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ユニオンビースト ~霊獣と共に生きる者達~  作者: 杏子
第二章 レジェンド・オブ・レジェンド
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21話 潜入

カイル達はイザクの先導で、グルタニア城のエリアスの元へ向かったが······

 21話 潜入




 カイル達は城壁の越えられそうな場所の近くにある(しげ)みに隠れ、夜が更けて城の者が寝静まるのを待っていた。


 その時イザクがカイルの肩の上で『ひっ!』と思わず声を出してしがみつき、体を硬くするのが分かった。


「イザク? どうした?」

『恐ろしい気配が近付いて来ます······きっと、トルンが言っていたドラグルの気配です』


 そう言って空を見上げた。

 カイルもつられて茂みから見上げた先に、城に向かって飛んで行くドラグルの姿が、チラリと見えた。



 ザギどころではない恐ろしく巨大なドラグルだった。



「アッシュ、ローゼン、見たか?」

「はい···チラリとですが······ザギの数倍の巨大さに見えました」

「あんな化け物と戦いたくはないです······」


 三人は息を殺して隠れていたが、暫くすると巨大なドラグルは再び城から飛び立ち、どこかへ飛んで行った。



 ◇◇◇◇



 城の明かりが一つ二つと消え、城内が寝静まった頃、カイル達は動きだした。


 フックのついたロープを城壁に引っ掛けてよじ登り、中に降りた。


 城の裏口には二人の見張りが立っている。

 声を上げられずに倒すには少し距離がある。


 カイル達が躊躇(ためら)っていると『私が······』と、イザクが飛び出した。



 見張りの前まで行き、ゆっくりと歩いて首を傾げてみせたり、お尻を掻いてみせたりした。


「あれ?······猿じゃないか。 ハハハ 可愛い ウッ!」

「どうした? グッ!」


 見張りの二人はアッシュとローゼンから当て身(あてみ)を食らい、声もなく気を失った。

 意識の無い見張り達を茂みに隠し、三人は城の中に潜り込んだ。




 イザクの先導でエリアスのいる塔に向かった。


 イザクがいち早く人の気配を察してくれるので、人と出くわす事なく塔に登る階段の下までは辿り着けた。 しかし、グラードが言っていた通りグルタニア城はかなり広く、人を避けながら進むので、ここまで来るだけでも思った以上の時間を要した。



 塔の中の階段を上がり突き当りのドアを開けると、外階段に出た。

 この辺りには人気は無く、闇夜が彼らを隠してくれる。



 すんなりとエリアスが捕らえられている部屋の近くまで来れたが、流石(さすが)に部屋の前には見張りが二人立っている。



 ほんの一瞬の隙を狙ってアッシュとローゼンが飛び出し、見張りを気絶させた。



 周囲を確認してからアッシュがドアを開けようと手を伸ばした時、中から「グォォォォ!」というドラグルの咆哮が聞こえ、アッシュは手を止めた。 その手をカイルが掴んだ。


「罠だ。 エリアスはここにはいない。 逃げるぞ」

「しかし······」

「急げ!」


 カイル達が逃げ出して直ぐ、扉から顔を出した兵士が、倒れている見張りを見つけた。


「侵入者だぁ!! 探せぇ!!」


 兵士が身を乗り出して下を覗き込むと、丁度カイル達が外階段から城内へ入っていくところが見えた。


「いたぞ!!」


 直ぐに警戒のラッパが「プォ~~~ッ」と鳴らされ、部屋の中にいた兵士達がバラバラと出てきてカイル達を追った。




「カイル様、なぜ罠だと分かったのですか? もしかしてあの咆哮は······」


 カイル達は人のいない小部屋に潜んでいた。 城内は煌々(こうこう)と明かりが灯され、既に武装した兵士達でいっぱいだ。

 寝静まったのではなくカイル達が忍び込むのを待っていたのである。



「ザギが罠だと教えてくれた。 エリアスはここにいないと。 西の山に行けと······」

「しかしザギは······それこそ罠ではないのですか?」

「それは無いと思う。 それより先ずはこの城から脱出しなくては······イザク、どうだ?」

『もう少し待ってください』


 イザクは外の気配を探っている。


『今です!』


 カイル達は部屋からそっと抜け出した。


 しかし、イザクの先導でも兵士がそこら中にいる。

 切り結んで逃げては隠れる事を繰り返して、一階の小部屋の窓から外に出た時には、朝になっていた。


 城壁を超えるためのロープの所に行こうとした時、兵士に見つかった。 十人近くいる。


 接近戦には槍は不利なので、眠りの槍をイザクに託した。 転身したイザクは槍を口にくわえて城壁をよじ登り、避難した。



 次々に現れる兵士と切り結びながらロープのある所まではたどり着けたが、よじ登る隙が無い。


「カイル様、(らち)が明きません。 裏門を突破しましょう」


 三人は少しずつ裏門のある方へ移動した。


 残りの兵士が四人となり、その者達がカイル達の強さに二の足を踏んでいる隙に、裏門に向かって一気に走った。




 角を曲がって裏門が見えたと思ったが、そこには百人近い兵士が待っていた。


「いたぞ!!」


 一斉に兵士達が駆け寄り、カイル達は壁際に追い詰められて取り囲まれしまった。


「くそぅ! もう少しだったのに······はぁはぁ······もっと剣の練習をしておくべきだった」


 ローゼンは肩で息をし、何ヶ所か傷を負っている。


「カイル様···これはまずいですね······私とローゼンで隙を作りますから、その間にカイル様だけでも逃げて下さい」

「それは出来ない」

「あなたはエリアス様を助けなければならない! ですから······」

「しかし······」


 その時、黒い影がフッと横切った。

 何かと上を見上げると、一頭のドラグルがこちらに向かって降りてきた。


「「ザギ!」」


 カイルと兵士が同時に声を上げた。




 ザギはカイルと兵士達の間に降り立ち、太く長い尾で兵士達を薙ぎ払った。


『カイル! 乗れ!』


 カイルはザギに飛び乗り、ザギはアッシュとローゼンを前足で掴んで飛び上がった。


「ザギ! イザクを!」

『分かっている』


 ザギが城壁に頭を寄せると、槍を持ったイザクが飛び移り、ザギの首を伝ってカイルの元に来た。


 カイルが槍を受け取り「いいぞ!」と言うと、ザギは高く飛び上がった。






ザギは仲間を裏切りカイルを助けてくれましたね。良かった。

( ^∀^)

  

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よろしくお願いします。

m(_ _)m

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