4話 遭遇
アニータの親代わりだった人が倒れた。
隣町まで行くが······
4話 遭遇
それから数カ月が過ぎた。
アッシュとバートが剣術の練習をしていると、アニータが慌てた様子で走ってきた。
「バート、大変! ケイトおばさんが倒れたって! 隣町から帰ってきた人が教えてくれたの。 どうしましょう」
「病気? それともケガ?」
「分からないって。 その人も聞いただけだからって······」
「今から行けば、今日中に帰ってこれないし、明日は忙しくて休めないし······」
「ちょっといいかな······ケイトさんって?」
アッシュが話に入って来た。
「隣町の方で、私たちがガントさんの店でお世話になるまで、子供の頃から親代わりになってくださっていて、とてもお世話になっていた方です」
「隣町まで様子を見に行くだけなら、トトントに送ってもらえば夕方には帰って来る事が出来ますよ」
「トトントに?」
アニータは驚いた顔でアッシュを見返す。
不謹慎にも思わず可愛い、と思ってしまった。
アッシュはコホン! と、1つ咳払い。
「トトントに乗ったことはないのですか?」
「はい」
「トトント、アニータさんを乗せて飛べるな」
トトントは頷き、転身した。
体は真っ白い山羊の姿にカモメの翼があり、白くて地面に引きずるほど長い馬の尾が綺麗だった。
「アニータさんはトトントに、バートは私と一緒にディアボロさんに乗って行こう」
アニータは転身したトトントの姿に感激しながら、アッシュに手伝ってもらって背中に乗った。
バートはディアボロの転身した姿はつい数ヶ月前にも見たが、間近で見ると思った以上の大きさに気後れしている。
恐る恐るディアボロに乗ろうと手をかけた時、ディアボロが振り返ってバートを睨んだ···いや、見ただけなのだが、バートには睨まれたように見え、恐怖ですくんでしまった。
アッシュはクスッと笑って、ディアボロの鼻先を撫でた。
「バート、大丈夫だ。 顔が怖いから誤解されるが、ディアボロさんはとても優しいから安心して。 さあ、乗って」
《誰が怖い顔だ······》
自覚のないディアボロの呟きは、この際無視。
バートが恐る恐る背中によじ登り、アッシュが後ろに飛び乗ると、ディアボロとトトントは大きく翼を広げて飛び上がった。
バートは思わず歓声を上げた。 既にディアボロへの恐怖などすっかり忘れている。
今までいた広場があっという間に小さくなり、眼下には畑や草原、そして森が広がっていた。
下を覗くと、大小の黒い影が畑の上を撫でながらついてくる。
遠くを見れば、緑の山々から伸びてくる森が草原へと変わり、その草原を二つに分ける川が緩やかなカーブを描きながら、遠くにキラキラ光って見える湖に向かって伸びている。
空から見る景色がこんなに美しい物だとは思わなかった。
横を見れば、アニータも感激した表情で周りの景色を楽しんでいた。
◇◇◇◇
あっという間に隣町の上空に到着していた。 一軒の家具屋の店先に舞い降りた。
アニータとバートは急いで降りて、家具屋の中に入っていった。
暫くしてアニータが出てきた。
「アッシュさん、お待たせして申し訳ありません」
「ケイトさんの容態は?」
アニータはクスッと笑った。
「ぎっくり腰だそうです。 店の家具を動かそうとしてグキッと······」
「あぁ、痛そうだ」
「でも、もう起き上がる事も出来るそうですから、心配ないそうです」
「それは良かった」
「あのう······アッシュさん。 おじさんとおばさんが、挨拶をしたいと言っているのですが······」
アニータ達の親代わりの人達だ。
話を聞いた時から挨拶をしなければと思っていたが、あちらからお声がかかった。
アッシュは急にシャキッとして、歩き方がぎこちない。
······右手と右足が同時に出てますよ、アッシュさ~~~ん······
家具屋の奥に入ると、亭主のボブがアッシュに握手を求めてきた。
「おぉ······いつもパレードで拝見している近衛隊長様だ。
このような立派な方が親しくして下さっているなんて、お前たちは幸せ者だ。
今日はこんな私共の為にわざわざ来てくださって、ありがとうございます。 これからも子の子達をよろしくお願いします
特にアニータの事をよろしくお願い致します」
ボブに頭を下げられ、アッシュも恐縮しまくりで「こちらこそ挨拶が遅くなりまして」と、何度もペコペコと頭を下げていた。
◇◇◇◇
帰途についたが、半分ほど戻って来た時にディアボロが緊張するのが分かった。
「ディアボロさん?」
《奴が凄いスピードで近づいてくる! 右だ!》
アッシュが右を見ると、ドラグルが真っ直ぐこちらに向かって飛んできた。
そしてそのままアッシュ達の上を通り過ぎると、トトントの左側に来て並んで飛び始めた。
巨大で六つ目のドラグルは、カイザーが転身した姿より一回り以上は大きいように見えた。
ドラグルは何も言わず、アニータをじっと見つめている。
ディアボロがドラグルとトトントの間に割って入った。
『お前の名は?』
『······』
ドラグルはディアボロの方をチラリと見るが、返事はない。
『この国で何をしている』
『······』
『他の国にいるドラグルも仲間か?』
『······』
『どこから来た!』
『······』
『俺の言葉がわからないのか?』
ドラグルは再びチラリと目線をよこしただけで何も言わず、もう一度アニータを見ると、クルリと向きを変えて飛んで行った。
『あっ! 待て!』
「わっ!」
ディアボロが追いかけようと急に向きを変えたので、バートが落ちそうになり、慌ててアッシュが支えた。
《ディアボロさん、無理です。 戻りましょう》
『チッ!』
ディアボロは諦めて不安そうに見つめるアニータが乗っているトトントの所に戻った。
アッシュは緊張しすぎで可愛い!( *´艸`)
しかしドラグルは何しに来たのでしょう?( ゜ε゜;)




