頂上に辿り着いた。
そこは思ったより広く、際奥には大きな岩がそそり立っていて、その岩の手前の一段高くなった所にエリアスが横たわっている祭壇があった。
その祭壇は、両端から翼を折り畳んだドラグルの上半身が頭をもたげ、頭側のドラグルは剣を、足元側のドラグルは盾を手に持っている。
祭壇自体にも幾何学模様の様な見たことのない模様が刻まれていた。
ゴーダントは慌てた。 ゴーダントの周りには後20人ほどの兵士が取り囲んでいる。 しかし、先程送った10人の兵士たちは一瞬で倒されている。
「あと少しなのに! あと少しなのに! ザギの野郎!! まさか裏切るなどとは予知の水盆にも出ていなかったのに!! なぜだ! なぜこんな事になるんだ!!」
ワナワナしながら上を見上げるとグドゥーが裏切ったザギと闘っている。 そして見た事もない大きなユニオン達がゴトーに群がっているのが見えた。
太陽は既に1/3程隠れてきている。 完全に隠れてしまわないと儀式を始めることが出来ない。
その前に邪魔される事があってはならないのだ。
とにかくこちらに来たやたら強い敵兵を倒してしまわないといけない。 そいつらさえ倒せば、必ずグドゥーが空の奴らを倒してくれるはずだ。
可愛いグドゥーは無敵なのだから。
「倒せ! 奴等をサッサと倒せ!!」
ゴーダントは坂を駆け上がって来た敵兵に周りにいる兵士達をけしかけた。
先ほどの倍ほどの人数の兵士たちがこちらに向かってきた。
「一人十人づつだな」
「楽勝だぜ」
ローゼンは少し顔が引き吊っている。
「行くぞ!」
「おぅ!!」
アッシュとローゼンは剣を握り直し、兵士達に向かって走って行った。
残るはザギです。
勝てるのでしょうか?
グルタニア軍も直ぐ近くまで来ています!!
!!ヽ(゜д゜ヽ)(ノ゜д゜)ノ!!




