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ユニオンビースト ~霊獣と共に生きる者達~  作者: 杏子
第一章 ユニオンビースト
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6話 指輪

まだまだ平和が続きます

お付き合い下さい

 6話 指輪





 カイル達の護衛兵の所に一人の男が近付いてきた。


「ヨハン? ホグスまで。 休暇はまだ先のはずだろ?」

「セルカーク隊長······今日はその······休暇ではなく······」



 この男は[アッシュ·セルカーク]第一騎馬隊の隊長である。

 まだ若いのに実力を認められて隊長に抜擢され、かなりの美男子のうえ長身で、一見スリムだが目繰り上げた袖から見える腕は引き締まり、鍛えている事が見てとれる。


 ヨハンとは同郷で昔からの知り合いだ。



「あっ!」


 アッシュは木陰にいるタントゥールに気がついた。



「え?」


 その木の木陰に座ってパンを食べている子供に気がついた。

 タントゥールがアッシュに向かって、口の前に人差し指を立てている。





「王様へのプレゼントを買いに······」

   

 ヨハンが小声でささやく。

 アッシュは頷きヨハンの肩をポンと叩いてから、カイル達の方に歩き出した。


 誰かがこちらに向かってくる気配を感じたアルナスは、起き上がってこちらをじっと見ている。

 アッシュが小さく手を上げて挨拶すると、アルナスは興味を失ったようにカイルの横で再び伏せて目を閉じた。




「カイル様、エリアス様。 こんにちは」

「あっ! アッシュさん。 今日はお休みですか?」

「明日の警備箇所の確認を兼ねて夕方まで休暇を頂きました。 ところでプレゼントは決まりましたか?」

「······まだです」


 カイルは肩を落としてため息をついた。



「それなら、この先の広場に[市]が立っています。 結構掘り出し物があったりしますよ。 行ってみますか?」  

「もちろん行ってみたい! いいよねエリアス」



 エリアスはコクコクと頷いた。

 口の中にパンがいっぱい入っていて声が出せない。



「分かりました。 後ほど御案内致しますのでゆっくりと召し上がってください」



 アッシュはヨハン達の所に戻り何やら話していたが、食べ終わったカイル達が立ち上がるのに気付いて戻ってきた。




「いきましょうか。 大変な人混みですからはぐれないようにしてくださいね」



 アッシュを先頭に人混みに向かって歩き出した。



 ◇◇◇◇



 広場に行く道端では何組もの大道芸人が芸を披露していて、カイル達はその度に立ち止まって見学し、変わった店を見つけては覗き込むのでなかなか進まない。 しかしアッシュは嫌な顔もせず1つ1つ解説をしてくれる。



 この男······性格までいい。


 


 広場に近付くにつれ人がかなり増えてきた。


 アッシュと護衛兵達はカイルが後ろ手に繋ぐエリアスと、カイルにピッタリ寄り添うアルナスを囲むようにして人混みをかき分けながら進み、やっとの事で広場に到着する事ができた。



 かなりの広さがある広場の中は、所狭しと小さな店が並んでいる。

 本や絵画、果物や野菜、調理器具や掃除道具。 古着や小物に家具まで、ありとあらゆる物が売られていた。



 カイルもエリアスも、目を白黒させ少しでもどんな商品があるのかを見ようと、背伸びをして覗き込む。



 アッシュの提案で端から見て回った。




 あれもこれも良い物ばかりで決められない。

 おもちゃ箱の中を歩いているような気分で、カイルもエリアスも大はしゃぎしている。


 幾つか目ぼしい物があったのだが、なかなか決断するに至らなかった。


 気が付けばもうすぐ一周してしまうという所まで来ていた。




 最後から三ヶ所めの店は敷物に少しの商品を並べてあるだけで、体つきのガッチリした老人がポツンと座っていた。


 カイルたちをその店の前まで来た時に、アッシュが老人に声をかける。


「ガントさんじゃないですか」

「これは、アッシュ殿。 先日の剣の具合はいかがですか?」

「ガントさんの仕事に間違いはないですよ。 ところでどうしたのですか? この品は?」


 ガントは少し照れ臭そうにポリポリと頭を掻いた。


「わしも最近、体の調子がよくありませんでな。 いつ婆さんに呼ばれてもいいように家の物を整理しようかと思いまして。 アッシュ殿こそ今日はお休みですか?······ん? そちらは?」



 ガントの店に並んでいる物を一心不乱に見ているカイル達に目を止めた。


「こちらは知り合いのお子様で、カイル様とエリアス様です」




 その時、カイルがある物に目を付けた。


「あのぉ······この指輪を見せてもらっていいですか?」


 ライオンの顔が彫ってある綺麗な指輪だった。


「もちろんですが、坊っちゃんには少し大きいと思いますよ」

「お父様へのプレゼントにしたいんです」




 ガントは気付いた。


 アッシュがカイル様と呼ぶ少年が何者か。  

 誕生日が近い父親が誰なのかを。 



 ガントは指輪をカイルの手に乗せながらニッコリとほほ笑む。


「この指輪は()()の父が()()()()からいただいた物で、父がとても大切にしておった物です。 自慢じゃないですが父はとても腕の良い鍛冶師で、父の仕事に大変感銘されてこの指輪を下さったのですじゃ。

 この指輪もあるべき場所に戻れて喜んでおりましょう」

「あるべき場所?」

「お気になさらず。 あなた様のお父様なら必ず大切にしてくださるでしょう」

「もちろんです!」


 カイルは指輪をタントゥールに見せて満足そうに顔を輝かせる。


「これに決めます!」

「承知しました。 きっと喜ばれると思いますよ」



 ガントは指輪を見事な細工の施された箱に入れ、黒い皮の袋に入れてカイルに渡した。



 その時、タントゥールは髪飾りをじっと見つめるエリアスに気がついた。


「エリアス様。 その髪飾りがお気にめされましたか?」

「はい! カイル見て! ナルナラそっくりと思わない?」



 ナルナラの目の色と同じ薄紫色の綺麗なウサギの髪飾りを手に取って、カイルに見せた。



「本当だ! 綺麗だね」

「お嬢さんは目が高い。 それは()()の妻が大切にしていたものです。

 ()()にはよく分かりませんが、妻は良い家の出でしたから()はとても良いと思いますよ」

「奥さまの?·········いいのですか?」

「もちろんです。 お嬢さんなら、大切に使って下さるでしょう」

「はい! 必ず大切にします!」



 ガントは髪飾りを薄紫色の光沢のある袋に入れてエリアスに渡した。



「アッシュ殿、お二人をあちらに」




 タントゥールはキャッキャと興奮している二人を広場の隅の人通りの少ない場所に連れていってもらい、ガントに向かって軽く頭を下げた。


「お懐かしいお品を見せて頂きました。 指輪もですがあの髪飾りも結構なお品とお見受け致します。 二品でこれだけでは足りないと思いますが、御受け取りください。 では失礼します」




 タントゥールはガントの返事も聞かず、金貨袋を置いて立ち去った。




  

「お金は払ってくれた?」

「もちろんでございます」



 二人は宝物のように、胸にギュッと抱き締めた。




  ◇◇◇◇◇◇◇◇




 城門を入った所でアッシュや護衛兵達と別れた。



「早くナルナラの所へ行きましょ」

「うん。 ちょっと待ってて」『みんな! 来て!』


 カイルは心の中でイザク達に声をかけた。

 アルナスがカイルの顔を見上げている。



 いつまでも黙って動こうとしないカイルを見てエリアスは首を傾げていたが、そこへハリスが飛んで来るのが見えた。



 ハリスがカイルの肩に止まった。


『聞こえた?』

『もちろんです』


 カイルはこれをやってみたかったのだ。


 直ぐにイザクとナルナラも走ってきた。


 イザクはスルスルとカイルの肩に上り、ナルナラはピョンとエリアスの胸をめがけて飛び上がったので、エリアスは慌てて受け止めた。



 ナルナラはエリアスの胸に抱かれながらカイルに向かって『カイル、お帰り』と、首をこちらに向ける。


「呼んだのわかった?」

『もちろんよ! 私、心で呼ばれたの初めてだからワクワクしたわ!』

「僕も本当に来てくれるかドキドキしたよ」

「ねえ、カイル。 何の話し? 呼んだってどういう事?」

「あっ!·········えっと······」


 カイルはエリアスに話していいものか躊躇い、アルナスに意見を求めた。


『アルナス達がユニオンビーストだってこと、話してもいいのかな?』

『知ってもらった方が良いだろう』

「わかった! エリアス。  驚かないで聞いてね。 実はアルナス達は·········」





 カイルはエリアスに説明しながら部屋に戻った。





アッシュ·セルカークは私の好きなキャラクターです

( 〃▽〃)


いつかはアッシュの挿絵を描けるようになりたいです!!

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