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ユニオンビースト ~霊獣と共に生きる者達~  作者: 杏子
第二章 レジェンド・オブ・レジェンド
52/103

5話 ザギ

カイル達はクレモリスのトムの農場に出発した。

そこへドラグルが近付いてきた。



楽しんでいただけると幸いです。

 5話 ザギ




 その年の秋の誕生祭のパレードが行われていた。


 先頭の騎馬隊の前をアッシュと転身したディアボロが先導し、その後ろから近衛隊に囲まれたカイルとエリアスが乗る馬車が続く。


 馬車の上からカイルとエリアスは民衆に手を振っている。  


 そしてカイル達の馬車の後ろからは、転身した姿のカイザー達ユニオンビーストと、歩兵隊が続く。



 アルタニアを奪還してから五年。


 年々誕生祭は盛り上がり、今では転身したカイザー達を見ようと他国からも多くの人が詰めかけるようになっていた。

 


 そのパレードを高い所から見つめるドラグルの姿があった。


 ドラグルが現れてから一年近くなるが、彼は何をするでもなくこちらから近付こうとすると逃げるので、今ではドラグルが現れても何もせず、様子を見る事になっていた。

 


  ◇◇◇◇◇◇◇



 誕生祭も終了し、翌朝カイル達はクレモリス国のトムの農場に行くために、多くの人に見送られながら中庭から出発した。。



 城壁を越えるとトトントがアッシュの前に現れ、直ぐに下に降りていった。 そこには手を振るアニータがいた。


 上から手を振るアッシュを見て、カイルが近付いた。


「行ってもいいぞ」

「すみません! すぐ追い付きます」


 言うが早いかディアボロは急降下し、地面に着く前にアッシュは飛び降りてアニータを抱き締めた。


「十日で戻ります」

「お気をつけて····」

「行ってきます」


 アッシュは再びディアボロに飛び乗り、カイル達の所に戻っていった。



 アッシュ、やれば出来るんだ。




 王都の外壁を越えて暫く行ったところで、ユニオン達に緊張が走った。


『カイル、ドラグルだ。 こっちに向かってくる』


 アルナスが見ている方向を見ると、体を上下にくねらせる様な飛び方をしながらドラグルが近付いてきた。

 そして、カイル達から少し離れてついてきた。



 ドラグルは近くで見ると思った以上に大きく、トカゲの体は硬そうなワニの鱗に全身覆われ、コウモリの翼に前足は鷲。頭には、左右に半円を描く太くて大きな山羊の角があり、炎もあるのだろう、金色の六つの目が光っている。


挿絵(By みてみん)


「カイザー、エリアスを頼む。 ハスラン、彼に近づいてくれ」


 鷲の姿だったカイザーとアルナスは本来の姿に転身し、ハスランはゆっくりとドラグルに近づいた。



 今回はドラグルは逃げる様子はない。



「やあ! 君はドラグルだね。 私の名はカイル。 私はユニオンビーストの言葉が分かる。 君の名は?」

『······』

「あれ?······ドラグルは人の言葉が分からないのかな······」


 カイルが呟くと『わかる』と、ドラグルが躊躇(ためらい)いがちに返事をした。



「よかった。 私も君の言葉が分かるようだ。

君はアルタニア······あぁ、この国の事だけど、アルタニアにずっと居るようだが、この国はどうだ? 君の国と変わらないか?」


『······ここは······美しい国だ』

「そうか、ありがとう。 そうだ、今から私達は隣の国まで農家の手伝いに行くのだが、一緒に行かないか? クレモリス国も綺麗だぞ」


《カイル、ちょっと待て!》


 いつの間にかアルナスが横に来ていた。


《ドラグルは凶暴な奴だとカイザーが言っていただろう? こんな奴を連れて行くのか?》

《だからこそ側に置いておく方がいい。 君達もいるし、凶暴と言われる六つ目のユニオンをアルタニアに置いていくのは不安だった。

 それに、一緒にいれば心を開いてくれるかもしれないだろう?

 私はユニオンを信じたい。 アルタニアを美しいと言ってくれた。 悪い奴とは思えない。

 きっと心を開いてくれると信じている》

《······分かった。 お前の好きにしろ》



 アルナスはカイザー達に説明しに戻って行った。



 カイルはもう一度ドラグルに聞いた。


「なあ、どうだ? 私達と来ないか?」

『······』


 ドラグルはアルナスが戻って行った方を見ていた。



「アルタニアに来てからずっと一人だったのだろう? 人と関わるのもいいものだと思うが、どうだ? それともアルタニアにいないといけない用事でもあるのか?」

『······』


「私は君と仲良くなりたい。 嫌ならいつでも私達から離れればいい。 取り合えず一緒に行こう」

『······それもいいかもしれない······』


 ドラグルが呟くのをカイルは聞き逃さなかった。



「よし! 決まりだ。 改めて紹介しよう。 私はカイル。 このユニオンはハスラン」


 カイルはハスランの首を叩いた。


 そして、カイルの前に乗るナルナラ、肩に乗るイザク、横を飛ぶハリスを紹介した。



「君の名は?」

『ザギ』

「ザギか。 みんなに紹介しよう。 こっちに来てくれ」


 カイルはザギをみんなの所に連れて行った。



「みんな、彼の名はザギ。 一緒にクレモリスに行く事になった」

「まぁ、素敵! ザギさん、私はエリアスです。 よろしくね」


『エリアス······』ザギは呟いた。


「この子は私と契約しているルーアンです」

「エリアスは私の妻だ。 そして彼がアルナス。 あちらの白くて大きいのがカイザー。 六頭と契約している」

『六頭と?』

「やっぱり珍しいか」

『ああ』

「ははは······その様だな。 そして彼等とは会った事があるだろう? 

 黒いユニオンがディアボロで、乗っているのが彼の契約相手のアッシュだ。

 ザギは誰かと契約しているのか?」

『していない』


「ドラグルも人と契約するのだろう?」

『している奴もいる』

「特殊といえども、ユニオンなのだな。 人間の間ではドラグルはドラゴンと呼ばれ、伝説の生き物として語り継がれている。 アルタニアでも好奇の目で見られただろう?」

『ああ』

「私も子供の頃からドラゴンに憧れていた。 だから、君に会えてうれしいよ」


 表情は分かりにくいが、ザギは少し嬉しそうにしているように見えた。




 カイルはクレモリスまで他愛のない話をし続けた。



 ザギの返事は『ああ』とか『いや』とか、簡単な返事しか返ってこなかったが、カイルの話を嫌がっている様子は無く、むしろ、興味深げに耳を傾けているように見えた。






言葉少ないザギ。

新しい仲間が増え、新たな展開が始まる。


アッシュ、よくやった!

(⌒∇⌒)ノ"

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