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ユニオンビースト ~霊獣と共に生きる者達~  作者: 杏子
第二章 レジェンド・オブ・レジェンド
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20話 逮捕?

エリアスの居場所を探っている者がいると聞いたゴーダントは、グラードを連れて来させるが······

 20話 逮捕?




 執務室で仕事をしているゴーダントの元に、一人の兵士が来た。


「ゴーダント様、予定通り女に昼の薬を飲ませました」

「ふむ。 あの女の様子はどうだ?」


「ゴーダント様の薬のお陰で大人しくしています。 しかし、相変わらずザギが世話係の下女(げじょ)以外は絶対に近付けようとせず、不用意に近付いた者がまた危うく殺されそうになりました」


「ハハハ そうか。 ザギの独占欲はなかなかのものだのう。 まぁそれも明日までだ。 せいぜい今のうちに楽しませてやれ」


「しかし明日の儀式の時、女を手放しますでしょうか?」

「大丈夫だ、それ位は分かっているはずだ。 もし放そうとしなくてもグドゥーが言えば、ザギも大人しく獲物を差し出すであろう。 それより、女の追手は来ていないだろうな?」


「はい。 一人の女の為にわざわざ嵐を越えてくる奴もいないでしょう」

「油断するでない。 他に変わった事はないか?」

「そういえば、昨日グラードの船が到着しました。」

「ふむ。 聞いておる」


「それが今回、傭兵を三人も雇っているそうです」

「傭兵を?」


「前回来た時にいざこざがあり、一人がケガをしたとかで今回は護衛のためにと······」

「その傭兵を調べろ」

「はっ!」


 兵士は走って出て行った。




  ◇◇◇◇◇◇◇




 グルタニア城には三つの高い塔があり、その真ん中の塔の最上階にある大きな扉の前に二人の兵士が立っていた。

 その部屋の中には、椅子に座り宙を見つめるエリアスと、彼女の前には体を丸めて眠るザギがいた。




 ザギは小さな気配に目が覚めた。


 入り口の近くにいた気配は暫くそこに(とど)まってたが、やがて屋根に登り、反対側の窓の方に降りてきた。


 ザギが気付かないふりをして寝ていると、その気配は暫らくの間、窓から中の様子を(うかが)っていた。

 そしてそのうちどこかに去って行った。



 それはザギが知る気配だった。



 ザギは顔を上げ、気配があった窓を見つめてから、少し痩せたエリアスの方を見た。


『やっと来てくれた。 エリアス······もう少しの辛抱だ』


 そう(つぶや)いてから満足そうに尾の下に頭を(うず)めて目を閉じた。




  ◇◇◇◇◇◇◇




 その日の夕方、再び兵士がゴーダントの所へ走ってきた。


「ゴーダント様。 やはりグラードが雇った傭兵達は怪しいです。 船員と一緒にあちらこちらで女の事を嗅ぎまわっていたようです」

「やはりそうか! その傭兵とグラードを今すぐ捕えろ!」

「はっ!」


 

 ◇◇◇◇



 グラードは船員たちと酒場で夕食を食べていた。


「船長、カイルさん達だけで大丈夫でしょうか······俺達も加勢した方がよくないですか?」

「カイルがいらんと言うのだから仕方がない。 それに、俺達全員でかかってもあの三人には敵わないんだ。 あの三人は強い。 俺達がいても足手まといになるだけだろう。

 それより嫁さんを助け出した後、アルタニアの応援を乗せた船が到着するまで彼らを(かくま)わなければならん。 どこかに隠れ家を探しておかんと······」


「船長、それなら俺達の船がいいですぜ。 船の上は治外法権だし、万が一踏み込まれても、俺達にしか分からない隠れ場所が沢山あります」

「それもそうだな。 よし! その手筈も整えておけ」



 その時、酒場の入り口が勢いよく開けられ、十数人の兵士がバラバラと入って来た。



「グラード船長はどいつだ」

「俺だが?······」 


 グラードは面倒くさそうに答えた。


「傭兵達はどこだ!」

「傭兵?······あぁ···あいつらか。 知らんな。 どこかの酒場で飲んだくれているんじゃないか?」


 隊長らしき男が他の兵士に探すように指示すると、厨房や二階にドタドタと走って行った。


貴様(きさま)も来てもらう」


 二人の兵士が両側からグラードの腕を掴んだ。


「船長!!」


 船員達が剣に手をかけて立ち上がった。


「大丈夫だ、落ち着け。 それより積荷の手配をしっかり頼んだぞ」


 店内を探しに散っていた兵士たちが戻ってきた。


「隊長、いません」

「傭兵はどこだ! 隠すと為にならんぞ!」

「隠す? なぜ隠す必要がある。 奴らが何かしたのか?······俺もだが?······」



 グラードののらりくらりとした返答に、隊長は苛立ちを隠せない。


 隊長は八つ当たり気味に兵士達に向かって「他の店を探しに行け!」と命令し、グラードを連れて酒場を出て行った。



 ◇◇◇◇



 ゴーダントの前にグラードが連れてこられた。


「ゴーダント様。 ご無沙汰致しております」


 グラードは丁寧に頭を下げた。


「グラード船長、お主達は町で何を探っておる」

「探るとは? 何を探っているというのですか?」

「傭兵と一緒になって何かを聞きまわっているそうではないか。 お主が雇った傭兵とは何者だ」

「?······何者と聞かれましても······傭兵ですが······」


「貴様! それならなぜ今まで傭兵など雇った事がないそなたが、今回は三人も雇った」

「これはこれは、傭兵を雇うのにゴーダント様の了解を得る必要があるとは知りませんでした。 事後承諾で申し訳ありません」


 グラードは再び、嫌みなほど丁寧に頭を下げた。


「そうではない! そうではなくて······もしかして傭兵の方からグルタニアに連れて行ってくれと頼まれたのではないか?」

「たまに小遣い稼ぎに乗せてくれと言って来る者もおりますが、あの三人は腕が立つと聞いて、私がわざわざ頼みに行ったのですが······それが何か?」

「お主達もそれなりに腕が立つだろう! なぜわざわざ傭兵を雇った!!」


 グラードののらりくらりとした返事に、ゴーダントはイライラして怒鳴った。


「前回グルタニアに来た時に、うちの船員がこの町のごろつきに因縁をつけられて喧嘩になり、ケガをしたのはご存じないですか?」

「あ···あぁ······確かそんな事を聞いた」

「で······雇ったわけです。 それに、最近ラングリー近海で海賊が出ると聞きました。 本当ならもっと大勢雇いたかったのですが、金がかかるもので······」


 グラードはヘラヘラ笑いながら頭を掻いた。


「傭兵を雇う金を援助してもらえると助かるのですけどねぇ······へへへ」



 ゴーダントはワナワナと震えだし、怒りを露わにしてきた。


「あ~~っ! 分かった! では、町で何を聞いて回っていた! 女の居場所を探っていたであろう!」


 ゴーダントはエリアスを拉致したのは自分であると認めた事に気付いてない。 グラードはニンマリと笑った。



「それは······うちの船員が首ったけの女がいたのですが、そいつを振ってグルタニアに行ったと聞いて、そいつがどうしても会いたいと言いだしましてね······振られたのだから止めとけって言ったのですが、自分を置いて他所の国まで行くわけがない! きっと誰かに拉致されたんだ! と、言い張りまして······バカな奴でしょ? 

 自分が振られたのが分かってないというか、信じたくないのでしょう。

 それで傭兵達まで引っ張り出して、みんなで探していたらしいのです。

 俺は放っておきましたけどね······何かまずかったでしょうか?」

「グッ!」


 ゴーダントは言葉を失った。


「我々は何か捕えられなければならないような事をしたのでしょうか?」



 グラードは顔からヘラヘラした笑みを消して、ゴーダントを睨みつけた。



「不法に捕らえるおつもりなら、どうなるか御分かりですよね······私は商船組合の長をしています。 

 こんな事が知れればグルタニアには二度と商船は来ないと思っておかれた方がいいと思いますよ」

「わ···私を脅す気か!」

「とんでもない! 何か勘違いされていただけですよね。 そんな理不尽な事をされる方だとは思っておりません」


 ゴーダントは真っ赤な顔をして怒りに震えて睨みつけてたが、グラードから視線を外し、ソッポを向いたまま「おかえり願え」と、手で追い払う仕草を見せた。



 グラードはほくそ笑みながら「それでは失礼します」と、バカ丁寧に頭を下げて退出した。




 グラードが出て行ってからもゴーダントは怒りが収まらなかった。


「明日だというのに!······阻止されてたまるものか!」


 椅子から立ち上がり、部屋の中を右に左に歩き回っていた。



「嫌な予感がする······何とかしなくては······そうだ、女だ! 女を連れ戻されてしまえば終わりだ!······もっと安全な所に隠さなくては!」





 ゴーダントはテラスに出て、グドゥーを呼んだ。






ザギさん、エリアスを守ってくれていたのですね。

( ̄ー ̄)b

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