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ユニオンビースト ~霊獣と共に生きる者達~  作者: 杏子
第二章 レジェンド・オブ・レジェンド
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16話 嵐の壁

ドラゴンフライ号は何事もなく、グルタニアに近付いた。

 16話 嵐の壁




 それからも特に海が大きく荒れる事もなく、快適な海の旅が一ヶ月近く過ぎた。


 カイルは希望して出来るだけ体力のいる仕事につかせてもらっている。

 あれからも何度か同じ夢にうなされる事があった。 少しでも疲れて夢も見ずに眠りたかったからである。


 それでも仕事が無い時がある。 そんな時にはアッシュ達や船員達と剣の練習をした。


 船員五人がかりでもカイルには敵わない。


「イテテ······」

「大丈夫ですか?」


 カイルは転がったグラードに慌てて駆け寄り、助け起こした。


「いやぁ~~···俺も腕が立つつもりでいたが、世の中にはこんなに強い奴がいるとは······恐れ入ったぜ」

「グラードさんも、かなりの腕前ですね」

「五人がかりで向かっても、かすりもさせない奴に言われてもなぁ······」

「すみません」


「ハハハ、謝るなよ······そうだカイル、ちょっとお願いがあるのだが······」

「何でしょう?」

「じつは······ユニオンビーストの本当の姿ってやつを一度見てみたいんだが······」

「いいですよ。 アルナス」


 アルナスが転身してみせると「「わぁ~~っ!! すげぇ~~~っ!!」」という歓声と共に、なぜか拍手が起こった。


「ディアボロとグーリも!」という声に、二頭が転身すると、再び歓声が沸き起こった。


「いやぁ······凄いもんだな······大丈夫と分かっていても腰が引けちまう。 アルタニアにはこんなのが沢山いるのだろ? こんなでかいのが町中を歩いたら邪魔じゃないか?」


「普段はみんな動物の姿でいますから、そんな事はないですよ。 ただ大きいのはいます。 グーリは普段ゴリラの姿でいますから、3m近くあります。 ですからかなりの存在感ですね」

「へぇ~~、面白いもんだな。一度アルタニアに行ってみてぇもんだ。 他の連中の姿も見てみたいな」

「イザクちゃんも見せてくれよ」


 ギースに頼まれ、イザクも転身した。


「おやまあ······なんとも可愛らしい。 イザクちゃんはあんまり変わらないのですね」

「イザクの中に有る獣は猿だけですから」

「えっ? でも前に言っていましたよね。 目の数と中に有る動物の数は同じだと。 イザクちゃんの目は二つですよ」

「イザクは猿と炎のユニオンです」


「イザク」カイルはイザクを促した、 イザクは口から炎を()いて見せた。


「おおっ! こんな事も出来るのか!」


 皆が驚き口々に騒いでいる。その中の一人が呟いた。


「口から炎を噴くと言えばドラゴンだよな。 という事はドラグルも火を噴くのか?」


 一瞬その場が凍り付き、横の男から頭を叩かれていた。

 しかし、カイルは笑顔を崩さず「ドラグルは体が大きい分、炎の威力も凄いですよ」と答えた。


「そ···そうかい······さすがによく知っているな······あっ!···いや···その···なんだ······あぁ!そうだ! あいつらの姿も見せてくれよ」


 あたふたしながらマストの上を指差した。


「白鳥のユニオンは私と契約していませんので勘弁してください」


 カイルはハスランとカイザーを呼んだ。 


 船に乗ってからルーアンはずっとマストの一番高い所でエリアスの気配を探している。 

 そっとしておいてあげたかった。


 ハスランは直ぐに転身して見せた。 その姿に「「おお~~っ!」」という声が漏れた。

 しかし、カイザーは少し考えていた。


『カイル、お前の身分がばれないか?」

「大丈夫だろう。 もしばれても、その時はその時だ」

『分かった』


 カイザーは転身した。


 カイザーの巨大で美しい姿にみんなが一歩下がり、無言で見上げた。

 間近で見るカイザーの美しさと崇高さに言葉を失っていたのである。


 カイザーはゆっくりと船員達を見回してから、また鷲の姿に転身してからマストの上に飛んで行った。


「「「すげえ!!! ものすげえ!!!!」」」


 みんな感動してカイザーに向かって拳を上げた。



「俺、どこかで見た事がある······どこだっけなぁ?」

「そういえば俺も、真っ白いユニオンビーストの話を聞いた事があったような······」


 ざわざわと数人が騒ぎ出した。


「カイル様、まずいですね······」


 アッシュが小声で言ってきた。


「カイザーに忠告されたのだが······つい嬉しくて······やはりマズかったかな?」


 カイル達が焦っていると「船長!」と、上の見張り台にいた船員が大声で怒鳴った。


「どうした!」

「嵐の壁が見えてきました!!」


 船員達が一斉に船の縁に駆けていき身を乗り出して前方を見た。

 カイル達も急いで見に行ってみると、船が向かっている水平線の先が黒くなっている。


「よし! 遊びは終わりだ!! 野郎ども、持ち場に付け!」

「「「はい!」」」


 船員達はグラードの言葉に勢いよく答えて、走って行った。


 カイル達も行こうとすると、グラードに止められた。


「お前達はいい。 初めての奴には無理だ。 お前らはユニオン達を連れて船室に入っていろ。 嵐の間は絶対に甲板に出るな。 出れば波にさらわれて海に落ちるぞ。 落ちたら助からん。 助ける事は出来んからな。 分かったな」

「「「はい」」」

「後で酔い止めの薬を持っていかせる。 ちゃんと飲んでおけ。 地獄を見るぞ」


 グラードは嵐の壁の方をグッと睨んでから走って行った。




《みんな、中に入るぞ。 イザクから聞いた。 外にいると君達も危険だ》

「ルーアン! 降りてこい! 嵐の間は船室に入った方がいい!!」


 聞こえているはずだが、ルーアンは動かない。


『俺が連れてくる』


 ディアボロが鷲に転身して、ルーアンの横に止まった。


『ルーアン、ここは危険だ。 嵐が近付くと俺達は立っている事も出来なくなるらしい。

もちろん飛ぶ事もだ。 降りるぞ』

『ここにいます。 もう少しなの。 もう少しでエリアスの心を掴めそうな気がするの。 ここに居させて下さい』

『そうさせてやりたいが、ダメだ。 少しの間の辛抱だ』

『ここにいます』


 ルーアンは動こうとしない。


『仕方がない』


 ディアボロは転身し、無理矢理ルーアンを掴んで降りてきた。


《しっかり捕まえておけ!》


 ルーアンをアッシュに押し付けた。


『離して! あそこに行かせて!』


 ルーアンは飛び上がろうともがく。 それを見たカイルはルーアンに近付き、白鳥の小さな頭を両手で優しく包んだ。


「ルーアン、聞いてくれ。 今から来る嵐は普通の嵐ではないらしい。 君達の様に鳥があるユニオンには特に危険な嵐だそうだ。 

 君を死なせたくない。 エリアスを助け出した時、君が居ないと分かれば彼女はどう思うだろう。

 私はエリアスに悲しい思いをさせたくない。 それは君も同じだろう? 二度と会えなくなってもいいのか? 暫くの辛抱だから大人しく船室に来てくれ。 いいね?」

『······分かったわ······』


 ルーアンは大人しくなった。

 船上は船員達が慌ただしく動き回っている。 その間を抜けて船室に入った。




 暫くして、ギースがバケツと薬を持って入って来た。


「この薬を朝夕二回忘れずに飲んで下さい。 よく効く薬ですから随分ましだと思います。 それでも気分が悪くなったら、吐くときはこのバケツに。 食事はここに運ばせます。 出来る限りこの部屋から出ないでくださいね」



 そう言ってから、慌ただしく出ていった。





とうとう嵐に突入です。

((( ;゜Д゜)))

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