表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユニオンビースト ~霊獣と共に生きる者達~  作者: 杏子
第二章 レジェンド・オブ・レジェンド
55/103

8話 ザギとニック3

ザギとニックの絆は深まっていくように見えるが·····

 8話 ザギとニック3




 翌日の夕方、毎年恒例のカイル達の歓迎会のために、近隣の人達が食材を持って集まった。

 しかし今年はいつもよりやけに人が多い。


 どうやらザギの噂を聞きつけ、ドラゴン見たさに集まったようだ。


 来る人来る人が珍しげにザギを見に来て、ニックはまるで自分が契約者でもあるようにザギを紹介していた。




 直ぐ先にある牧場主のキルスさんは、いつもリスの姿をしたユニオンビーストのキキを肩に乗せている。

 そのキルスさんがザギの所に来た。


「わぁ~~······近くで見ると迫力あるなぁ。 前に一度ドラゴンが私の牧場にも来たが、もっと赤くて五つ目だった。

 遠目でしか見なかったが、このザギさんの方がかなりでかいように見えるな。 目の数が一つ違うだけでこんなにも違うのか······そういえばニック、ドラゴンと言えば火を()くと言われているが、ザギさんも火を()けるのか?」

「も···もちろんだよ。 ねっ! ザギ······火を()ける···よね?」



 本当に()けるのかニックは不安だったが、ザギはニッと笑ってから上を向き、大きく息を吸うと空に向かってゴウッ!! と炎を噴いた。


 50m以上の火柱が()き上がり、そこにいた人達は腰を抜かしそうなほど驚いた。



 アルナスとディアボロは顔を見合わせた。


『あいつが敵でなくて良かった』

『あ···あぁ······しかし、炎があるのは分かっていたが、あそこまでの威力とは······』


 アルナス達は凄い威力の炎に素直に大喜びしてはしゃいでいるニックに目をやった。



 ◇◇◇◇



 日が落ちて暗くなってきた頃、イザクが篝籠(かがりかご)と釜戸に火をつけて回っている。

 それを見てニックが「ザギもこれに火をつけて」と、篝籠を指さした。


 ザギは小さく息を吸い、ボウッ! と炎を噴いたが、それでも炎の勢いが強すぎて篝籠の台ごと燃えてしまった。


「ハハハハハ ザギ、全部燃えちゃったよ」


 ニックは大笑いし、周りの人達からも笑いが起こった。




 今年の男性陣はドラグルの話題で大盛り上がりだったが、やっぱり女性陣の話題はエリアスだった。


「カイルさんは今でも優しくしてくれているかい?」

「赤ちゃんはまだなのかい?」


 やっぱりエリアスを質問攻めにしている。


 エリアスも楽しそうで、誰かが連れてきた小さな子供を抱かせてもらったり、初めて見た牛の出産の話を興奮しながら話していた。



 ◇◇◇◇



 いつも以上に盛り上がった歓迎会も終わり、カイルとエリアスはカイザーにもたれて星を見ていた。

 アッシュも少し離れた所でディアボロにもたれて、うたた寝している。



「······静かね······」

「······そうだな······」


「アッシュさんったら、あんな所で寝て、風邪を引かないかしら」

「先に寝てもいいと言ったのだが······」

「律儀な人ね」

「うん······彼には感謝している」


「アニータさんとの結婚式まであと二ヶ月ね」

「うん。 年が明けて直ぐだと言っていたな」

「幸せになれるといいわね」

「なれるさ」


「ねえ、カイル······早く赤ちゃんが欲しいわ」


 カイルはエリアスの肩を抱き寄せた。


「きっとすぐにできるさ」

「そうね」


 エリアスはカイルの肩に寄り掛かった。


「ここは本当にいい所ね」

「うん······城での毎日が嘘のようだ」

「アルタニアもいい所だわ」

「そうだな」




 カイルはすぐ近くで寝ているザギに、今なら少しは何か話してくれるかと思い、思い切って話しかけた。


「ザギ」


 ザギは頭を上げ、カイルの方に六つの目を向けた。


「ザギ。 君は初めて会った時、アルタニアは美しいと言ってくれた。 この国はどうだ?」

『······どの国も、どこまでも広く、美しい』

「君の国は違うのか?」

『······私の国は島だ······大きな山の麓に人間がひしめいている』


「そうなのか······ユニオンビーストは? カイザーやアルナスのようなユニオンビーストはいるのか?」

『大きいのはいない。ドラグルだけだ。 小さいのはうじゃうじゃいるが······」

「ザギさんは今までに誰かと契約したことはないの?」


 エリアスが聞いた。


『······ない·····』「ないそうだ」

「そうなの? ニックにとても優しいから、昔そんな人がいたのかと思ったわ」


「そうだな······そういえば、島だと言っていたな。 という事は周りは海なのだよな······私は一度だけ海を見たことがあるが、とても壮大で美しかった」

『海だけだ』

「何もない?」

『小さな島が周りに沢山あるが······』

「それならなおさら綺麗だろう」


『······そんな風に見た事がない』

「なぜ今まで海を渡らなかったんだ? 飛べるのだから、いつでもこちらに来る事は出来ただろう?」


 ザギはカイルから視線を外した。 何を考えているのか、ドラグルの表情は読めない。


『······少し話し過ぎた・······』


 ザギは頭を尾の下に埋めて寝てしまった。




 ◇◇◇◇




 翌朝、カイザーが『どうやらザギには問題なさそうなので、この辺りの森に顔を出してくる』と、飛んで行った。


 カイザーはカイルと契約はしてはいるが、ユニオンビーストの王である。

 人間とユニオンビーストが再び共に生きるようになってから、カイルにも勧められた事もあって、ここに来るといつも2~3日かけて幾つかの森を回っている。


 そしてハスランも自分が統べる森に顔を出してくると、飛んで行った。





 その日の夜、皆が寝静まった頃、ザギは顔を上げて南の山を見上げた。

 そして、おもむろにムクッと起き上がると、翼を広げてその方向に飛んで行った。




 そして、翌朝には何も無かったように、元居た場所で丸くなっていた。






ザギはどこに行ってきたのでしょう?

次章に新たな展開が······

( ; ゜Д゜)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユニオンビースト https://ncode.syosetu.com/n4174fl/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ