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ユニオンビースト ~霊獣と共に生きる者達~  作者: 杏子
第二章 レジェンド・オブ・レジェンド
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13話 張り裂けそうな思い

カイルは辛い気持ちを押さえつけて、出航を待つ。

 13話 張り裂けそうな思い




  アッシュとディアボロの前に、ハリスが降りてきた。


『ディアボロ様、カイル様は明後日乗る予定の船におられます。 アッシュ殿にそうお伝えください』

『船に? 何をするために?』

『仕事を手伝うのだそうです』

『なぜ?』


 ハリスは港の方を見た。


『カイル様はじっとしていられないのでしょう。 エリアス様が心配で心が張り裂けそうになっておいでです。 体を動かすことで気を紛らわせたいのだと思います······では、お願いします』


 そう言ってハリスは飛んで行った。


「ディアボロさん。 ハリスは何て?」


 ディアボロは説明した。


「そうですか······お辛いでしょうね」

『アルナス達も、辛いだろう······』



 アッシュは港に行ってみた。

 アルナスとイザクが船を見上げて座っていた。


『アルナス······大丈夫か?』

『どうした?』

『いや······こいつがどうしても来たいと言うから······』


 ディアボロがアッシュを見上げた。


『お前らはやる事があるのではないのか?』

『そうなんだが······』

『心配するな。 俺達がついている』


 アルナスがクイッと顎で指した方にはカイザー達が並んで止まっているのが見えた。


『あいつの好きにさせてやってくれ』


 アルナスはまた、船の方を向いてしまった。


 ディアボロは、渋るアッシュを連れて、再び町中に消えていった。



 ◇◇◇◇



 夜になってカイルが帰ってきた。 少し足元がふらついていて、アルナスに掴まりながら部屋に入ってきた。


「カイル様! 大丈夫ですか?」

「大丈夫。 グラードさんに勧められて、いささか飲みすぎた」


 カイルはベッドにドカッ!と座り込んだ。



「何か分かったか?」

「はい。 一年ほど前からグルタニアの船が時々沖に停泊していることがあったそうですが、積み荷を運ぶわけでもなく、何をしているのか不思議に思っていたそうです。

 そして今度は一ヶ月ほど前からずっと停泊していたそうですが、三日前にはいなくなっていたそうです」


「それと、ドラゴンが数頭、その船の方に向かって飛んで行ったのを見たと言う人がいました。

 これで確実ですね。 エリアス様はグルタニアに連れて行かれたのは間違いないです」

「そう······か······ご苦労だった······そういえば、この国の人達はドラグルを知らないのか?······ユニオンビーストの事も······」


「ドラグルという名前は知らないようですが、ドラゴンが実在することは知っているようです。 それと、ユニオンビーストの事は殆どの人が知っています。 

 エグモントとアルタニアが襲撃を受けた事や、今はユニオンビーストと人間が一緒に暮していることも知っているようですが、話だけで本当のユニオンビーストを見た事がある人は殆どいませんでした」


「アルナス、 この国にユニオンビーストはいないのか?」

『さぁ···町中には下級ユニオンの気配しかないが······』


 カイルは窓を開け、カイザーを呼んだ。


「カイザー、この辺りにユニオンの森はないのか?」

『この辺りの事はよく知らないが、私の知る限り、上級ユニオン以上はアルタニア周辺にしかいない。

ただ、下級ユニオンはどこにでもいるようだ』

「そうか······わかった」


 カイザーが飛び立った後も暫くの間、窓から顔を出して冷たい風に当たり、少し酔いを冷ましてから振り返った。


「この辺りには下級ユニオンしかいないそうだ。 アルナス達がユニオンだという事は伏せておいた方がいいのかな? どう思う?」


 アッシュとローゼンは顔を見合わせていたが、ローゼンが口を開いた。


「一人、アルタニアの誕生祭を見に行ったという人に会いました。 ユニオン達の大きさに驚きはしたようですが、怖いという感情は無かったそうです。

 無理に隠す必要はありませんが、わざわざこちらから言う必要もないかと思います」

「そうだな。 そうしよう······そういえば、ザギがグルタニアにも上級以上のユニオンはドラグルしかいないと言っていた······という事は······」


「カイザー達が島に入れば、我々が来た事がばれてしまいますね」

「私もそう思います。 上級ユニオンたちには島に上陸しないで、どこか手前の島にでも隠れていてもらう必要がありそうです」

『カイル達だけで大丈夫か?』


 アルナスが心配そうにカイルを見上げる。


「仕方がない。 先ずはエリアスを探さないと······私達が来たのがばれるのはまずい」



 ◇◇◇◇



 翌日もカイルは朝からドラゴンフライ号の仕事を手伝いに港に向かった。


 大通りを抜けて角を曲がると海が見えてきた。 今日は風があるせいか昨日より波が荒く、大きな音と白い水飛沫(みずしぶき)をあげて港に波が打ち付けられている。


 大きくうねる水面を見ていると昨日見た不吉な夢を思い出す。


 カイルは顔をしかめ、エリアスがいる水平線の先を睨みつけた。



 昨日と違い、どんよりと曇り、沖の方は厚い雲に覆われていて、暗く、荒く、恐ろし気な様相を呈している。



 カイルは両手で自分の顔をパンパン! と叩いた。





 ふと見ると、港の先に白い犬が座って海を見つめている。 カイルはゆっくりと近付き、横に腰かけた。


「···ルーアン······エリアスはどうだ?」

『変わりはないわ······時々心を捉えられそうになるのだけれど······直ぐプッツリと切れてしまうの」



「······そうか······」




 カイルはルーアンの肩をポンポンと叩いて立ち上がり、ドラゴンフライ号に向かって歩き出した。






カイルも辛いけど、カイルの気持ちが流れ込むユニオン達も、同じ位辛いのでしょうね。

(ノ_<。)

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